仮彼氏とキス
なんか寝た気がしない
私は教室の机で顔を伏せた
「あら…。彼氏ができなくて、困り切っている子がいるわ」
麗華さんの嫌味が聞こえてきた
それに反応している気力も、今はないよ
眠くて、体がだるい
「花音? どうしたの?」
教室に入ってきた果恋ちゃんが声をかけてきてくれた
私は顔をあげると、果恋の顔を見て、癒しを求めた
「果恋ちゃん…」
口を開こうとする私に、果恋ちゃんが真っ赤な顔をした
「も…もしかして、お兄ちゃんとヤッた?」
「え? 何を?」
私は果恋ちゃんの質問に首を傾げた
「何って、ナニ…でしょう?」
「え? そんなことするわけないでしょう!」
「じゃあ。何で、そこに、キスマークがあるの?」
「ええ?」
私は果恋ちゃんが指をさす位置を、手のひらで隠してみた
ちょうど鎖骨あたりだ
確かにそこはキスをされた
長いキスだなぁって、思ってたけど痕がついているなんて…
私は席を立って、トイレに向かった
鏡の前に立つと、私はゆっくりと…手を外した
本当だ! 痕が残っている
ちょっと痛いって思ってたけど、このせいだったんだ
「花音、お兄ちゃんと何かした?」
「キスされた」
「そうなの?」
「うん。金持ち的思考だ!とか言って」
「馬鹿だ…猛獣だ。珍獣だぁ…」
果恋ちゃんは頭を抱えた
「でも…」
果恋ちゃんはニヤリと笑う
「良い感じ? キスしたってことは、お兄ちゃんが花音に、その気になってきているってわけだし。良い傾向だと思うことにしよう!」
果恋ちゃんは前向き思考だ
見習わないと!
「これはやり過ぎだよね…」
トイレの鏡を二人で覗き込んだ
制服から見えるか、見えないかの位置に痕がある
先生に見つからないようにしないと、突っ込まれたら説明に苦しむよ
今夜は、廉人さんにちゃんと言おうっと
でもキスはもうしなかもしれないし、キスされたら…言えばいっか