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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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17話 

「投げたらすぐ掛かりな」

と突然、通常チャットの文で使われる色でなく、桃色のキャラ専用の回線チャットをリビが打った。

彼女は卵の方を少し横目で見たが、どこか期待するような色を浮かべている。

同じ文を横のシシャモにも伝えたらしく彼が小さく頷くのが確認できた。

「ほほう・・いい心がけだな」

目の前で得物を構えたグレンは構えを崩さぬままでいる。

「だが・・俺に刃向かった連中に加担した罪は重いぞ・・」

「いえ、ですから私は全くこのグズ共とは関係ありませんと・・」

疑うグレンに対してリビは只管嘘泣きを繰り返しながら、腰の銀貨袋をごそごそとしている。いつ彼女が投げナイフを投げるのかわからないので気を抜けない。

酷いこと言いやがると卵は顔を渋くしたが、リビのこれは演技であると信じて固唾を飲んで事の次第を見守る。

「では何故そのような奴らと共にいる?」

「いえ・・それはですね・・・・」

困った様にリビが口篭り、助けを求めるような顔で卵の方を見た。

こちらを見られても困る、一体自分にどうしろというのか。そう卵も困ると突然リビは卵に指を差し、妹が亡くなったかもしれないと嗚咽した時ほど大きい声を出して泣き出した。

「私はですね・・・攫われたんですっ騎士様っ!この酷い悪党にっ・・見てくださいこの外道畜生を・・この者共は私を森の集落から妹と私を体目当てにとんでもない外道共なんです!!」

リビは嘘泣きと言えるのか、もう分からないほどワンワンと大声で泣きグレンに縋り付くように這いながら慈悲を求め彼のもとへ這いずりだした。

幾らなんでもそこまで言うかと卵は呆れ果て、呆れを通り越してシシャモの奴は苦笑したい気持ちで一杯になって今にも吹き出してしまいそうだったが、ここで笑うのはマズいと必死に堪えている。

「妹はなんとか逃げ出すことができましたが・・私は・・どうかっお願いです、どうかこの憎い畜生どもを成敗してやってください・・助けてください・・」

ここまでくると本当は彼女は卵たちを裏切る魂胆なのかもしれないと疑いたくなるが、だからといってこちらからできることといえば正義の騎士の前にうろたえるそのド畜生を演じる事だけだった。

彼女の必死さが通じたかどうかは分からないが、そんな慈悲を求める彼女の演技を騙されたのか、大柄な騎士は少し思案するとできる限り優しいおおらかな声を出して

「・・・わかったあなたを信じましょう ここで正義を示すのは騎士の役目です」

とまるで人柄すらも変わったかのように堂々とリビに対して構えを解いて大きい手を差し出した。

まさかここまでしておいて女が泣きの一つ入れればコロッと態度を変えるとは男というのは恐ろしく単純なモンだと井出は思ったが、男なんて皆そんなもので自分も結局はその中の一人だと思うと騎士の変わり身に少しだけ同情を覚えた。

だが、このように泣きを入れる女を簡単に信用してはいけないのは現実でもゲームでも同じことで、リビは騎士が親切に警戒を解いた隙を突いて素早く腰の投げナイフを手に取ると間髪いれずにグレンの優しく女性を包み込もうとする笑顔に無情にもナイフを投げた。

「大丈夫です 私はあなたのm・・」

どうやら上手く命中したらしく、直様グレンのくぐもった悲鳴が上がった。

そしてそれに続いて今までクシャクシャに涙で歪めた顔を戦闘の高揚に瞬時に変えて彼女が

「ぶっ殺しな」

と悲鳴とも奇声ともとれるような声を発し後ろへ飛び退くと、待っていたとばかりに卵より早くシシャモが槍を手に、思わず武器を痛みで取り落として顔を両手で覆った哀れな騎士に襲いかかる。

戦闘用のピックに得物を持ち替えてシシャモのあとに卵も続くが、先にシシャモが思わず蹲ったグレンに容赦なく突きを入れる。

槍はまるで踊るように鮮やかに動き、正確に甲冑の比較的装甲が必然的に薄くなる脇などの関節部に突き刺さる。何が起きたのかわからぬまま正義の騎士は情けない悲鳴を上げるが、先ほどの矢を受けても何ともないような奴だ。ちゃんとロストするまで攻撃の手を休めてはならないと素早くシシャモは槍を突き続けた。

「やめろっ・・やめてくれ・・」

と両手で顔を覆ったまま騎士が懇願するが、シシャモは戦闘の興奮に息を荒げ全く意に返さない。そして槍を突きながら卵に

「畜生 まだ死なないぞっ 卵!立ってないで手を貸せよ そのピックで騎士の頭を割ってやりな 頭ごと潰されれば流石にロストするだろ」

さすがに疲れたのかシシャモがやっと突くのを止めたが、既に騎士は甲冑の関節部からダクダクと大量の血をまるで噴水のように吹き出して、既に跪くこともできずに地面に突っ伏してはいるが、ロストする気配は無く未だにリビほど上手ではない声でやめてくれと慈悲を求めていた。

「おうっ」

と井出は意気揚々と返事をうち即座に突っ伏した騎士の頭部に回り込み、ピックを振り上げる。この瞬間ほど興奮するものもないと、井出は現実では到底味わえないだろう犯罪的な興奮を味わいつつ今にも全力で兜を叩き割ってやろうと構えるキーを素早く叩いた。

「まっ・・待ってくれ」

と振り下ろそうとした直前で騎士が手を振り上げ叫んだ。

今にも振り下ろしたいところだが、少し騎士はロストされる前になんというのか井出は気になり、辞世の文句ぐらい聞いてやってもいいだろうと振り下ろすのを一旦止めた。

「ま・・参った・・諸君の腕には感服した・・諸君らの腕ならこのグレン 諸君を騎士に推薦致す。

賊生活よりも遥かに良いものだ どうだ?俺を助けてくれれば・・」

聞くに耐えない文句を騎士は並べ始めた。

今までだって追い剥ぎをする際に運悪く一撃では仕留め損なって、命乞いをする者はあったがそれが金から騎士という下らない勝手な地位にすり替わっただけの内容だった。

それを横で見ていてシシャモが情けない騎士が癪に触ったのか卵の横からずいっと騎士の頭上に頭を覗かせ

「そうかぁ騎士様かぁ生憎様そういう生活は十分に味わった身の上でねぇ・・・グレンとか言ったか?見たとこ新参者らしいな、俺らを知らないとなると」

まるで汚らしいような目で騎士を見下ろすと唾を吐きつけ、そして確認するように卵の方を見た。顔にはもう殺していいぞと言う合図がありありと現れていた、それ見て卵はまたピックを振り上げる。それを見て慌ててまた聞きなれた文句を並べようとする騎士をなだめてシシャモは言う

「冥土の土産に覚えておきな 俺はシシャモ 横の酷い顔している卵みたいなのが『卵かけご飯』ってふざけた名前の追い剥ぎだ。おい、睨むなよ わかっているよ。お互い様だな・・・まぁとにかく黎明期の騎士様に挑んだのは間違いだったな。・・・わからない?あぁ・・じゃぁこう言えばわかるな、俺らは『巫女攫い』だ」

最初はどうもピンとしない顔をしていたが、最期の単語を聞いたとき騎士は口をパクパクさせ何も言えなくなっていた。

久しぶりにその四文字を聞いた。3年前が懐かしいと井出はろくに覚えてはいなかったが、断片的な思い出がその時脳裏を駆け巡り少し懐かしく暖かい気分になりながら。

力強く戦闘用ピックを哀れな正義の騎士に振り下ろす、思い出をかき消すような悲鳴と血しぶきが辺りに飛び散った。


長くダラダラと色んな伏線を詰め込んでいきます。

いつ回収するかはわかりませんが詰め込んだからには回収するのが作者の勤めですよね

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