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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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11話 集合

門番は相変わらず長い槍を持って門の横に面倒臭そうな顔で立っていて、男が近づくと

「早い出勤だな」

と皮肉そうに笑った。

門番は身長が男よりも高く細い体をしていて、顔も細長かった。

男より歳は少し若いが顔に刻まれた皺が男との年齢差を縮めている。

頭には鎧と同じ緑色の尖った帽子をかぶり、帽子の隙間から男とは相対的にふさふさと若干白い金髪が肩まで伸びている。

「仕事の話がある」

と男は門番を見上げ、先ほどの依頼の話をした。

どうやら男はこの門番を雇いたいらしい。

だが、門番は仕事の内容を聞くと渋い顔をした。

「騎士が峠に?むさ苦しい男と心中するのは嫌だぜ」

「女もいる」

「そこじゃない」

卵の台詞を返すと、門番は腕を組んで目をつぶり思案を初めた。

しばらくすると何かに気づいたように口を開いた。

「・・・報酬はどのくらいだ?」

卵はごそごそと懐から先ほどもらった銀貨袋を見ると、門番の目が打って変わって輝き始めた。

「これが一人分か?」

「あぁ、街までたどり着ければこれの倍だとよ」

卵がそう告げると門番はこれだけあれば葬式もできるなと笑い、調子よく卵の肩を叩くと

「わかった、やるよ。」

「助かる・・・それと何か武器はないか?クロスボウだけじゃ心もとない。 あと他数人欲しい、相手は武装している」

「いいぜ 来な」

門番は卵とラヒムを手招きし、門の横に門番の休息所と思われる小屋に招き入れた。

小屋の中には交代要員で待機しているのか、招き入れた門番と同じような緑色の革鎧を身につけた男達が4人ほど部屋の真ん中で小さなテーブルを囲み、なにやらサイコロを振って賭け事をしている。

喜怒哀楽を4人で上手く分割したような表情をして、テーブルには少ない掛金とコップに酒が注がれている。

「おい、お前ら儲け話だ」

招き入れた門番の言葉に賭け事をしていた4人は儲け話という点に条件反射したのか、素早くこちらに振り向いた。4人の男たちの顔は皆酷い傷やアザに火傷と歪んでいて、儲け話と聞くと顔に笑みを浮かべ、顔のキズやアザが一層歪んだ。

「なんだよ シシャモ 誰か殺るのかよ?」

4人のうちもっとも図体が大きく屈強そうな髭面の男が、招き入れた「ししゃも」と呼ばれた男に近寄った。腰には分厚い刃の戦包丁を差している。

「あぁ 喜べ、峠に騎士が来たぜ」

そう ししゃもが言うと、騎士という言葉に男達が過剰反応した。

先ほど「シシャモ」は騎士と聞いて渋い顔をして依頼を断ろうとしたが、逆にこの4人は顔に興奮と笑みが入り混じった顔をし、狭い休息所の中で雄叫びを上げた。

口々に「ぶっ殺してやる」と怒りやら「これでまた戻れる」と歓喜に満ちた声が上がり、卵には彼らが騎士に対しどのような気持ちでいるかはわからないが、それなりに事情があるのだろうと深くは考えなかった。

「こいつらイカれてるよ」

と男の後ろでラヒムが呟くが、イカれてるぐらいがちょうどいいのだと卵が諭した。

そう興奮する男たちの前でシシャモが報酬はこれだと卵の銀貨袋をとって見せると、4人はさらに盛り上がり、各々武器を振り上げ威勢を上げている。

「これで7人だな」

「後は武器だ」

卵が言うと、シシャモは部屋の隅に掛けられている武器の中から一つ戦闘用のピックを取って、卵に手渡した。

「ほらよ、卵 これが得意だったよな?」

「あぁ 最高だ」

卵はピックを手にすると満足そうに握り締め、腰に差した。

これさえあれば、多少装甲の厚い甲冑だろうが簡単に貫通させることができた。

剣となると甲冑相手にはさほど効果が無く、こちらのほうが効果的だった。

これでまぁなんとかなるだろう と卵とラヒムは準備が整ったら酒場に集まってくれと伝えて、

満足そうに小屋をあとにしようとすると、シシャモが男を引き止めた。

「待てよ、卵 7人だけじゃ少ない」

シシャモは不安そうに顔をし、男を引き止めるととりあえず椅子に座らせ

「相手は聞くところによると甲冑で身を固めているのだろ?それを相手にするとなるともっと人数がいる。」

先ほどあれだけ面倒そうな顔をしていた男がまるで別人の様な真剣な面持ちで、卵を見つめ話している

「だが、ここらで他に騎士相手にするような奴がいるのか?」

多分あの4人は何か騎士に対し特別な思いがあるのだろうが、他にこんな依頼を受けてくれる連中なんて井出には全く見当がつかなかった。

確かに金さえ積めばそれなりの奴らは集まるだろうが、いくらそれなりの財産がありそうだったリビでも10人以上かそれ以上の人数の報酬は用意できないだろう。

リビが体で払えれば安く済むのだろうなと井出はぼんやり思ったが、

そこはゲームなのでさすがに無理がある。

「あれだけの銀貨ならひと袋だけでもっと集められるよ」

真剣な顔だが、どこか楽しんでいるようなそんなどちらともつかない顔でシシャモは一時間あれば、もっと人数を集めることができると卵に告げ、卵はじゃぁ任せてみようと銀貨を渡して、ラヒムと共に小屋を出た。


「銀貨持って逃げたりしないですかね」

小屋を出て酒場に戻る道中、ラヒムが心配そうに卵に話しかけた。

シシャモ達にリビの投げナイフが飛ぶことはないんだし、一晩で集めてくるどころか一晩で高飛びするかもしれないとラヒムは思ったのだ。

「大丈夫だよ あいつとは長いんだ」

しかし、そんなラヒムの心配をよそに卵は悠々と歩いている。

半年前からこの集落で卵と話すあのシシャモという門番はチラチラとは見ていたが、そんなに彼と付き合いが長いとは今初めて知った。

本当にこの男の過去がラヒムは気になってきていた。

「長いってどのくらいですか?」

「お前より長いよ」

卵はそれ以降幾らラヒムが男の過去について聞いても、のらりくらりと話を躱すのでラヒムもいい加減飽きてそれ以上聞くのをやめた。

酒場に戻り、コトをリビに伝えると少しは待つと快諾した。


シシャモがどんな連中をかき集めてくるかは分からないが、彼との付き合いも長いため井出は彼を信用することにした。

しばらく酒場で待つことになり、井出は男を酒場の席に座らせると一息ついて画面から目をそらし近くに転がっていた漫画を手に取り眺めた。特に会話する気もシシャモが酒場を訪れるまで無かった。

手にとった漫画は以前、小林が友人に勧められて買ったというやつで、よくある何か特殊な力を持ったヒロインに主人公の男が振り回されるというありきたりな内容で、今頃こんなものが売れるのかと井出は思ったが。

案の定その漫画は今持っている一冊の単行本しか出ていないみたいで、帯の方に巻数を示す数字がない時点でわかった。

だが、個人差はあるだろうが絵も可愛い方だと思ったし話もベタだが、まぁ予想が全くつかない展開ってのも気疲れする気がして、井出自身としては面白いと思っていた。

まぁ俺が幾ら面白いと思っても売れないもの売れないのだろうと少し無情に感じながら、井出は恒例のごとく安い缶コーヒーのプルタブをひねろうとした。

しかし、それは画面に映ったシシャモの文字に中止させられた

「連れてきたぜ」

卵とラヒムが声のした方へ向くとシシャモが酒場の入口に立っていて、その後ろの先ほどの血の気の多い門番達がいたが、肝心の新手が見えない。

「おい、他は?」

卵が怪訝そうに聞くとシシャモは愉快そうに笑いながら

「外にいる」

と応えた、卵は少し不思議に思いながら中に入るよう促した。

外に出るのもいちいち面倒だったが、それは間違いだった。

「外?中に入れろよ」

「悪いね よし!入れ諸君!」


シシャモが酒場の外に大声で呼ぶと最初に血の気の多い4人が入ってきて、次に見るからにチンピラ風の男達が6人続けて入ってきた。棍棒や短剣で武装してはいるものの甲冑を着た連中と戦えるのかと不安に思ったがその後に続いて、農夫に木こりや鍛冶屋に肉屋と集落の連中をまるで全員集めてきたかのような大人数が押しかけてきた。

あれほどの銀貨でどうごまかして寄せ集めたのかは知らないが、それだけこのシシャモの口車がどれだけ上手いのかを物語った結果だった。

「入った順に ロイス ブルーノ 海苔 デミグラ ドノヴァン フレーク バックス・・・」

シシャモが丁寧に志願者の名を読み上げるが全員は多分覚えきれそうにないと、卵は口をぽかんと開けてラヒムとそれを眺めると

「モーゼにでもなった気分」

と依頼主のリビも呆れながらぼやくのが見えた。


どうでもいいですが、男 男と井出の卵を表記すると面倒なので以後「卵」と書きます。

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