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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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101話 バストロク炎上⑪

 「柳沢か・・・。」


 井出は画面の前で呟いた。

 ファミレスで会った際に、合流しようとは言っておいたが、まさか傭兵連中に紛れ込んでいるとは思わなかった。

 あの虎を模した甲冑が無ければ、彼と見分けるにはあの太刀しかない。


 「・・・じゃぁ川越も近くにいるな。」


 続けてそう呟いて、井出は缶コーヒーを啜る。

 まだ4人とはいえ団員の3分の1が揃うのはありがたい。

 先ほどししゃもが一人でも十分だと言ったが、実際のところ井出は相手がチート持ちの場合、12人全員で仕掛けたかった。


 「チートだとかなんだか知らねぇが、叩き斬ってやるぜぇ・・・行くぞぉぉぉぁぉっ!!」


 そうミダズが吠えると、彼は勢い込んでビットズへ突進していく。

 一体今まで何を見てきたのだろう。

 ビットズに対し、通常の攻撃方法が無駄だと言うことを知らないのだろうか。

 そう彼を見つめる瞳は皆同じだった。

 いや、ししゃもだけは違った。


 「やめろっミダズっ」


 そう卵が慌てて叫んだが、それを横の立っていたししゃもが制した。

 

 「大丈夫だ。あいつがそんな簡単にやられる玉じゃないのは、お前がよく知ってるだろ?」

 「だが・・・」

 「きっと何か策があるんだろ。」


 そうししゃもは冷静に卵に言ったが、ミダズがビットズへ数メートルまで近づいた辺りで、あっさりとビットズが巻き起こす暴風に巻き込まれ、空中に浮いたのを見ると、黙り込んだ。


 「おい。」

 「・・・。」

 

 訝しげな目で卵がししゃもを見つめるが、ミダズは先ほどの連中とはひと味違った。

 暴風に巻き込まれても、逆にその勢いを利用して、太刀を構えた姿勢を保ち、空中にて襲いかかるビットズのカマイタチを構えた太刀にて受け流し、後方に跳んだ。


 「・・・お前のような奴は初めてだ。」


 カマイタチの衝撃を利用して後方へ着地したミダズを睨みながら、ビットズは呟いた。

 今まで暴風に巻き込まれた者は、空中にてかまいたちの餌食となるか、ビットズの手によって切り刻まれたというのに、このミダズだけは暴風の一撃を回避したのだ。

 結果的にはビットズに触れることすら出来なかったのだが、暴風を回避した者は初めてであり、ビットズは冷静な表情で彼と対峙したが、内心は酷く狼狽していた。


 「これは確かに厄介だがぁ・・・。別に攻略不可能って訳でもねぇな。」


 そうミダズは不敵な笑みを浮かべ、太刀を中段に構え直して、ビットズと対峙する。


 その一部始終を見た。

 バックス等はミダズを呆然と見つめ、この男がただ者ではないことを理解した。

 先ほどまでニッキにラヒムと同じく、腹を何度も殴られて失神していた男とは思えない。


 「次は当てるからな。」


 そんなバックス等の目を後目に、ミダズは太刀を振りかぶってそう宣言した。


 「・・当てるだと?」

 「あぁ。上手くいけば即ロストさせてやる。」

 「たった一度避けただけで大きな口を叩くじゃないか。」

 「一度でもできればもう十分だ。」


 訝しげに睨むビットズの視線に対し、ミダズは不敵な笑みで応える。

 そして、再びミダズは大きく前へ踏み込んで、ビットズへ突進していく。

 多少狼狽はしたものの、所詮はハッタリであろうとビットズは思い、先ほどと同じように彼に向かって剣を振った。

 後方に引くだけが精一杯だった癖に、次は己に攻撃を当てるなどと言うような戯れ言を並べるミダズを、今度こそ斬り裂いてやろうと思った。


 「俺に二度同じ手が通用すると思ったのか?!間抜けがっ。」


 そうミダズは叫ぶと、彼は強く地面を蹴り、暴風に巻き込まれる前に自ら、その場で跳び、その瞬間ビットズの暴風に巻き上げられた。

 本来なら、巻き上げられた瞬間に斬り裂かれるはずだった。

 だが、ミダズは暴風に巻き上げられる手前に跳んだ為、カマイタチが飛来する位置を反らすことに成功し、無傷のままで上空に巻き上げられる。

 それを見て、ビットズはならば自身の手で斬り裂いてやろうと、ミダズを上空に巻き上げてから、暴風を一時的に解除し、彼を落下させる。

 だが、それが間違いであったと気付いたときには既に遅かった。

 ミダズは先ほどの二人のように、無防備な状態で落下してこなかったのである。

 ミダズは長い太刀の先端を下方へ突き出す形で構え、その狙いは正確にビットズへ向けられていた。

 このままでは不味いと、ビットズはもう一度、暴風を巻き起こしたが、既に彼はビットズの頭上へ太刀を突き刺す寸前まできていた。

 慌ててビットズは剣で彼の一撃を回避しようとしたが、分厚く鋭い太刀の一撃に、ビットズの剣は簡単に両断され、刃はビットズの脳天へ深々と食い込んだ。


 ビットズは何もいうことができないまま、頭からミダズの太刀を喰らい、力無く剣を落として、その場に崩れ落ちた。


 「楽勝だぜぇ・・・。」


 駄目押しとばかりに太刀を握る腕に力を込めて、ビットズの顔を両断してから、ミダズは返り血を浴びながらも、誇らしげな顔で卵等の方を向いた。


 「やりましたぜっ団長!これで少しは貰える金増えますかねっ?」

 「・・・歩合制じゃないぞ。」

 「畜生!」

 

 先ほどまで大勢の傭兵連中が、一斉に仕掛けても全く歯が立たなかった相手を、たった一人で殺したミダズを、バックス等はただ呆然として見つめることしかできなかった。


 たった一度の攻撃で彼はビットズの巻き起こす暴風とカマイタチの穴を見破った。

 そして、その隙を上手く突いたのである。

 

 ビットズの返り血を浴びたミダズは、髪を真っ赤に染めているが、血に塗れていない部分の髪は真っ白で、卵等を見る彼の瞳は、猫科の動物の如く大きく見開いていた。

 白虎と呼ばれる由縁を、彼は堂々と周囲に見せつけていた。

  



 「それはないっすよ!だって俺が一人で片づけたんですよ?一万ぐらい貰ってもいいじゃないですか。」

 「・・一体お前の中で、騎士一人の相場がどうなっているんだ?」

 「チート持ち一人で一万じゃないんですか?」

 「馬鹿言え。せいぜい千円だろ。」


 鮮やかに騎士を片づけたというのに、その周囲の評価を覆すほどに、白虎は酷く俗物だった。


 「ひでぇ・・・カートンも買えねぇ・・。」

 「わかったよ。私の方から3千円出す。」

 「ししゃも、いいのかよ?」

 「さすがっ!副団長はわかってらっしゃる。」


 そう言って下衆な笑みを浮かべて、揉み手でししゃもに歩み寄る白虎からは、既に威厳的な物は全て消え失せていた。

 

 燃え盛っていた火は徐々に消えつつあった。

 きっとこの地区の騎士を全て掃討したせいだろう。

 そんな風に卵が周囲見回していると、向こうからバックス達が歩いてきた。


 「助かりましたよ。卵さん、ししゃもさん。」

 「あぁ・・・まぁ礼ならそこのミダズに言えよ。・・・・でも金はやるなよ?すぐにこいつ、つけあがるからな。」

 「信用ないっすねぇ・・・。まぁゲーム内の通貨いくら貰ったって仕方ないけどよ。」

 「業者に渡せばいいだろ。」

 「団長・・・俺そういう後ろめたいのは嫌いなんすよ。」


 やっていることは常にえげつない癖に、そういうところだけは嫌うのだから変な奴だと思いながら、卵はバックス達に話しかけた。


 

「一瞬にして敵の動きを看破し、その隙を突いて猛然と襲いかかる姿、まさに虎そのもの。」

~巫女攫い 切り込み担当 白虎のミダズ

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