仮彼氏とキス
「花音、こっちに来て」
初めて、廉人さんに名前を呼ばれた
開店5分前になって奥から出てきた廉人さんが、声をかけてきた
「はい」
私は立ち上がると、話をしてくれてたホストの人たちにお礼を言った
廉人さんの後ろを歩き私は、店の奥へとはいっていく
え?
いいの?
こんな奥まで
でも奥に入ったら、勉強ができないよ
オーナー室に私は通された
10畳ほどの大きさで、机とパソコン…それと応接セットが置いてあった
私はソファに座った
言葉もないまま、廉人さんは机に座って、パソコンをいじり始める
「あの…?」
私は仕事中の廉人さんに声をかけた
「何?」
「えっと。勉強は?」
「今日はやらなくていい」
「でも…だって、日数が迫ってきてるし」
「今日はいいんだ」
廉人さんの携帯が鳴り、会話が終了した
お客さまからの電話らしく、営業トークをしていた
優しくて甘い声で、相手を褒めながら、会話をする
これも一つも勉強方法だ
そう私は思った
相手への配慮をして、会話を進めていく
褒めて嫌がる人はいない
会話の中に、相手が喜ぶ会話をいれることも大事なんだ
私は鞄からノートを出すと、メモをとった
「何してるんだ?」
「え?」
電話を終えた廉人さんが、ノートを覗き込んできた
私は慌ててノートを閉じると、笑顔を見せた
「メモです。良い女になるための。私なりに勉強して得たことを。書いているんです」
「ふうん」
返事をしながら、廉人さんは私の隣に座った
私と廉人さんは目が合った
熱い視線に、私は廉人さんから目をそらす
下を向いた私の顎を掴むと、廉人さんは私の顔を引き上げた
「良い女になれてます?」
私は声を裏返しながら、質問した