果恋の研究
廉人さんのお店についたのは、夜も8時になってからだった
すでに店内に多くの女性で、埋め尽くされていた
「うわ~、華やかな世界ですね」
私は廉人さんに案内されて、店の奥の席に通された
「ここで、良い女と良い男のやり取りを勉強するといい」
そう言って廉人さんは、店の奥へと入っていった
「ね! 君の名前は?」
ホストが二人、私の両脇を固めて座ってきた
一気に緊張する
だめ! 顔をあげて、笑顔を絶やさない
「花音です」
「へえ~。可愛い名前だね。オーナーの知り合いみたいだから、俺らサービスしちゃうよ」
「でもお金の請求は、廉人さんでお願いしますね」
私はほほ笑んだ
「あ…じゃ、あんまサービスは、しないほうがいいのか? サービスしても、オーナーの懐から出るんじゃ、利益はあまりなし?」
私は声を出して笑った
「おれは雅人」
茶色の髪に、紺色のスーツを着ている人が、自己紹介をしてくれる
「おれは俊だよ」
もう一人も名刺を渡してくれた
オレンジジュースが、私の前に置かれた
「え? 酒じゃなくていいの?」
ボーイさんのような人に、雅人さんが声をかけた
「オーナーの指示ですから」
「あっそ」
「私、未成年ですから」
廉人さんはオーナーでもあり、ホストでもあった
店についてから2時間、休む暇もなくホールに出て、接客をしていた
私はそれを眺めながら、入れ替わり、立ち替わりくる
ホストの男性たちを、会話をした
緊張するし、無言で下を向きそうになる自分に、活を入れながら…必死に、格好良い女を勉強し、演じた
果恋ちゃんの言うとおり、廉人さんは外っ面がいい
優しくて、女性の喜ぶしぐさや、言葉を知っている
そして絶妙のタイミングで、女性の嬉しがる言動をするのだ
それに喜ぶ女性の笑顔で、とても素敵で私は、恋をしている女性の美しさに目を奪われていた