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キャンピングカーで始める異世界スローライフ  作者: まけない犬
死にたがりシスターと口の悪いメイド
9/15

祈り

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]


■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「カバ……!? いや、(いのしし)か……!?」


 あとに聞いた話だが、エルグランデにおいて動物と魔物(モンスター)の区別は曖昧らしい。

 神の使いとされる動物が、地域によっては害獣であるように、人の都合次第だそうだ。

 おおむね、人間の手に負えない獣が魔物(モンスター)と呼ばれるし、生息域が魔界だとしてもペットとして高値が付くやつもいる。


「ブルファングです。この場所には魔物(モンスター)は寄り付かないはずなのに……」


 この牛みたいにデカい(いのしし)は、間違いなく魔物(モンスター)として区分されるだろう。

 口から突き出し、大きく湾曲した牙が……ヤバい。人間なんて紙くずみたいに引き裂いてしまうに違いない。


「わたしに()かれてやってきたんですね」

「ホントに自意識過剰じゃないか⁉ 生肉としてってことか!?」


 混乱している。そんなツッコミ入れてる場合じゃないだろう。

 美人は皆に好かれると思いこんでいる……とか、考えてる場合でもないんだ。


「とにかく逃げないとっ!」

「落ち着いてください。無闇に動くとあの子を興奮させてしまいます」


 馬みたいに立って前脚をバタつかせ、犬みたいに地面をガリガリ掘ってる。

 動物を、別の動物で例えるのはセンスがないが、いまの俺にはそれが精いっぱいだ。


 巨体に似合わないつぶらな瞳が、真っ赤に充血している。

 興奮させるなというが、手遅れなんじゃないだろうか。

 いまにも牙を剥いて、飛びかかってきそうだ。


「ブルファアアアッ!!」

「ひいっ!」


 ブルファングが()えた。俺は腰を抜かした。


「安心してください。あの子の目的はわたしです」


 無様に座り込む俺の前に、ルミは立った。

 恐ろしい魔物から、俺を(かば)っているように見える。

 目線を合わせるために彼女は腰を折っていて……顔が近い。

 その視線は優しくて……揺れる金髪から甘い香りがする。


 途端に自分が情けなく感じた。


「ブルアアアアアッ!!」


 水面を揺らす咆哮(ほうこう)が近づいて来る。

 ドスドスと地面も揺れて、背中に悪寒が走った。


 ルミは振り向き、迫り来る(いのしし)対峙(たいじ)した――


「ばかやろうっ!」


 咄嗟(とっさ)の判断だったと思う。

 なにも考えていなかった。考えていたらこんな行動とっちゃいない。


 車に跳ねられるような衝撃を受けた。

 子供の頃に一度だけ交通事故にあったことがある。

 自転車に乗っていて、見通しの悪い路地での出来事だった。俺自身は無傷だったものの、前輪はぐにゃりと曲がって悲惨だった。


 だが、あのときとは桁が違う。


「うわぁああ!」

「ハンゾーさん!」


 押しのけたことでルミは転んだ。

 俺はその何倍もの距離を転がっていく。砂利や木片が体に食い込むのを感じた。


「大丈夫ですか!」


 ルミが駆け寄ってくる。

 長いスカートが邪魔になるのか、両手でつまみあげながら。

 その所作すらも気品に溢れ(あふれ)ているが、なんでそんな格好で森に来たんだ?


「なんだこれっ⁉」


 腕がぐにゃりと曲がってる。

 もちろん、曲がっちゃいけない部分から、曲がっちゃいけない向きに。


「いってぇえええっ!!」


 折れていると気づいた瞬間に、強い痛みが襲って来た。

 脂汗か、冷や汗か、とちらかわからないが、とにかく大量に噴き出した。


「あああ、折れています!」

「知ってるよ!」


 これだけ痛いなら、死んではないってことだ、それだけはよかった。


「ブルアアアアアッ!!」


 なにもよくない。

 (いのしし)が地面を踏み鳴らしながら、方向転換している。

 もう一発ぶちかまそうとしているのは明白だ。


「くそっ! 逃げろ! 逃げるんだ!」


 俺らが死ぬまで、何度だって繰り返すだろう。猪突猛進(ちょとつもうしん)というくらいなのだから。


「おい! 逃げるんだ!」

「……」


 ルミは動かない。動いちゃくれない。

 俺が逃げるまで、自分も逃げるわけには……なんて、考えてそうな顔をしている。


 なんだそれ。俺だってそうだ。順番なんてどうだっていいだろう。


「くそ! 逃げるぞっ!」


 俺は立ち上がり、ルミの手を引いた。

 折れた腕に激痛を感じるが、なんというか……情報として感じている、みたいな感触だった。


 絶体絶命のピンチで、アドレナリンが全開なんだろう。

 俺は、俺の底力に驚きつつも、辺りを見回した。


「逃げるってどこに⁉」


 開けた場所だ、隠れる場所なんてない。

 森に逃げ込むか、湖に飛び込むか……いずれにしろ、距離が遠い。


「ブルッ! ブルブル!」


 無理だ。ブルファングの速度を振り切ることはできない。

 俺かルミのどちらかが(おとり)になるくらいしないと無理だ。

 だがもう、俺はルミの手を(つか)んでいる。


 いまさら手を離すことはできやしない。


 ブッ、ブッブーーーー!!


「ブルファッ!?」


 大きなクラクションが鳴って、ハイビームがブルファングを照らした。

 驚いたのか、その場で跳ねて足をバタつかせた。


「エクラ!?」


 光はエクラのフロントライトから伸びていた。

 そして、手招きでもするかのように、ワイパーがウィンウィンと揺れている。


「こっちに来いって言ってるのか!?」


 なんで車がひとりでに。なんてことは今は考えないでおこう。

 車内に逃げ込むのはよい考えだ。そのまま運転して、この場から立ち去ることもできる。


「こっちだ!」

「ハンゾーさん!?」


 急いでエクラに駆け寄った。

 扉を開けようと腕を伸ばしたが、折れて曲がっているほうだったから上手く(つか)めなかった。


「こっちじゃないっ!」


 折れてない腕でドアを開け、車内に滑り込む。


「キミも乗れっ! はやくっ!」

「でも……」


 ルミは扉の前で立ち止まっている。

 戸惑っている様子だ、異世界に車はないのだろうか。


 しかし、そんな場合じゃないだろう。


「馬車みたいなものだよっ! はや――」


 はやくしろと言い終わる間もなく、強い衝撃が車内を揺らした。

 ブルファングが俺とルミの間に割って入ってきた。長い助走からの頭突きを見舞ってきた。


「うわぁ!」

「きゃあっ!」


 俺は車内で転がり、備えつけのテーブルで頭を打った。

 痛い。だが、折れた腕はもっと痛かった。


「ルミっ!」


 ドタバタと、寄りかかるものを探しながら立った。

 彼女の無事を確かめる為に、窓に目をやる。


 キャンピングカーはこういう場合に不便だ、外の様子が(つか)みにくい。

 車内からはルミの姿を捉えることはできなかった。


 恐る恐る半開きになったドアから顔を出した。


「ルミ! なにしてるんだっ! こっちに来るんだ!」


 彼女はブルファングと顔を見合わせながら、車からジリジリと遠ざかっていった。


「わたしは大丈夫です」


 俺の叫びに、ルミは笑顔で答えた。

 大丈夫って、何がだ?


「おいっ! ルミっ! こっちだって言っているだろ!!」


 苛立ちで口調が荒くなる。

 言い方が悪かったことが原因だとは思えないが、返事は無かった。


 ルミは、俺とエクラから距離を取っていく。

 被害がこちらに及ばないように、ブルファングを引き離そうとしている。そんな風に見えた。


 ――カッチ、カッチ、カッチ


「エクラ!?」


 ハザードランプが点滅した。


「なんだっ? 座れって言ってるのか!?」


 フロントガラスの向こう側で、ブルファングがあと脚を使って地面を削るのが見える。

 ガリガリという音がする。突進前の予兆に違いない。


「なんだってんだよっ!」


 俺はドライバーシートに飛び乗った。

 キーはつけたままだった。急いで回した。


 グォオオンッ!


 一発で点火した。エクラのエンジンが(うな)りをあげる。

 

「ブルアアアアアアッ!!」


 ブルファングも吠え(ほえ)た。


「あなたでは無理かもしれません」


 ルミは、祈りを(ささ)げるように両手を組んでいた。

 その目に恐怖はなく、むしろ、悲しみの色を帯びていた。


 (ひづめ)が土を(えぐ)り、巨体がロケットのように飛び出した。

 二本の牙で(えぐ)るような角度で、ブルファングは前に進んだ。


「祈ってる場合かよっ!」


 折れた腕では、ハンドルを握れない。

 アクセルに体重を乗せ、肩口で抱き着くようにハンドルを回す。


 内臓がおいていかれるような感覚を覚えた。

 三トン越えの車体とは思えない加速で、エクラは奔った。


 グォオオオオオン――――――ドゴォーンッ!!


「~~~~~ッ!!」


 人身事故もこんな感触なのだろうか。

 ゾッとするような考えが脳裏を過った。派手な音の割に、対した衝撃がなかったからだ。


 ルミを襲う巨大な(いのしし)の横っ面に、キャンピングカーでの体当たり。

 軌道が逸れるどころじゃない、直角に折れ曲がるように吹き飛んでいった。


「はやく乗ってくれっ! 逃げるんだっ!」


 俺は滑り落ちるように、車外に出た。


「ハンゾーさん!」


 ルミは吹き飛ぶブルファングを目で追っていたが、そのあとすぐにこちらに駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか?」

「いまのところはな! だがすぐにそうじゃなくなるっ!」

「腕、やはり折れています」

「わかっているよ!」


 グズグズしないでほしい。

 ブルファンゴを仕留めてる自信はない。早くこの場から立ち去りたかった。


「動かずそのままで大人しくしていてください」


 こいつは、さっきからなんなんだ。

 逃げろ、逃げなきゃと、俺はずっと言っているのに――


「ドロル・レミッスス――」


 ルミは何かを口ずさんだ……詩? 違う、これは祈りだ。


「――カロ・サネトゥル・アニマ・パケム……癒しの光をっ!」


 折れた腕に添えられた彼女の掌から、黄金の光が(あふ)れた。

 森に差し込む木漏れ日よりも、強く、色濃く、暖かかった。


「動きますか?」

「えっ? うそだろ? 痛くない……折れてもない。治っている?」

「……癒しの祈りです」

「異世界すぎるだろっ!」


 もう少し気の利いたことを言いたかった。

 だが、それ以外に例えようがなかったんだ。


「異……世界……?」


 わけが分からないと、ルミは小首を傾げた。

 こんな至近距離で、その仕草はやはり反則ではないかと思う。

 しかも、美人でシスターで、ヒーラーってなにか狙っているのかとすら思う。


 異世界の住人に、転生がどうこうって話をしていいのだろうか。

 そんな疑問が過るが、悠長にしている時間などないことを思い出した。


「ルミ! 話はあとだ。車に乗ってくれ! 逃げるぞっ!」


 立ち上がり、彼女の肩に手を置いたのだが、キョトンとした表情を向けられた。


 この期に及んで、そのリアクションはなんだ。しゃらくさい。

 無理矢理にでも連れて行く。俺は彼女の手を引こうとした。


「ブ……ブ……ブルファアアアアアッ……!」


 跳ね飛ばしたブルファングが、ヨロヨロと立ちあがってくる。

 そんな気はしていた。エクラをぶつける瞬間に、俺はブレーキを掛けた。


 日和った俺が悪い――だが、立ってくるなよ。これが魔物(モンスター)って奴か。


「ルミ! はやくっ!」


 急かす俺に、やはり彼女は優しく微笑んだ。


「あなたを巻き込んでしまった以上、責任を取らないといけません」

「はぁ?」


 俺の疑問を他所に、彼女はまたも振り向き、一歩前に出た。


「ルミ――」

「大丈夫です」


 ルミは俺の言葉を遮るように、右手をスッと上げた。


「ノクティ・フィネム・ディク――」


 まただ、あの祈りだ。


 バリッ……バリバリバリバリバリッ!!


 雲ひとつない青空だが、雷が落ちた。

 彼女の小さな体から(ほとばし)る雷光が、右手に収束していく。


「――ルクス・ドミニ・ウンブラス・デレト――」


 たわわに実った胸を天に向け、大袈裟(おおげさ)に見えるほどに彼女は振りかぶった。

 野球の投手というよりは、やり投げのフォームに近い。


 光の奔流が風圧となって、ヴェールから金髪がこぼる。スカートもはためき肌が露わになる。

 修道服の下には、純白のストッキングにガーターベルト。それらと同じく純白の下着だった。


 普段であれば目を奪われるような光景だろうが、如何せん、いまはそれ所ではない。


 ド派手な電撃が空間に(ほとばし)っているのだが、この場にいてもいいのだろうか。

 感電してしまうのではと、足が(すく)んだが、光は意思を持ち、俺を避けているようにも見えた。


「――強き光をっ!」


 ルミは腕を振り抜いた。


「ブギャアアアアアッ!!」


 断末魔は一瞬だった。

 光速――かどうかは分からないが、彼女が光の(やり)を投げた直後に終わっていた。


 閃光(せんこう)が、ブルファングを焼いた。


「……す、すごい……」


 ルミの背中に視線を移しながら言った。

 肉と空気が焦げる匂いが鼻を刺す。


「……」


 ルミは振り向くことなく、胸の前で両手を組んだ。

 そのまま、消し炭と化したブルファングの元に歩みを進め、立ち止まり、祈りを(ささ)げた。

最後までお付き合いいただき、感謝です!

「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!

今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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