表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
32/149

32話 休日の朝

結局その後3人でリビを探しに森の中を数時間うろついて、

専用チャットで誘導してもらって、保護することができた。

ラヒムの応急手当が上手くいったのかは知らないが、

出血は止まってロストの危機は去っていた。

だが、ユエとバックスの二人はどこまで逃げたか分からずじまいで、

専用チャットにも応答しない為、

結局長時間の捜索も危ないと、今晩はそろそろログアウトすることになった。



一晩のうちに様々なことが起こった気がして、

井出は疲れた目をこすって明日の晩にまた会う時間を話してログアウトした。

森の中は危ないと必死に無理をしてでも森を抜けようと勧めるラヒムを尻目に、

俺は眠い、何があろうと今は寝てやるぞと井出はかたくなにラヒムの説得を退しりぞけ、パソコンの電源を切った。

時間だってもう既に深夜1時を回っている、井出はそこまで夜に強い方でもない。

ゲームよりも現実の睡眠を最優先する男だった。


そして、ベッドに横になるとすぐにでも睡魔すいまがやってくる。

心地よさにそのまま意識を手放して井出は寝ようとしたが、

今度は携帯のアラームがセットした時間より何時間も早く突然鳴り響き、

邪魔をする。何事だろうと携帯を手にすると、アラームは目覚まし時計ではなく

メールを受信したことを伝えるものだった。

井出は着メロに拘る(こだわ)タイプでもないため、

アラームの音が一緒にしていた自分の不精さを少し嫌になりながらも、

古い折りたたみ携帯を開き眠い顔で画面を覗いた。


メールまで使って小林が森を抜けることを催促にしに来たかと思ったが、

それは小林からのメールではなく『吉沢よしざわ』のものだった。

シシャモのプレイヤーで付き合いもそれなりに長い、3年前ぐらいにOFF会で知り合い、

しばらくはよくメールでのやり取りもしたが、最近は全く無かった。

メールの文にはごく簡単に 明日、よければ会いたい との短い文と時間と場所が書かれていた。

明日も平日で無理だと一瞬思ったが、すぐに思い直し それはあくまで会社に勤めていいた時の曜日感覚であって、現在のバイトなら明日は休みだった。


どうもこの前の柵山さくやま来襲で色々忘れてしまっていたようだ。

明日が休みだと早く認識していれば、少しの寝坊ぐらい甘受かんじゅして森を抜けることに対してラヒムに反対はしなかっただろう。

しかし、今更ログインしなおすのも面倒臭い。

井出はとりあえず吉沢からのメールに 行く と2文字で返信し、

柵山を恨みながらベッドに横になり眠ることとした。

睡魔はアラームのせいで多少訪れるのが遅かったが、

色んな意味で疲れた井出には関係無く眠ることができた。



だが、起床時間が定着してしまうと、

体内時計というものは無理にでも己を起こしたがるもののようで、

井出の目は普段ならアラームがなる時間に開いてしまった。

数時間前に大分普段より遅くアラームを設定した筈なのに、これでは意味がなかった。

二度寝でもしようかと思ったが、疲れていた割には何故だかそんな気も起きず、

仕方なしに安いパイプベッドから身を起こした。


休日の朝日を浴びようと、少し気怠けだるい体を動かしカーテンを開く。

直様目をつむりたくなるほどの閃光が視界を遮り、

慣れたようにそれに耐えて目を見開けば、清々しい朝の風景が目に映った。


「・・・おはよう」


と間抜けに朝の風景に小さい声で呟いてみた。

今日は朝の挨拶をするような相手はいない、

普段はバイト先の同僚や店長に腰をできる限り低くして挨拶している。

会社勤め時の悪い癖かもしれないと井出は思っていた。


「あっ おはようございます」


てっきり挨拶を返す相手などいないものだと踏んでいたのだが、

返事は下から聞こえた。窓越しであったのによく通る声を発した、

近所迷惑な輩は小林だった。

ごつい体で今にも嫌な意味ではち切れそうな地味な制服を着て、

先程のゲーム内での必死さはどこに消えたのか、

明るい笑顔で窓の向こうの道路の脇に立っている。


一応何も返事をしないで部屋に引っ込むのも悪いので軽く手を振ってやると、

元気良く振り返し去っていった。

あれでも高校3年かと思ったが、多種多様なメディアの影響を受け、それを悪い意味でもいい意味でも実践しようとする若い人はとても多い時代なのだから、

小林みたいなのはまだマシだと勝手に納得して井出は部屋に引っ込んだ。



休日とは言っても柵山のせいである意味不意にやって来た休日に、

井出は何も準備が出来ていなかった。

普段なら前日に何か酒でも飲もうと少し買いだめでもするものなのだが、

それを忘れていたのでどうも、この休日は楽しめそうにないなと落胆した。


吉沢が会おうと言った時刻まではまだ大分ある、

それまでどう暇を潰そうかと井出は考えたが、

先に何か腹に食べ物を入れたほうがいいと冷蔵庫を開けてみた。

冷凍食品に少しの野菜と肉・・・肉はよく見たら賞味期限が切れている、

他には食パンぐらいで、特にこれといったものもない。


まずは腹ごしらえに何処か適当なところで朝食をとることにした。


適当な衣服をまさぐり、普段からよく着ているTシャツとジーパンに着替えた。


何かのキャラクターと英語のロゴがTシャツにプリントされているが、

そのキャラクターとロゴが何を意味するのかは知らない。

もし知っていたとしても、それはどうせ特に意味もないことであり、

それは外人がよく漢字をプリントされたTシャツを着ることとなんら変わらない。

寧ろ意味を知ったら恥ずかしくなるような気がして、それ以上詮索せんさくはしないことにした。


財布と携帯をポケットに確認して、

いざ玄関のドアノブをひねろうとすると、

ドアノブをひねる前にここ最近よく鳴るチャイムが鳴った。

絶妙なタイミングで少し驚いたが、すぐに冷静になってドアスコープを覗き込む。


レンズの向こうには黒い髪をボサボサに肩よりも伸ばし、

赤いジャージを着た小柄な人が立っている。

その人物に対して見覚えがある井出は直様鍵を外して、

少々軋む音を立てながら見覚えある訪問者に対してドアを開けてあげた。


「おはよう」

「あぁ おはよう・・・・・早いな」


訪問者は少しボソボソとした口調で初対面には少々聞き取りづらいかもしれないが、

付き合いがそれなりにゲームでも現実でも長い井出にはよくわかる。


「待てなかった すぐ来て」


小柄な人は井出を見上げてそう言った。

すると長くボサボサに伸びて顔を少し隠していた髪が顔から離れて、

顔がよく見えた。

それに対して井出は面倒臭そうな口調で頭を少し掻きながら わかった と応える。


それを聞くと訪問者は顔を明るくした。

早く来すぎたから断られるのかと思っていたのだろうか、

だとしたら待っていればいいのにとつくづく感じるのだが、

それがこの訪問者である吉沢には無理な相談であることは井出自身よく知っていた。



長いボサボサの髪と井出も文句は言えないがオシャレとは程遠いジャージ姿でも、

髪を退かせば整った顔が拝める。

問題は本人にその邪魔な髪を退かす意志が無いことだと、

井出の返事を聞くと、直様勝手に歩きだした彼女の後ろ姿を見て井出は思った。


定休日が欲しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ