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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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33話 ファミレス

彼女の後をゆっくりと少し距離を空けて井出は歩いていた。

午前の街は涼しく歩いていても心地よく、

普段のバイト先へ向かう感じとはまた一風違う感覚だった。

行き交う人々は数歩先を歩く赤いジャージ姿の彼女を少々、

好奇心やだらし無い格好を見て少し軽蔑にも似た視線を彼女に向けるが、

直様その後ろからついてくる強面こわもての男を見て、

慌てて視線をずらしていく。



そんな奇妙な二人組がしばらくして訪れたのは、よくあるファミレスだった。

緑の落ち着いた色合いの店で、マスコットキャラクターであろう。

緑色の熊が面倒臭そうな顔で、食事を乗せた盆を差し出す格好で鎮座している。


「・・・これ、なんていうの?」

「ファミクマ」

「・・・」

少し興味が湧いたので吉沢に聞いては見たが、

近頃流行っている『ゆるキャラ』というものを狙っているのかもしれないが、

安直なネーミングと全く仕事に興味の無さそうな面倒臭そうな表情を見て、

とてもじゃないがこれは流行りそうにないと井出は思った。

すると熊を見ていた井出を見て吉沢が


「あんたにそっくり」


そう少し楽しそうに吉沢に言われ、井出はなんとも言えない気持ちになった。

ある意味この熊の面倒臭そうな顔は確かに今のバイトにそこまで興味のない、

俺とよく似ているかもしれないと少々複雑な思いを巡らし、

尻目に熊を眺めて店に入った。


井出はさほど入ったことのない店だったが、

吉沢はそれなりに来るのか躊躇もなく入っていき、

店員も慣れたようにさほど対応もせず、

彼女は適当に店の一番奥の喫煙席に腰掛けた。

そして、座ると直様ズボンのポケットにずっと突っ込んでいたせいか、

くしゃくしゃになった煙草を一本取り出し、何かのアニメキャラがプリントされた

ライターで火を点けた。


「あんたも吸う?」


そう言ってまた一本取り出し井出に勧めるが、

井出は いらない と店員が運んできたお冷をさっと流し込んだ。


別に煙草は嫌いなわけではないが、ろくに金も無い井出には高すぎた。

一本でも吸えばすぐ財布が急激に痩せてしまいそうで、

残念だが断った。

お冷を運んできた店員は煙草の煙が嫌いだったらしく、

サービス業には相応しくない、とても嫌そうな顔をした。

だが、それを見てなんだか申し訳なくなって、

頭を下げたくなって振り向いた井出を見ると、

途端に顔を青くして逃げるように店の奥へ引っ込んでいった。


「・・・・俺ってそんなに怖い顔しているかな」

「・・とてもしてる」

 

店員の態度の変わりようを見て、井出は吉沢に小声で聞いてみたが、

明るく応え、楽しそうにこちらを見る彼女を見て

井出はせっかくの休日が台無しだなと後悔した。



「ところでさ・・用事ってなに?」


井出はしばらくして注文を伺いに来た先ほどとは別の店員に、

サンドイッチとか軽いものを頼んだ後に、同じく軽食を頼んだ吉沢を見た。


「ん・・?」

「とぼけるなよ。何かあるんだろ?」


そう問い詰めると彼女は一旦咥えていた煙草を灰皿に擦りつけ火を消し、

井出を見て


「あぁ、ゲームの話」

「ゲーム?なんか問題でもあるのか」

「おおあり」


少し真剣な顔をしたが、何処かトボけた顔になってまた煙草に火をつけた。


彼女はそれなりのヘビースモーカーで以前会ったOFF会でも、

文字通り煙たがられていた。

いくら喫煙者に対して寛容な態度を示せる者でも、

まるで質の悪い加湿器のような勢いで吹き出す煙には耐えられないだろう。

体に悪いものとはわかっていても、

それを求めたがる、人間の愚かしくも素晴らしい癖になんとも言えない

感覚を井出は質の悪い加湿器に見出し、

それからというものはよく話すことになった。


ヘビースモーカーである点とボサボサに伸びた髪と、あとジャージ姿を除けば、

とても素晴らしい女性だと思う。せめてもう既にタバコの箱を終わらせようとするペースで吸うのは勘弁して欲しいと思った。

そんな除いて欲しいものが多い彼女はトボけた顔で続ける


「昨日 あなた早めにログアウトしたでしょ?あのあと考えたんだけど、やっぱりこのままじゃまずいと思ったのよね」


煙草を吸い出すと何故だか異様に饒舌になる、

別に初めてでもない吉沢の豹変を見ながら、井出はまたお冷をすすった。


「やっぱりさ 頭数が少ないと思うの。3人で行くのはちょっと危ないかなって・・ほらまだ森には他のもいるじゃん」


他とはきっと昨晩ロストさせた騎士の仲間だろう。

確かに言われてみれば、3人で依頼主であるリビを守るのは辛いかもしれない。

峠ほどの人数がいるとも思えないが、わからない以上護衛する人数を増やすのは良い考えだと思った。

だが、峠の時のように集落の連中を投入できたならいいが、

まさか森賊でも引き入れるつもりだろうかと井出は顔を渋くした。


「あぁ いや 別に2~3人だよ。 前みたいに集められないし、だから腕の立つやつ・・・お願い」


その井出の渋い顔の意味を見抜いて、

何故だか知らないが吉沢は井出の前で両手を合わせた。


「おい それは俺に言ってるのか?」

「・・当たり前でしょ そうでもなきゃ 飯奢ったりなんてしないよ」


まさか奢ってくれるとは知らなかった。

バイト生活のみ常に財布は痩せているので、とてもありがたい事ではあるのだが、

幾ら頼まれても無理なこともあるものだ。

腕の立つやつといっても、それこそ様々な知り合いが卵にはいる。

剣の扱いに長けているものもいれば、

魔術にそこそこ精通しているものだっている、

いるにはいるが問題は今の現在地で果たして、

呼んで来てくれるかという話である。


森賊が跋扈ばっこしただでさえ危なくて面倒な場所で、

おまけに騎士達もいるのだから、これほど割に合わない仕事もないかもしれない。

しかも、わざわざその危ない森の中へと誘うというのだから、

いくら腕が立つやつが知り合いにいたとしても二つ返事で来る奴はいないだろう。

そう思うと今まで4年ほどのプレイの間に様々に出会ったキャラ達が浮かんでは消えていく、そう思うと急に昔が懐かしくなってきた。

田中に誘われ始めた客分としての騎士団プレイや様々な戦闘、

どれを思い出してもよくやってこれたものだと感慨深かんがいぶかくなる。


「・・・で 誰か適当な奴はいないの?」


そう腕を組んで悩むふりをしながら、

過去を振り返る井出を胡散臭うさんくさそうに睨んで吉沢が声をかける。

少し声音に怒気があったので慌てて井出は昔の記憶を脳内から追っ払った。


「ないこともないが・・騎士相手だろ?ちょっと厳しいな・・」

「そこをなんとか・・、何も戦闘専門の奴だけが腕が立つってわけじゃないでしょ?」


そう言うと吉沢はおもむろにズボンのポケットを探って、

携帯を取り出した。いや、最近流行りのスマフォってものだろうか、

とても便利なのだそうだが、貧乏な井出には関係ない話だ。


そして、少し吉沢がスマフォをいじるとこちらに画面を見せてきた。

どうやら、Lamia?のプレイヤーのブログのようで、至るところにプレイ画面を撮った、

スクリーンショットが掲載されている。


『サンマのマジカル☆ブログ』


異様なブログタイトルが見えた。

趣味が悪いなと思いつつも吉沢が画面を上下にゆっくりとスクロールさせて、

ブログを見せてくれた。

どうやら魔術に精通していると自称するブログ主が日々の成果を、

面白おかしく載せているブログのようだった。

別段変わったプレイヤーでもないらしい、普通のブログだ。


「これがどうかしたのか?」


と井出は訝しげに吉沢に聞くと、彼女は井出を小馬鹿にしたような顔になり


「もうちょっと 内容を見なさいよ 馬鹿」


そう言って面倒そうにスマフォを井出に見えるように置いて、

自分はまたポケットを探って煙草を取り出して、火をつけた。

いい加減に止めた方がいいと言いたいが、ブログの内容を見てからでも遅くないだろうと、

今度はちゃんと文章に目を通すことにした。

しばらく文章を眺めると、井出は少し驚いたような顔をして吉沢を見た。

それを見てやっとわかったかというしたり顔で吉沢が煙草を口から離して、

口を開いた。


「やっとわかった?」

「あぁ・・」


そのブログ主は以前世話になった、

転移魔法でロストした魔術師と同じキャラ名だ。

まさか、再開しているとは知らなかった。

しかもとても幼い少女の姿で


最近ファミレス行ってないなぁ

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