良い女講座
「たとえ電車でデートしたとしても、同じ原理だ。男が女の家まで送る。それが付き合う上での鉄則。だから俺はあんたを、家まで送る。いいな!」
「はい」
私は廉人さんに言われるまま、車に乗り、家の近所まで送ってもらった
「あんたの家は?」
「えっと…じゃなくて、近所です」
「親に挨拶するから」
「え?」
どうしてそんなことまで?
「一週間とは言え。付き合うんだ。挨拶はする」
「大丈夫です!」
「私は首を横に振った」
「俺はこれから一週間。あんたを振り回すんだ。今日、早めに帰したのも、これからのことをあんたの親に話をして、了解を得てもらうため。明日からは帰りがもっと遅くなる。そのための挨拶だ」
すっかり廉人さんペースになっている気がする
廉人さんはしっかりしている人だね
だって妹に勝手に押し付けられたのに、きちんと親にまで挨拶してくれるなんて、さらっとできることじゃないと思う
『良い男』だから?
廉人さんは『良い男』をマスターしているから、そういうことが出来ちゃうの?
私は廉人さんに家を案内した
冷たい印象はがらっと変わって、優しい紳士となった廉人さんはお母さんに挨拶をした
交際しているから、デートで帰りが遅くなりますが必ず家まで送ります…と母親に約束をして、廉人さんは帰って行った
「花音、どこで、あんな格好良い男と知り合ったの?」
母親は鼻を膨らませて、興奮していた
私は一週間後のパーティの話をした
だから仮彼氏であり、1週間後には別れる関係であるとも話をした
そう1週間だけの私の『彼氏』
「花音! 起きて、起きなさい。廉人さんがお迎えに来てるわよ」
私のベッドに飛び込んでくると母親が、布団を勢いよく叩いた
え? 今、何時?
枕元にある携帯を手に取ると時間を確認した
まだ朝の5時だよ…私の起床時間は6時なのに
「失礼します」
低い声が聞こえてくる
「花音、おはよう」
私の目は見開く
勢いよく起き上がると、廉人さんの額と私の頭がぶつかった
「いったぁい」
私は頭を押さえると再び、布団の中に潜った
「どうしてここに?」
「朝から来ちゃいけないの? 俺ら、恋人同士でしょ?」
「え?」
だって恋人同士のふりをするだけで、放課後に会って、美容院とかエステとかして、一週間後に備えるだけじゃないの?