仮恋人の契約
「あの…」
「オドオドしない! はっきり言いたいことは言う!」
ベッドの上に座っている廉人さんが声を荒げた
「麗華さんが、恋人を連れてパーティに来いって言うから」
「言うから?」
「私には恋人はいないし、麗華さんのパーティに行けるようなドレスもないし…。だから行けないって毎回、断ってて。でも今回、誘われた時に、果恋ちゃんが傍にいて。麗華さんの言い方に頭にきたって。一週間後のパーティに彼氏を連れていくからって」
「ふうん」
廉人さんは興味なさそうに返事をすると、煙草を吸い始めた
「その彼氏役に、俺を抜擢したわけね」
私は頷いた
「他にいないわけ? 友人とか中学の同級生とか?」
「いません」
「携帯で手当たり次第、電話してみろよ」
「お父さんしか、男の人のアドレスってないから」
「あっそ。つまんねえ女」
ぼそっと廉人さんが、呟いた
確かにつまらない女だけど
「すみません」
私は涙が溢れた
面と向かって、男の人に言われると心が痛い
好きでつまらない女になったわけじゃないし
好きで、麗華さんに睨まれているわけじゃない
でもどうしたらいいかわからないから
「一週間だけで、いいんだな?」
「いいんですか?」
「俺が質問してるんだけど?」
「あ…はい。お願いします」
「なら、まずは…そのうざったい髪をどうにかして。それから…エステか。それとも服か?」
「あの! 私、そんなにお金ないですから。ただ一週間後のパーティに、付き合っていただければ」
「俺の面子っていうのもあるわけ。だから一週間で、俺がどうにかしてやる」
「いや…でも、お金が」
「金? 心配するな。女から金を取るような。みみっちい男じゃないから」
「でも」
「そのさ~。『でも』とか、『あの』とか…やめようよ。良い女はそんな言葉を言わないんだ」