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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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30話 リンチ

※今更ながらルビをふってみることにしました。

数十歩先でラヒムをぶら下げていた騎士らしき男の言っていることが、

卵には理解できなかった。

だからそれに対してごく当たり前に返したつもりだったのだが、

何故だかその卵の発言が酷くしゃくに触ったらしく、ぶら下げたラヒムをそこらへんに軽く投げてこちらへ長剣を構えて突進してきた。


「なんだ あいつ?」

「知らないよ ロールプレイングが過ぎて、妄想と現実の区別でもつかなくなんたんじゃないのか?」

「ゲーム脳ってやつ?」

「あぁそれそれ」


雄叫びをあげ突っ込んでくる騎士とは対照的に卵とシシャモの二人は冷ややかに怒り狂う騎士を眺めて、ゆったりと得物を構えた。

ずいっとシシャモが卵の前で槍を突っ込んでくる騎士に向けどっしりと構え、前衛ぜんえいをしてくれるなら安心だと、卵はまたクロスボウに矢を装填そうてんすることにした。


一方投げられて地面に叩きつけられたラヒムは一瞬意識が飛びそうになったが、

それを何とかつなぎ止めて立ち上がり、騎士ほどではないにしろ散々好き放題やってくれたお返しにとこちらも短剣を力強く握り締め、騎士の背後へ突っ込んでいく。


シシャモの前に後数歩の距離にまで騎士が近づいてくると、これ以上は進ませまいと素早く慣れた手つきでシシャモが槍を繰り出した。

だが、重い甲冑を身につけている癖に騎士はその繰り出された槍を寸前で身軽に躱したので、

切り込まれるとシシャモは一瞬身を強ばらせたのだが、騎士はシシャモに向かわずに彼の後ろで装填作業をしている卵に向かっていく


「もう一度冥土に送ってやるよ」


と雄叫びにも似た口調でかぶとに隠されてもわかるような激しい声で長剣を振り上げる。

シシャモは慌ててクロスボウの装填中で無防備な卵を援護しようと、

卵に切り掛ろうとする騎士に槍を繰り出したが、踏み込みが足りなかったのか槍の穂先ほさきは虚しく宙を突く

しまったと彼は思ったが、騎士の長剣は既に卵に全力で振り下ろされる寸前だった。


だが、卵に刃が到達する前に騎士の甲が吹っ飛ばされることになった。

一瞬何が起こったのかシシャモにはわからなかったが、強い衝撃を受けてよろめいた騎士の向こうに見える、クロスボウを打撃系の得物のように携えた卵を見て何が起きたのか理解した。


「こいつ、そんなたいした腕じゃないな」


ブルドッグの顔がニヤついたのかと思わせるほどの愉快そうな声で卵は笑い、

手には騎士の頭を殴って少々壊れてしまったクロスボウが握られている。

だが、壊れてしまったクロスボウに卵が目をやると愉快そうな雰囲気は消え去って、

再び強い衝撃のせいでまだよろけている騎士を強くクロスボウで殴った


「おい、壊れちゃったじゃないか」


とても不機嫌そうに卵は言った。

画面の前の井出も愛用のクロスボウが己のせいだとは言え、壊れたことを不快に感じていた。

このゲームでは有り触れた形状をしているそのクロスボウは、

すぐに使い捨てされてしまうような安物クロスボウではあるが、卵にとっては今まで刹那的せつなてきな生死の狭間を行き来するのに大事な相棒であったのだ


「責任取れよ」


そう言ってその大事な相棒を投げ捨てると、

卵はすっと戦闘用のピックを取り出して構えた。

甲が吹っ飛ばされ騎士の顔があらわになるが、森の中が暗い性かよく見えない。

だが、そんな些細ささいなことなど今の卵たちにとってはどうでもいい問題で、

今はそのクロスボウを壊される原因を作った張本人自身に命を持って責任を取ってもらうほうが先だ。


騎士は殴られて意識が朦朧としていたが、それをなんとか抑えて周りの状況を確認してみれば、

目の前にはピックを構えたブルドッグを模した甲冑を着込んだ卵と、

横には槍を構えた長身の男に囲まれていて、そこまで頭の良くない騎士でも今更になってだが自分が不利だということにやっと気付いた。


「逃がさないからな」


卵がそう騎士に吐き捨てるように言うと、騎士の背後から先程からずっと追いかけてきていた。ラヒムが短剣を素早く突くようにして突進してくる。

それを合図にしたのか、ラヒムの突進を長剣でなんとか躱した(かわした)騎士へ、

横にいたシシャモの槍が容赦なく、その長剣を携えていた手に穂先が突き刺さり、

思わず痛みにたじろいだ騎士に容赦なく3人の攻撃が襲いかかった。


先程騎士が森賊を襲った時よりも遥かに真逆でしかもこちらのほうが大分質の悪い光景で再現され始めた。


騎士も必死に攻撃を躱してなんとか切り抜けようとするが、

素早く短剣で刺してくる小男からまずは斬ろうとすれば、そこに割って入ってくるように忌々しい犬甲冑を身につけた男がピックでその騎士の斬撃を躱し、

そしてその隙に長身の男の槍が騎士を襲った。

こうも囲まれては幾ら甲冑に身を固めても無意味なもので、装甲の薄い毛皮の部分から

切り刻まれてしまう。

毛皮は傷口から出血した血で赤く染まり、

目だけはその血と同じようにギラギラと輝くが、結局それも見掛け倒しだったのか、

その瞳は経験豊富な3人の前にはあまりにも無力だった。


「・・こいつは案山子かかしだな」


呑気にシシャモが乱戦の際に呟いた。休まず攻撃を加えるラヒムと違って、

隙をついて突きをくわえるシシャモは槍を構えたまま様子を見守っている


「全くだ、ラヒムだけでも何とかなるかもな」


そう卵がシシャモにつられて言ってるあいだに、騎士は血を流しすぎたのか、

既に立っていることもできずに、その場に血を流して崩れ落ちた。

ロストをしないところを見るとまだ生きているようだが、それも長くはないだろうと

卵は出血を見てそう重い、一応動けないようにと腕を押さえ込み、

それに倣って(ならって)ラヒムは足を押さえ込んだ。

騎士は暴れる気力も無いようで倒れてから静かになった。


「やりましたね、卵さん」


足を抑えながら興奮で体が小刻みに震えているラヒムは嬉しそうだった。

峠では戦利品を拾ったり、軽く斬りつける程度の活躍だったのだから、

彼にとってみれば3対1のリンチにも近い戦いではあったが、十分満足できるものだった。

「あぁ、大戦果だな 見ろよ 犬どもの団長様だぞ」

さり気なく横から槍を疲れたので手放して地面に座ったシシャモの発言に、

ラヒムは最初意味が理解できなかった。

だが、数秒間を置くと急に顔を強ばらせて驚いた。


「こいつの甲冑の胸辺りを見てみな」


驚いて思わず抑えた足を離しそうになったラヒムを怒鳴って卵が落ち着かせ、

シシャモが簡単にこの騎士が団長である理由を説明した。


騎士が胸につけた紋章にある三つの首を持った犬はよくファンタジーでは耳にすることもあるだろう『ケルベロス』という化け物であって、その化物は冥界の番犬であるから、

番犬騎士団の象徴としては都合のいいモノで、紋章をよく見てみれば三つの頭の内、

この騎士が付けた紋章のケルベロスは一番下の頭だけ異様に大きい意味は

この団長が三つある頭の中で最も下の地位であるということを意味している。


「・・・つまり、団長クラスでも切り込み隊長あたりの下っ端ってことさ」

「なんだ じゃぁ峠のあのデカ物とそんな変わらない辺りってことですね」

「そゆこと」


納得したラヒムは先程あんなに怯えた自分が馬鹿らしく思え、

見掛け倒しの情けなく押さえ込まれた騎士に文句の一つでも言ってやろうと、

だが、暗かったので顔を近づけて騎士の面を見た途端に、またラヒムは青ざめてしまった。


騎士の顔は卵ほど酷い作りではなかったが、騎士の顔は根本的に自分らのような顔はしていなかった。


それはディンゴと呼ばれる犬の顔で、先程卵が吹っ飛ばした甲は甲などではなく

ただのマスクだったのである。


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