仮彼氏とキス
廉人さんが車で正門に迎えにきた
私はそそくさと乗り込む
「おかえり」
廉人さんが珍しく優しく言ってきた
あれ? 今日は優しい
どうしてだろう
パーティのときの模擬練習でもするのかな?
「ありがとうございます」
「まずはエステだな。その次は…」
ん?
廉人さんの言葉が途切れた
「どうしたんですか? 廉人さんのお店で女性の観察ですよね?」
「まあ、そうだけど」
なんか、不機嫌?
悪いことした?
気付かないうちに、何か仕出かしたのかな?
エステの駐車場についた
私は助手席を下りて、後部座席に置いた学生鞄を掴んだ
人の気配を感じると、そこには廉人さんが立っていた
え?
「な、何か?」
「別に」
廉人さんは、私の腰を掴んでキスをした
唇に軽く一回、それから舌を絡ませた
ちょ…ちょっと!
私は廉人さんの胸を叩いた
模擬練習にはしては、おかしいよ!
やり過ぎだよ
「迎えに来た男に、女はこれくらいのことをしないとな。お礼にはならないから」
「はい…」
廉人さんは、そう言ってひとりで先にエステへと向かった
後から廉人さんを追いかけるようにエステ店に行くと、廉人さんはさっそく受付の女性と手を握り合って、話をしていた
さっきのキスの意味は、本当にお礼を教えてくれたのだけ?
みんな、キスをするものなのかな?
よくわからないよ
私は店の奥に入って、着替えるとエステティシャンのお姉さんにマッサージをしてもらった
お姉さんたちは、きっとキスマークに気付いているはず
でも見ないふりをして、会話にもあがらなかった