うるさい
「なんでここに入ることができたんですか…」
梨奈は震えるような声で言った
「質問の意味がわかりませんので答えることができません」
この学園に通っていたのか…めんどうだな
かかわらない方がいいだろう
「なんで!? あなたには魔力がないでしょう!?…どんなズルしてきたの?」
梨奈は何かを悟ったように笑いながら聞いてきた
「はぁ…先生、いい加減座らせてくれませんか」
「え!?そ、そうね…それじゃ空いている席に座ってね」
「はい」
「ちょっと!?」
梨奈の声を無視して教室を見渡す
机は横に長い机を数人で使うようになっている
僕と明里は2人座れる席を見つけ一緒に座る
「…覚えときなさい」
梨奈はチンピラになったのか…そう思いながら僕は先生の話に耳を傾けた
先生の話が終わり、教室から出ると梨奈がやってきた
「良い度胸じゃないの、落ちこぼれさん」
「初対面の人によくそんなひどいことが言えますね、梨奈さんは」
教室が静かになる…
何人かはこそこそと話している
「初対面ですって!? あなたは家を追い出されたあの落ちこぼれではないというの!?」
「本人ですよ。よく御存じで」
「やっぱりそうじゃない! それでいったいどんなズルをしたのかしら」
いらいらする…
明里が隣で困っているじゃないか
「めんどうくさいから消えてくれませんかねぇ…」
あ。
つい言ってしまった
「ッ!?よくも落ちこぼれの分際でバカにしてくれましたね…。決闘をしましょう!みんなにあなたが地に伏すところを見せてあげます!」
こいつはこんなにバカだったか?
…まぁいい。
「それじゃ、決闘したらぎゃんぎゃん犬みたいに吠えないでくださいね。さっきからうるさくて耳障りなんですよ」
「いつまで強気でいられるか楽しみですね!」
梨奈はそういい自分の机に戻っていった
それからしばらくは静かな時間が過ぎる…
放課後…
「先生。決闘の審判お願いします」
「やっぱりあの騒ぎ…早過ぎないかな! 一日も経ってないよ!?」
「初対面でずいぶん嫌われたようで」
「わかりました…それでは移動しましょう」
決闘は学園内にある決闘場ですることになっている
梨奈はすでに来ていたようだ
「2人とも、準備はいいかな?」
「僕はいつでも構いませんよ」
「私もです」
「それでは…始めっ!!!」
さて、とっとと攻撃してくれないかな
「ファイヤーボール!」
炎で出来た塊がこっちに向かってくる
僕は動かずにそれを吸収した
煙で周りが見えなくなる
「もう終わりですか!やはり落ちこぼれですね!!」
「こんなものなの?」
「っ!!?? なんで? 直撃したはずでしょう?」
「まぁ避けてはないけどね…それじゃお返ししてあげるよ」
「(10倍返しでね)」
僕はフェンリルの力を解放し、先ほど吸収した魔力を大きくしていく
「このくらいかな?…いくよ」
「え?…あ、あ…ぁぁぁぁぁああああああ!!!」
梨奈は眼前にせまる炎に叫んでいた
「(氷を統べるもの)」
「氷を統べるもの」はその名の通り氷を自由に使うことができる魔法だ
「目の前の炎を凍らせろ」
言うだけで炎はすべて消え、氷だけとなった
「先生…勝敗は?」
「え?…ひ、日向君の勝ち!」
観客は皆しーんとしている
「もう近づいてこないでくださいね」
僕は梨奈にそう言って明里の元へ向かう
「おつかれ」
「ありがと。かえろっか」
「うん…失礼します」
僕と明里は呆然としている先生に礼をして家に帰った
取り残された梨奈は、周りからの視線に気が付いた
「梨奈さんは日向君が魔力がないって言ってたけど、嘘はいけないよねぇ」
「うん…梨奈さんってあんな人だったんだね…」
「ほ、本当なんです! ほんとにあいつは魔力が「じゃあなんで魔法使えたんだよ!」それは…」
一日にして人気者の梨奈は学校の嫌われ者になった
「なんで?なんでなの…たしかにあの日…。私が悪いって言うの?なんで?みんなあいつをバカにしていたじゃない…なんで?なんで?ねぇなんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんで…」
そこには前の面影がまったくない女の子が残った




