キャンプ地
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「いかん。さすがに深く入りすぎたか?」
黒い森が続いていた。
キャンプといえば森だし、この世界にそういった場所はいくらでもありそうだった。
森に踏み込むまえに軽く覗いたときは、緑色の景色が広がっていて、木漏れ日のカーテンが俺を歓迎しているようにも見えた。
木々も程よい密集具合で、車一台通れそうだったから、立ち入ってみた。
それから十分か、二十分か。正確な時間はわからないが、のろのろと前に進んだ。
エクラの走破性というのだろうか。
草木や、木の根が張り廻った森の中を、ゆっくりだが確実に進んでいく感覚は、気持ちの良いものだった。
しかし、しばらく運転を続けているうちに、急に不安になってきて、引き返そうかと思った。
バックミラーに視線を向けると、いままで進んできたはずの道がなくなっていた。
どういうことだって思うだろ?
そう、俺はまさにいまそう思っているところなんだ。
開けていたはずの森が、蓋をされたみたいに閉ざされている。
「俺は、ここまでどうやってきたんだよ?」
そんな風にぼやいてみたところで現実は変わらない。
「まぁ、でも森ってこんな感じなのかな? 異世界だしな、多少はそういう所あるのかもな……」
社畜の必須スキルは《あきらめ》である。
別に悪いことばかりじゃないぜ。現状を受け入れて生き抜く、サバイバルテクニックでもあるんだ。
帰り道は閉ざされているが、暗くて黒い方。先に進む道はまだ開けている。
「俺を誘ってんのか?」
そんな考えがよぎるが、自意識過剰な気もした。
「こっちの方がまだ安全そうだな……」
そう呟きながら《つぶやきながら》、左方向のウィンカーを点灯させた。
ゲーム的に例えると、森林と樹海のバイオームが切り替わる淵に俺は居る。その境目にそって移動できそうだった。
そうやって進むこと十分ほど。不意に視界が開けた。
湖だ。森に囲まれた、静かな湖畔。
黒い方の森は相変わらず不気味だが、ここなら開けているし、水場もある。
今日はここで一泊しよう、他の選択肢は頭に浮かばなかった。
「まずは焚き木からだろう」
九段下半蔵の初キャンプ。最初の仕事は火起こしだ。
本来はテントの設営などから始まるのだろうが、寝床としてはキャンピングカーがある。
実際、キャンパー達がどういう流れでやっているのか正確には知らない。
必要な道具などは、ネットやキャンプ動画を参考に揃えてあるが、キャンプの手順までは、敢えて調べていない。
毎朝六時に満員電車。昼十二時にワンコイン弁当。夕方五時に退勤を押す。
あとは好きなだけサービス残業だが、ココにリミットはない。
うんざりだった。
自分の好きなことを、自分の好きなタイミングで――それがいま、俺のやりたいことだ。
「……おっ……おっ……おおっ! …………あれっ全然うまくいかないぞ!?」
ファイヤースターターという道具を使ってみた。金属の棒と板を擦り合わせて火花を起こす仕組みらしい。
新品の箱のまま持ち込んでいたから、ペラペラの説明書が一枚付属していた。
記載通りに進めているはずなんだが、なかなか火は付かない。
その辺りで拾った枯れ木を、同じくその辺りで拾った石で囲んで、かまどっぽく組んでみた。
見よう見まねだが、形だけは焚き木っぽい。
金属を擦り合わせると、乾いた音とともに火花は散る。不良品ではないはずだ。
だけど、いくら火花を散らしても枯れ木に火は付かない。燻ることすらなく、消えていく。
「あっちぃっ!」
ときおり吹いてくる風で火花が跳ね返り、俺の手を襲った。
ちゃんと、熱かった。
汗が額を伝う。もう疲れた。そもそも、まともに火花を出すまでに三十分は掛かっていた。
箱から出してすぐの時は、シャッシャッと音が鳴るだけで、何も起きなかった。
何度も何度も挑戦するうちに、焦げた匂いを感じて……気持ち強く擦ることを意識した。
そうすることで、火花を散らすことはできるようになったのだが、そこから前に進まないのだ、一向に。
「不便すぎるっ! やってられんっ!」
ふと、ツールボックスの中にライターがあったことを思い出す。
「って、バカヤロウっ! キャンプ一発目だぞっ! 文明の利器に頼ってどうする!」
ファイヤースターターも文明が生み出したものだが、それは考えないことにする。
異世界一発目の火起こしは、自らの手で成功させないといけない。
そう意気込みながら、おもむろにスマフォを取り出す。
「えーっと……焚き木、ファイヤースターター……と」
火起こしなんかより、よほど慣れた手つきで動画を検索する。
なんなら音声認識だって使える。社畜のITスキルを舐めるなよ。
「ふんふん……あ……着火剤というのが必要なのか?」
薪に直接着火はできないらしい。
火種になる着火剤が必要で、薪の質も重要。その辺りで適当に拾ったものでは厳しいそうだ。
ふと周囲を見渡す。
湖の直径は数百メートルって所で、風呂桶みたいな綺麗な円形になっている。
景色はいいんだが……そうか、水辺だもんな。
散乱する枯れ木は湿気ている。火なんて起きるわけない。勉強になった。
「着火剤は買っておいた気がする」
ここ数週間、ブラック企業での漆黒勤務の合間に、ショッピングサイトを巡っていた。
キャンプデビューを目の前に、タガが外れたように、キャンプ用品を買いまくっていた。
用途なんてよくわかってなかったが、キャンプインフルエンサーがおすすめしたものを片っ端から、欲しいものリストに登録していった。
思えば爆買いによる現実逃避だったのかもしれない。きっとそうなのだろう。だが、異世界に飛ばされると事前に知っていたのなら、もっと色々ポチってたはずだ。
「ふんふん……ファットウッドを削る方法もある? あるぞ……それも買ってたぞ多分っ!」
バラバラに届いたキャンプ用品だったが、無駄にデカい箱で届いたものがいくつかあった。
そういった環境破壊的デカ箱に、他アイテムも詰めに詰め込んでエクラに乗せてある。
箱をゴソゴソまさぐると、麻袋にまとめられた木片を見つけた。
ヘアジェルみたいな着火剤もあるにはあったが、木を削ってみたい好奇心が勝った。
「あるぜ……ナイフもな……」
本当はランボーみたいなデッカイナイフが欲しかったのだが、俺が住んでいた国には銃刀法というルールがある。
ポリスメンに職質を受けた場合を想定し、「キャンプ用品です!」と自信もって言えるよう、できるだけ小ぶりのナイフを見繕った。
なんて不自由な国なんだと思うこともあるが、ナイフを使うことなんて人生においてそうそうない。
とはいえ、包丁の扱いはどうなってるんだよって思ったりもする。実際、デカめの包丁も持参していて、キッチン棚に納めてある。
まぁ、定義とかルールとかはキチンとあるのだろう。もろもろ考慮に入れると平和で良い国だ。特別不満なんてなかった。
異世界に飽きたら、ホームシックにかかったりするのだろうか。
少なくともいまはそんな気分ではない。
「えーっと、こうやって……細かく削って……」
百均で買ったスタンドに立てかけたスマフォ。画面には二十秒程度で構成された、着火手順を説明する動画がループで流れている。
数十回、繰り返し見て試すうちに「全然ダメ……」から「おしい!」に変わっていった。
「消えるなっ! 消えるなっ! 生きろっ!」
そう叫びつつ、フーフーと息を吹きかけた。頭がクラクラする。
「うぉおおおおっっ!」
おそらく顔は真っ赤だろう。
肺が空になるほど息を吹きかけると、白い煙が立ち上り、炎が揺らめいた。
「やったっ! 着火たぞっ! やったっ!」
もっと上手いやりかたはあるのだろう。だが、はじめてにしては上出来じゃあないか。
俺は中腰の姿勢から、真後ろにドサっと倒れた。
すこし湿り気のある、土の感触がいまは気持ちがいい。
「スー……ハー……スー……ハー……」
空気を取り込もうと深呼吸をすると、燻った薪の香りで肺が満たされた。
煙い……だが、悪くない感じだ。
「不便を楽しむってのは、こういうことか」
キャンプ配信者がよく口にするフレーズだ。
それが本質だろうなというのは、なんとなく理解できる。
「まだまだ修行が足りないってか」
楽しいといえば楽しかった。だが、ほんのりと面倒くささを感じたのも事実だ。
次はライターでいいんじゃないかって、身も蓋もないことが頭をよぎった。
『ファイヤースターターの使い方、解説します。まずは、着火剤を用意しましょう――』
何度目のループだろうか、脇に置いたスマフォから、ファイヤースターターの使い方が流れてくる。
復唱できるくらい聞いた気がする。次はもっと上手くやれるだろう。
「腹減った~……喉も乾いたなぁ……」
大仕事を終えて、ようやく空腹を思い出した。
食材も色々と用意してある、火もあるんだから、次は料理だろう――キャンプ料理の動画を流そうとスマフォに手を伸ばした。
「……ってっ! Wi-Fiは繋がるのかよっ!!」
ずっと圏外のままだから通話は無理。だけど、ネット回線は生きてる。
Wi-Fiルーターは、エクラの中にあるからだろうか。
俺の叫びは、木霊のように響いていた。
最後までお付き合いいただき、感謝です!
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