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破片

作者: 流奈

「約束、したよね。ずっといっしょだって」


 わたしは微笑む。まったく同じタイミングで、千鶴も微笑んだ。まるで鏡に映したように、うりふたつなわたしたち。双子のわたしたちは、ときおり両親でさえ見分けがつかないくらい、よく似ている。昔は入れ替わってよくいたずらをした。今でもときおりすることがある。


「生まれてくる前から、ずっといっしょにいたの。だから、これからもずっといっしょ。そうでしょ?」

「そうよ、だって約束したじゃない」


 同じタイミングでうなずく。そう、約束した。世界でたった一人きりになるような悪夢の果て、わたしたちはたった二人、寄り添い合った。どんなに怖くても、千鶴といっしょなら怖くなかった。

 千鶴に向けて手を伸ばし、千鶴もまたわたしに向けて手を伸ばす。触れ合った指先。冷たくて、硬い。


「――千里」


 突然聞こえた声に、夢から覚めたような心地で振り返る。視線の先、母さんが悲痛な面持ちで立ち尽くしている。その割に、その眼は間違いなくわたしを咎めていた。

 どうして? なにも悪いことはしていない。どうして母さんに咎められなければならないの? わたしは、ただ…千鶴とずっといっしょにいたいだけ。ただそれだけなのに、どうして?


「いい加減になさい――千鶴はもう、死んでしまったのよ」


 足元で、なにかが割れるような音。

 のろのろと、なにが割れたのかを確かめる。美容室にありそうな、大きい手鏡。これは千鶴のものだ。なのにどうしてこんなところにあるんだろう。あとでちゃんと返しておかないと、千鶴が困ってしまう。そこまで考えて、疑問に思う。千鶴はどこに行ったんだろう。さっきまでいたはずの場所に、千鶴はもう、いない。


「ちづ、る…」


 かすれた声で、名前を呼ぶ。

 千鶴の姿を、足元に見つけた。割れた鏡の、小さな破片の中。千鶴わたしは死んだような顔をして、ただ静かに、わたしを見つめていた。

今朝、日付を見て思い出しました。12月13日は双子の日ですね。

思い出すと書きたくなってしまったので、帰宅してからノリと勢いだけで書き上げました。

短いけれど、その分雰囲気が出ていればいいな、と思っています。

つたない作品ですが、読んでくださってありがとうございました!

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