簡単な質問
すれ違い
目覚まし時計が三度目の音を鳴らした。
マエル・マカヤは片目を開け、携帯電話の画面を確認すると、再び枕の下に押し込んだ。
あと五分。
それは妥当な時間だった。人間らしい時間だった。残念ながら、学校という場所はその願いを聞き入れてくれない。
寝室のドアが勢いよく開いた。
「マエル! まだ寝てるの?」
返事はなかった。
「お父さんが早く準備しなさいって!」
「もう出かけたって伝えておいて。」
「でも、ベッドの中にいるじゃない!」
「精神的にはもう出発した。」
コーティは数秒間、黙り込んだ。
「起きる気がないって、お父さんに言ってくるね。」
マエルはすぐに両目を開けた。
「待って。交渉しよう。」
「あと五秒ね。」
「四分。」
「三秒。」
「二分半。」
「一秒!」
コーティは出ていくふりをした。
「分かった、分かった! なんて権力だ……。選挙に出たらどうだ?」
マエルがようやく上半身を起こすと、コーティは笑い出した。彼は乱れた髪に手を通し、妹を見つめた。
「人をこんなふうに起こすなんて、睡眠に対する重大な侮辱だぞ。」
「遅刻するまで寝てるのは、学校に対する侮辱だよ。」
「学校なら何とかなる。」
「お兄ちゃんは何とかならないかもね。」
「危険な子になったな。誰にそんな言葉を教わった?」
「誰にも。私は生まれつき頭がいいの。」
「生まれつき謙虚でもあるらしいな。」
コーティは舌を出してから、部屋を出ていった。
マエルもようやく立ち上がった。その動きには、処刑の延期を十分だけ告げられて起こされた囚人のような気力しかなかった。
セイラン学園の制服に着替え、身だしなみを手早く整えると、台所へ向かった。
テーブルの上にリンゴが一つ置かれていた。
朝食の所有者が決まった瞬間だった。
マエルが手を伸ばす。
しかし、別の手のほうが早かった。
姉のアイメがリンゴを奪ったのだ。
「ありがとう。」
マエルは空になった手と姉を交互に見た。
「どういたしまして。君の食生活に貢献できて光栄だよ。」
「本当に寛大ね。」
「分かってる。この家じゃ珍しい美徳だからな。」
アイメは彼の視線を気にすることもなく、リンゴにかじりついた。
「本気か? あれが最後の一個だったんだぞ。」
「もっと早く起きればよかったのよ。」
「寝るのに忙しかったんだ。」
「見れば分かるわ。」
マエルは数秒間、姉を見つめた。残されたわずかな尊厳を救えるほど気の利いた返事を探していたのだ。
しかし、何も思いつかなかった。
まったく理不尽な話だ。
「お兄ちゃん、私のパンを半分あげようか?」
マエルはすぐに妹のほうを向いた。
「コーティ、この家で一番尊敬すべき人物は君だ。正式に認定しよう。」
「昨日、お菓子をあげたときも同じこと言ってたよ。」
「感謝に有効期限はない。」
アイメは呆れたように目を上げた。
「二人とも、うるさいわね。」
「それなのに、まだ一緒に暮らしてくれてるんだ。感動的だな。」
「まだ家から放り出すこともできるわよ。」
「ほらな? こういう愛情表現が家族の絆を強くするんだ。」
コーティはまた笑った。マエルは妹からパンを受け取り、静かに食べ始めた。その間も、姉が平然と食べ続けるリンゴを警戒するように見ていた。
朝食と、尊厳の一部と、貴重な睡眠時間を失った。
しかも、一日はまだ始まってすらいない。
(せめて、学校はこの家より面倒じゃありませんように。)
パンを食べ終えたマエルは、鞄をつかんで玄関へ向かった。
「じゃあ、今夜帰ってこなかったら、俺の人生に不公平だったって伝えておいてくれ。」
「ただ学校に行くだけでしょ!」
「そう言ってるんだよ。」
アイメが新たな嫌がらせを思いつく前に、彼は家を出た。
今の目標は一つ。これ以上時間を無駄にせず、学校にたどり着くこと。
ただし、彼の計画性を考えると、それさえ保証されていなかった。
セイラン学園は、黄色く色づき始めた木々の並ぶ通りの向こうに建っていた。
すでに何組もの生徒が校門をくぐっていた。大声で話している者もいれば、携帯電話を見ながら歩いている者もいる。鞄を半分開けたまま慌てている生徒もいた。最後の瞬間に走れば、遅刻という事実さえ消せると信じているかのようだった。
建物を見つけたマエルは、少し歩く速度を落とした。
(悪くない。少なくとも、刑務所には見えないな。)
彼は鞄の肩紐を直し、ほかの生徒たちと一緒に校門をくぐった。
目覚まし時計や姉との戦いに朝の時間を費やしたものの、どうにか間に合った。小さな勝利ではあるが、ささやかな幸運を喜ぶことも大切だ。
廊下では、生徒たちがそれぞれの教室へ向かっていた。マエルは壁に掲示された案内に従い、自分の教室を見つけた。
彼はドアの前で立ち止まった。
中から話し声が聞こえてくる。笑っている生徒もいれば、宿題や放課後の予定について話している生徒もいた。
マエルはドアノブに手をかけた。
(よし。初日だ。できるだけ目立たずに済ませよう。)
ドアを開け、教室に入る。
いくつかの会話が一瞬だけ途切れた。好奇心を向ける者もいれば、ただ何となく彼を見ただけの者もいた。
マエルは気にせず、教室の一番後ろにある空席へ向かった。
鞄を置き、椅子を引いて座る。その様子は、まるで最初からそこにいたかのようだった。
数列前に座っている男子生徒が、すでに興味深そうに彼を見ていた。新しい任務を見つけた人間のような顔をしている。
マエルはそれ以上、注意を向けなかった。
(俺の平穏な時間は、長く続きそうにないな。)
再びドアが開き、教師が入ってきた。教卓に荷物を置き、教室を見渡す。
「みんな、おはよう。」
「おはようございます、先生。」
教師は書類を整えてから、マエルに目を向けた。
「授業を始める前に、新しいクラスメートを紹介する。今日からこのクラスに加わる生徒だ。みんな、うまく馴染めるように協力してあげてほしい。」
何人かの生徒がうなずいた。ほかの生徒たちは、もう少し露骨にマエルを観察していた。
「マカヤ、簡単に自己紹介してくれるか。」
マエルは顔を上げた。
できれば避けたい時間だった。クラス全員の前に立ち、自分についていくつかの情報を読み上げること。それは彼にとって、最高の一日の始まりとは言い難かった。
それでも、彼は立ち上がった。
「マエル・マカヤです。仲良くできたらと思います。」
短い沈黙が流れた。
これで十分だった。余計な質問をされずに済む程度には短い。
「よし。座っていいぞ。」
マエルはすぐに席へ戻った。
教師が授業を始めた。チョークが黒板の上を滑り、生徒たちはノートを開いた。マエルは黒板の題名と最初の数行を書き写した。まだ学校の勝手は分からなかったが、授業そのものは特に難しくなさそうだった。
数分後、小さく折られた紙片が机の上に落ちてきた。
マエルは視線を下げた。
「どこから来たの?」
彼は紙を見つめ、それから周囲の生徒たちを観察した。二人の男子が消しゴムをめぐって小声で争っている。女子生徒の一人は真剣にノートを書いていた。そして、先ほどから自分を見ていた男子は、彼の反応を気にしすぎているようだった。
マエルは紙を裏返し、返事を書いた。
「別のところから。」
紙を送り返す。
数秒後、紙が戻ってきた。
「君って、いつもそんなに無口なの?」
マエルは小さく笑みを浮かべた。
「知らない人にはね。」
男子生徒は返事を読むと、笑いをこらえた。ちょうど教師がそちらを向いたため、慌てて姿勢を正した。
マエルはノートに目を戻した。
(最初の交流は成功。どうでもいい情報を二つ交換して、あやうく先生に見つかるところだった。将来有望な友情だな。)
授業は何事もなく続いた。ようやくチャイムが鳴ると、生徒たちはすぐに立ち上がった。会話が戻り、椅子が床をこする音が教室に響いた。
マエルがノートを片づけていると、誰かの影が机の前で止まった。
「マカヤ、だったよな?」
マエルは顔を上げた。
先ほどの男子生徒が立っていた。近くで見ると、さらに自信に満ちた様子だった。何事にも必ず解決策があり、全員が自分の話を聞きさえすれば何とかなると信じている人間特有の、真面目な表情をしていた。
「名前を覚えてくれたんだ。すごいな。」
「クラス全員の前で紹介されただろ。」
「君が輝ける機会をあげようと思ってね。」
カイトは返事に困ったように、少し間を置いた。
「まあ……俺はカイト・フジサワだ。」
「よろしく。」
カイトは手を差し出した。しかし、マエルはペンを片づけることに集中していて、すぐには気づかなかった。彼が顔を上げたときには、カイトはすでに手を下ろしていた。
「まだ学校のことはよく分からないだろ?」
「教室なら分かった。黒板も見つけた。今のところ順調だよ。」
「ほかにも行かなきゃいけない場所は多い。図書館とか、食堂とか、特別教室とか……。よかったら案内しようか?」
マエルは一瞬ドアを見てから、カイトに視線を戻した。
知らない教室を一つずつ探し回らずに済むという点では、ありがたい提案だった。だが、相手が世話を焼こうと決めたからという理由だけで、ついていく羽目になるのはごめんだった。
「いや、いいよ。」
カイトは目を瞬かせた。
「本当に? 迷わずに済むぞ。」
「自分で見つけるよ。」
「好きにすればいい。でも、もう少し感じよく言えたんじゃないか?」
マエルはわずかに眉を上げた。
「今、そう言ったけど。」
カイトは一瞬、黙り込んだ。
彼の後ろでは、何人かの生徒が二人の会話に耳を傾け始めていた。マエルもそれに気づいていたが、彼らを喜ばせるために返事を変える理由はなかった。
「ただ手伝おうとしてるだけだ。そんなふうに受け取る必要はないだろ。」
「俺もただ断ってるだけだよ。そんなふうに受け取る必要はないだろ。」
今度は、カイトもすぐには返事をしなかった。
彼は、自分の提案が正しいことだと心から信じているようだった。一方のマエルには、こんな単純な断りが、なぜ議論に発展しなければならないのか理解できなかった。
やがて、カイトはため息をついた。
「分かった。好きにしろよ。」
「そのつもりだった。」
カイトは不満を隠しきれないまま、その場を離れた。
マエルは数秒間、その背中を見送った。
(人を助けようとすると、相手の代わりに決める権利まで手に入ると思っているらしい。)
彼は残りの荷物を片づけ、立ち上がった。
少し言い方がきつかったのかもしれない。しかし、到着したばかりで誰かに世話を焼いてほしいと頼んだ覚えはない。見知らぬ相手の機嫌を守るために、受け入れるふりをするつもりもなかった。
この何気ない拒絶が、思っていた以上に面倒な事態を招くことになるとは、まだ知る由もなかった。
カイトは教室のドアの近くで、二人のクラスメートのもとへ向かった。通りすがりの生徒たちが何人も彼に挨拶し、カイトも自然に応じた。こうした何気ないやり取りは、彼の日常の一部だった。
生徒会長であるカイトは、周囲から比較的好かれていた。学校行事の運営に参加し、新入生が馴染めるよう手助けし、クラスで問題が起きればよく間に入っていた。
彼は自分の役目を真剣に受け止めていた。時には、少し真剣になりすぎるほどに。
彼の視線は、教室の一番後ろへ戻った。
マエルは鞄の中身を確認していた。
先ほどのやり取りを誇らしく思っている様子はない。かといって、自分の返事を後悔しているようにも見えなかった。ただ荷物を片づけているだけだった。まるで、あの会話など何の意味もない出来事だったかのように。
それこそが、カイトを苛立たせていた。
彼は助けを申し出ただけだ。何も難しいことではない。それなのに、マエルはまるで何かを押しつけられたかのように返事をした。
「正直、ああいう反応は理解できないな。」
その場面を少し見ていたクラスメートが、肩をすくめた。
「学校を案内しようとしたんだろ?」
「ああ。迷わないように、早く学校に慣れるようにと思ったんだ。」
「それで断られた。それだけだろ。」
「分かってる。でも、もう少し普通に返事をしてもよかったはずだ。俺は生徒会長であって、何かを押し売りする店員じゃないんだぞ。」
クラスメートはためらい、ちらりとカイトを見てから頬をかいた。
「えっと……言いたいことは分かるけどさ……。自分の役割を、ちょっと真剣に受け止めすぎてるんじゃないか?」
カイトは彼に顔を向けた。
「どういう意味だ?」
「いや、何でもない! その……人を助けようとするのはいいことだと思う。でも、自分が善意でやってるんだから、相手も必ず受け入れるべきだって考えてるように見えることがあるんだ。」
彼は気まずそうに少し目を伏せた。
「ごめん。批判するつもりじゃなかった。」
カイトは数秒間、黙っていた。
「謝る必要はない。説明してくれ。」
「つまり……生徒会長だからって、ほかの人の代わりに決めることはできないだろ。そういうことだよ。」
少年はそれ以上、何かを言う気はないように口を閉じた。
カイトはわずかに眉をひそめた。言われたことは気に入らなかったが、理解できなかったふりをすることもできなかった。
「ただ、手を貸そうとしただけなんだ。」
「分かってる。だから、助けを申し出ること自体は悪くないって言ってるんだよ。」
彼は少し間を置いた。
「ただ……断られたなら、それは断られたってことだろ。」
カイトは答えなかった。
クラスメートはほどなくして立ち去った。会話を終えられて、ほっとした様子だった。
その頃、マエルはようやく荷物を片づけ終え、教室を出ていた。自分がまだ話題にされているとは知らなかった。
廊下には、すでに多くの生徒が行き交っていた。友人と合流する者もいれば、階段へ向かう者もいる。
マエルは教室の案内板の前で立ち止まった。
(勉強を教えるだけの施設にしては、廊下が多すぎないか。)
案内を確認し、階段の位置を見つけると、そのまままっすぐ進むことにした。
数歩進んだところで、授業中に紙片をやり取りした男子生徒と出会った。彼は少しためらってから、マエルに近づいた。
「えっと……マカヤ?」
「また俺だよ。書面で確認する必要がある?」
少年は小さく、緊張した笑い声を漏らした。
「い、いや、そうじゃなくて……。フジサワとはもう知り合いなの?」
「数分前からね。」
「あ、そうなんだ。」
彼は言葉を探すように口ごもった。
「ほかに聞きたいことがある?」
「いや、別に。ただ……カイトはここでは結構有名なんだ。よく人を助けてるし、特に新入生の面倒を見てるんだよ。」
マエルは相手をしばらく観察した。
「それを聞かせて、俺の考えを変えさせたいの?」
「違う! いや……そういうわけじゃなくて。ちょっと説明したかっただけなんだ。」
「なるほど。」
少年は、何かまずいことを言ってしまったのではないかと心配するように、少し目を伏せた。
「そういえば、僕はタクミ・ハヤシっていうんだ。」
「マエル・マカヤ。まあ、それはもう知ってるだろうけど。」
「そ、そうだね……。ごめん。」
マエルは数秒間、彼を見つめた。
(どうして謝るんだ? 別に何かを責めたわけでもないのに。)
「いつもそんなふうに謝るの?」
「えっ? えっと……分からない。たぶん、そうかも。」
「疲れそうだな。」
「ご、ごめ……。」
タクミはぴたりと固まった。
マエルは彼を見つめた。
自分が何を言いかけたのか理解したタクミは、気まずそうに目をそらした。
マエルは小さく笑った。
「ほらね? 今のがまさにそれだよ。」
「自分でも、どうしようもなくて……。」
「別に責めてないよ。人それぞれ癖はあるからね。」
沈黙が流れた。
タクミはまだ会話を続けるべきか迷っているようだった。一方のマエルには、沈黙を埋めるためだけに話すつもりなどなかった。
やがて、タクミは二人の前に続く廊下を指さした。
「何か探してるの?」
「今のところ、この学校にどうしてこんなに廊下があるのかを理解しようとしてる。」
「次の教室を探すの、手伝おうか?」
マエルは彼を見てから、背後にある案内板に目を向けた。
「親切だからそう言ってるの? それとも、僕が迷子になるのが心配だから?」
「ぼ、僕は……両方、かな?」
「少なくとも正直だな。」
タクミは小さく笑みを浮かべた。
その日の朝が始まってから初めて、マエルは自分の振る舞い方を説明しようとしない相手と話している気がした。
大したことではない。
それでも、さっきまでよりはずっと気楽だった。
昼休みのチャイムが鳴ると、マエルは荷物を片づけ、ほかの生徒たちと一緒に教室を出た。
廊下では、誰もが行き先を正確に知っているようだった。友人のもとへ向かう者もいれば、話しながら階段を下りていく者もいる。マエルは数秒間、彼らを観察してから歩き始めた。
(食堂。食べ物を出す場所だ。見つけるのがそんなに難しいはずがない。)
彼は正しい方向へ向かっているように見える生徒の集団についていった。廊下を二つ通り、階段を一つ下りたところで、彼らはある部屋に入った。
理科室だった。
マエルは入口で立ち止まり、実験器具の並ぶ机を眺めてから、ゆっくりと後ずさった。
「なるほど。どうやら、試験管と一緒に昼食を取ることもできるらしい。」
彼は探索を再開した。
少し先で、同じ方向へ歩いていく別の生徒たちを見つけた。今度は距離を保ちながら後を追い、図書館の前にたどり着いた。
マエルはドアの上にある表示を見上げた。
(本がリンゴを食べるようになったのでなければ、また間違えたな。)
誰かに道を尋ねることもできた。周囲には、食堂の場所を教えてくれそうな生徒が十分にいた。
問題は、知らない相手に声をかけなければならないことだった。そしてカイトとのやり取りを終えたばかりの彼には、生徒会長にもう一度助けを求める気などなかった。
(そのうち見つかる。学校が街より広いはずはない。)
その推測は、彼にとってはもっともらしかった。
廊下をさらに数分さまようまでは。
やがてマエルは窓際のベンチに腰を下ろした。そこからは、生徒たちが一緒に食事をし、笑い合い、話している様子が見えた。まるで食事にありつくことなど、何の問題もない日常の一部であるかのようだった。
彼は時間を確認し、再び廊下を見た。
(自分でも認めざるを得ない。なかなかうまくやっている。)
もうしばらくベンチに座ってから、彼は立ち上がった。まだ食堂は見つかっていなかった。しかし、ここで諦めるのは、まるで失敗を認めるようなものだった。
そこで彼は再び歩き始めた。これまでの失敗から何も学んでいない人間らしい自信を胸に、適当な廊下を選んで進んでいく。
数分後、チャイムが鳴った。
昼休みは終わっていた。
マエルは立ち止まった。
「分かった。夕飯まで待つことにしよう。」
彼は方向を変え、教室へ戻ろうとした。少なくとも、今度は自分の教室がどちらにあるのか分かっていた。
何しろ、朝には一度たどり着けたのだ。戻るときに迷わなかっただけでも、自分を褒めていいだろう。
それだけでも、進歩だった。
マエルは教師が戻ってくる数秒前に、教室の一番後ろにある自分の席へ戻った。
鞄を置き、腰を下ろして時計を見た。
昼休みは終わった。
彼の胃袋には、その知らせが届いていないようだった。
(素晴らしい。学校には来られた。教室も見つけた。そして食堂は見つけられなかった。実に成果の多い午前中だったな。)
彼はノートを取り出し、適当なページを開いた。
ほどなくして教師が入ってきて、授業を始めた。マエルは少なくとも最初の数分間は、話を聞こうとした。しかし、疲労と空腹、そして学校の構造についての知識不足が重なり、やがて意識がそれていった。
黒板を見る。
ノートを見る。
時計を見る。
時間というものは、見ていないときにだけ進んでいるようだった。
数列離れた席から、タクミがちらりとマエルを見た。彼が何も食べていないこと、そして午前中よりも集中できていないように見えることに気づいた。
声をかけるべきか、タクミは迷った。
結局、彼は思いとどまった。教師が説明を続けていたし、タクミは目立つようなことをしたくなかった。
一方のマエルは、誰かに見られていることなど気づいていなかった。
いや、そもそも誰かが自分を観察していると考える理由がなかった。
ようやく最後のチャイムが鳴ると、何人もの生徒が急いで荷物を片づけ始めた。教室には再び話し声が戻り、放課後の予定について話し始める者もいた。
マエルはノートを閉じた。
これで、学校での一日が正式に終わった。
彼は立ち上がり、鞄を肩にかけてドアへ向かった。
今度は、出口の場所くらい分かっていた。
それだけでも進歩だった。マエルが校舎を出たばかりのとき、校門の近くにいるタクミの姿が目に入った。
タクミは鞄の中で何かを探しているようだった。あるいは、誰かを探しているのかもしれない。彼の場合、見分けるのは難しい。
マエルは立ち止まらず、その横を通り過ぎた。
「マ、マカヤ!」
マエルはわずかに顔を向けた。
「いつも災害でも知らせるみたいに叫ぶのか?」
「ご、ごめん! ただ呼び止めたかっただけなんだ。」
「誰かを呼ぶって、普通そういうものだろ。」
タクミは鞄を閉じ、少し気まずそうにしながら彼に追いついた。
「家に帰るの?」
「いや。校門の前で寝るつもりだ。ここでは人気のある活動らしいからな。」
タクミは数秒間、確信が持てない様子で彼を見つめた。
「い、今のは皮肉だよね?」
「成長したな。」
タクミは小さく笑みを浮かべた。
二人は学校の敷地を出る方向へ歩き始めた。しばらくの間、どちらも口を開かなかった。
マエルにとって、沈黙は特に気まずいものではなかった。無意味な言葉で一秒一秒を埋める必要などない。
一方、タクミはしばらく前から何かを言おうか迷っているようだった。
「何か言いたいことでもあるのか?」
「えっ? どうして……?」
「三秒おきにこっちを見てるからな。顔に何かついてるか、俺に話があるかのどっちかだろ。」
タクミは慌てて目をそらした。
「その……クラスで、もう友達ができたのかなって気になって。」
マエルはわずかに肩をすくめた。
「どうして?」
「べ、別に! ただ知りたかっただけだよ。」
「もし、まだできてないって答えたら?」
「そ、それは……普通だと思うよ。まだ来たばかりなんだし。」
「じゃあ、どうして聞いたんだ?」
タクミは口を開いたが、すぐに閉じた。
「よく分からない。ただ、みんながもう知り合ってるクラスに途中から入るのって、大変なんじゃないかと思って。」
マエルは前を歩く生徒たちを眺めた。大声で話している者もいれば、小さなグループで帰っている者もいた。中には、本人たちにしか重要ではなさそうな理由で言い争っている生徒までいた。
「長い間、知り合いだったからって、本当にお互いを理解してるとは限らないだろ。」
タクミは彼のほうを向いた。
「本当は相手のことをよく知らなくても、友達になれると思う?」
「それより、みんな『友達』って言葉を簡単に使いすぎると思うけどな。」
「どういうこと?」
「誰かと一緒に過ごして、一緒に飯を食べて、そいつの冗談で笑って……それだけで友達になる。でも、もし明日、もう何も話すことがなくなったら、それでも友達なのか?」
タクミはしばらく黙り込んだ。
「分からない。人によるのかもしれない。」
「たぶんな。」
それ以上、具体的な答えはなかった。正直に言えば、マエル自身、これまで真剣に考えたことがなかったのだ。
「でも、ここで友達が欲しくないわけじゃないんだよね?」
マエルはズボンのポケットに手を入れた。
「そんなことは言ってない。」
「じゃあ……友達が欲しいの?」
「今朝は話しかけるのも怖がってたくせに、ずいぶん質問が多いな。」
タクミは少しうつむいた。
「そうだね。ごめん。」
「またか。」
「あ……ごめん。」
マエルは小さく笑い声を漏らした。
「もういいよ。友達を作りたいかどうか、自分でもよく分からない。まあ、そのうち分かるだろ。」
タクミはその答えについて考えているようだった。
「ちょっと不思議だなって思う。」
「何が?」
「ほとんどの人は、一緒に毎日を過ごせる相手が少なくとも一人は欲しいと思うんだ。だけど、君はそういうことをあまり気にしてないみたいだから。」
マエルはすぐには答えなかった。
前方の道に目を向け、それぞれ違う方向へ歩いていく生徒たちを眺めた。
「まだ気にする理由が見つかってないだけかもしれないな。」
タクミはそれ以上、追及しなかった。
二人は歩き続け、やがて交差点に差しかかった。そこで、それぞれ別の方向へ進まなければならなくなった。
「じゃ、じゃあ……また明日、マカヤ。」
「また明日、ハヤシ。」
タクミは小さく手を振ってから、歩き去った。
マエルは一人で帰路についた。
特別なことなど何もない一日だった。道に迷い、昼食を食べ損ね、午後の大半を時計を眺めながら過ごした。
つまり、どこにでもある普通の一日だった。
それなのに、タクミとの会話が頭から離れなかった。
マエルはこれまで、友情とは比較的単純なものだと思っていた。二人が気が合い、一緒に時間を過ごし、やがて親しくなる。それだけのことだと。
しかし、考えてみれば、自分は誰かがなぜ別の誰かを選ぶのか、その理由を本当には理解していなかった。
なぜ、切っても切れないほど親しくなる人たちがいる一方で、何年も一緒に過ごした末に離れていく人たちもいるのだろう。
答えはなかった。
そして、理由は分からないが、その単純な疑問が、思っていた以上に気になっていた。
マエルは少し歩く速度を上げた。
疲れていたし、腹も減っていた。早く家に帰りたかった。
考えるのは、また後でいい。
そもそも、人はどうして友達になりたがるのだろう?




