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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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12話 道中

結局シシャモが集めた連中は本当に集落にいたユーザーを動員したらしい。

約20~30人ぐらいだろうか、皆意気揚々と酒を飲んで盛り上がっている。

薬草採取や栽培を行い組合に売って生計を立てる農夫に、武具を作って売る鍛冶職人、そして森に入って木を切る木こりや狩人・・・挙句の果てには話を聞いた酒場の主人まで参加した。

まるで酒場の中で奇妙な宴会が開かれているような異様な空気が漂っていた。

果たしてコレだけの人数になると一人頭の報酬は銀貨数枚ほどに下がるのだが、何故こうも集まったか卵はシシャモに問うと彼は笑って

「奴らは報酬にそこまで興味はないんだ。肝心なのは騎士の存在だよ」

他のユーザーにとって騎士の存在は天敵のようなものであり、また出世への足がかりにもなる危険かつ魅力的な存在だった。

集落の住民の中には騎士のせいで迫害され並々ならぬ憎しみを持つものもいれば、騎士たちの整った装備や装飾品を売れば大金が手に入ると半ば卵達と同じ追い剥ぎじみた奴までいる。

チンピラや門番達は騎士を殺した証拠を町の各組合に持っていけば傭兵組合ならばそれなりの地位での入会や高い報酬が得られるし、こんな寂れた集落にくすぶっているのはたくさんだという連中も多く、リビから渡された前金のことは誰も気にしていなかった。

それよりも騎士と出会って倒したあとの取らぬ狸の皮算用とは言ったもので、目を輝かせ思案にくれる者や、激しい戦いになるだろうと想像し闘志を燃やす者と寂れた集落の酒場で様々な思惑が今奇妙に交差している。

井出は画面の前で面倒なことになってしまったと頭を掻くが、こうも大勢集まってしまったからには今更解散なんて出来るわけもない、もし しようものなら騎士より先にこちらが殺されてしまうだろう。

「こんなに大勢馬車に乗らないわよ」

リビが酒を煽りながら渋い顔をして、シシャモに言うと

「大丈夫だ。皆それぞれ馬車は持っている、久しぶりに大行軍になるぜ」

シシャモも酒を煽りまた愉快そうに笑う、本当にコイツは昔からよく笑うと半ば呆れながら卵はあまりの人数に慌てふためくラヒムとユエを滑稽に眺めていた。



「結局乗り切らなかったわね」

さほど整備もされていない道を通るためよく揺れる馬車の中で膝に小柄な自身の妹のユエを座らせ、

苦い顔で頬杖を付きながらリビは溜息をついた。

目の前には向かい合う形で自分が最初に本来雇ったはずの卵が座っていて、その隣の彼の相方のラヒムという小男がそれなりに愛想のいい顔をして集落の連中の馬車に乗り切れなかったチンピラ共と話している。


そのリビがため息をつく数時間前、すぐさまリビの馬車と門番達が移動の際使う馬車そして集落の連中が使う馬車の三台が集落をもぬけの殻にして出発した。

例の騎士が関所を構えている峠に着くまでにはまだ大分時間があり、上手くいけば真夜中辺りには着くとリビが扇動者たるシシャモを通して説明すると、集落の連中は我先に馬車に乗り込んだ。

しかし集落の連中の馬車はそれなりに大型の輸送に適した大きさの馬車だったが、10人弱の大人数を乗せられるほど余裕がなく、結局乗り切れず溢れたチンピラ共がリビの馬車にずかずかと乗り込んできたのだ。

リビの馬車は八人程度が両端に備え付けられた少しの段差を椅子替わりに腰掛け、向かい合う形で乗り合うもので。本来は幌付きの馬車だったが、リビが幌は必要ないと以前判断して馬車には取り付けておらず、本来ならその幌を支えるための骨組みが寂しそうにむき出しになっていた。

その馬車がろくに整備されていない道中を行くが、それを庇うように馬車に乗った連中は騒がしかった。


チンピラ共は継ぎ接ぎだらけの役に立つかどうか見当もつかない酷い有様の鎧を身に付け、釘を刺した棍棒や肉包丁に酷い者は火かき棒すら武器として武装していた。

しかし、目に浮かぶ尋常ならない闘志の炎と体中の傷が彼らを一級品の戦士と思わせた。

「しかし騎士相手か、腕が鳴るな」

「フレークはすぐ斬られて殺されるのがオチだよ」

「なんだとっ」「卵さん、どうでもいいですが晩飯何でした?」

「てめぇ俺を舐めているのか?」「唐揚げ弁当」

「レモンをかけると美味しいですよ」「あれは邪道だよ」

「いいじゃないか、そのブサイクな面ロストして作り直せよ」「ふざけやがってレモンが邪道だとっ?!」「今度は女にしろ、女 それも美人」「悪かったよ、あんたの飯は?」

「カレー」「言われずとも美人にするさ」「だからこの前アイドル雑誌買って顔の研究してたんですね」「美味しいよな、何かける?」「てめぇいい加減にしろよ」「ソースだよ、ソース」「マヨネーズもいいぜ」「顔のパーツを中央に寄せるんだよ」

この意味不明な会話が無ければ。

リビの馬車の中では現実とゲームの中での会話がこんがらがって混沌とした空気になっている。チンピラ共が手柄話を始めたかと思えば、卵と小男が晩飯の話を始め、それにチンピラの一人が介入してきてチャット欄は混沌としてきた。

話の途中で会話の相手を間違えたチンピラが小男に間違えて殴りかかる場面もあれば、和やかに食べ物談義を始めたかと思えば、直様殴り合いに変貌する。

あまりにも酷い茶番にリビはまた溜息をついて、早くこの面倒な連中と別れたいものだと妹に専用チャットで話しかけたが

「マヨネーズはさすがに無いわよ」「あ?マヨネーズは何にでもあうんだよ」

「俺、醤油」「カツカレーも旨いよ」「あの雑誌高かったんだぞ?!」「カロリー高いよ」

「嘘言うなよ 398だろ?」「いい加減尻が痛くなってきたぜ」「けど美味いぜ」

「我慢しろよ、騎士にその痛みをぶつけろ」「398でも俺には高いんだっ」「あっカツカレー私も好き」

姉の冷静なチャット文を気に求めず、妹はむさ苦しいチンピラと追い剥ぎに混じっていた。

もう、騎士なんかどうでもいい、とりあえず早くこの訳の分からない悪夢が覚めれば良いとリビは目をつぶった。



「・・・あれ?あんた「卵かけ御飯」か?」

まるでゲームをしている実感を全く味わわせないチャットの欄の中に、一つ卵に興味のある発言をしたチンピラがいた。

「そうだが」

「おっ!やっぱり俺だよ俺っフレークだよっ覚えてないか、1年前ゴーレ要塞で一緒に戦ったよな」

卵が返事をするとチンピラの「フレーク」と名乗った男は顔を輝かせ卵に近づいてきた。

黒い髪をボサボサに伸ばし、いつ顔を洗ったのかもわからないくらい汚い顔で笑を作り卵に握手を求めた

「あぁどっかで聞いた名前があると思ったら、あんたか 久しぶり」

井出も珍しいこともあったものだと古い戦友の握手に応じた。

フレークの装備はチンピラの中でも一番まともそうで、錆び付いて汚くなった装飾をした剣が他の連中とは違う雰囲気を醸し出している

「今までどうしていたんだよ?ゴーレの戦から音信不通だったじゃないか」

「色々あったんだよ。色々」

卵は深くは答えず、外の景色に目をやった。卵がさほど話したがらないと悟ったフレークはそれ以上何も詮索せずに、またどうでもいい日常会話に戻った。


どうでもいい会話あってこそネトゲは楽しいと思う

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