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「お金は十分に貯まったけど、誰に依頼しようかな」
公募してもいいが、あまり意味がない。そこに到達できるパーティは数えられるほどしかないからだ。ある程度は目星を付けているが、能力や状況などを考慮すると、選択肢はあまりなかった。
「やっぱ、あいつらしか居ないかなー……」
それは勇者パーティーだった。近頃、魔王の復活により魔物の活動が活発になってきており、依頼も殺到しているらしい。
ジョウロが言うには、あのサル型の魔物は危険度が高く、魔王を倒すためには、優先して倒さないといけない魔物だと言う。だが、勇者パーティーは成長著しいとはいえ年若い者ばかりだ。
(もう少し育つのを待つべきか?)
なにしろS級冒険者を瞬殺する魔物がいるのだ。
いくら勇者とはいえ、まだ発展途上の彼らに依頼するのには躊躇した。
(だけど、時間がない。復活させるには残り時間が少ないと、ジョウロも言ってたし……)
まだ勇者はSランクに昇格したばかりだ。
あの魔物を相手にするには経験不足かもしれないと、悩んだ。
悩み過ぎて、前をよく見ずに歩いていたら、川に落ちそうになったところを「ホルンさん、危ない!!」と親切な人、もとい勇者が助けてくれた。
「こんなところで会うなんて奇遇だね。助かったよ~……!」
へらへらと笑っていたが、自分で思っている以上に顔に出ていたのかもしれない。
「顔色が悪いですよ! 何か悩み事でも!?」と、悩みを見透かされるかのように聞いてきた。
「うーん……、実は……」とホルンが今までのことを話すと、顔色が変わった。
「何を言っているんですか!? 僕たちが、そんな薄情なわけないじゃないですか!!」
「そうですよ、ホルンさんは私たちにとって、ただの冒険者じゃない! 恩人です!! その依頼、受けますよ!!」
「恩人だなんて、そんな……。ただ、当たり前のことをしただけなのに」
「当たり前じゃないです! どう見ても、僕たちは不審者でしたし!!」
勇者パーティの面々に口々に言われて、恐縮するしかなかった。そんなに面と向かって褒められる事が少ないから、背中辺りがむずがゆくなった。
「今では僕たち、こうやって勇者してますけど、飢え死に寸前だったんですから。変な身なりをした、見るからに怪しい僕たちに手を差し伸べて下さったのは、貴方だけでした!!」
「でもそれって、スクール水着とか言う……」
「言わないでください!!! 黒歴史です!!!」
彼らはプールとやらの授業の最中に、何をとち狂ったのか街道のど真ん中に召喚された。タオルというものを巻いている子もいたが、ほとんどの子は下着同然だった。
たまたまホルンが通りすがったから良かったが、そうでなければ行き倒れていたかもしれない。
「……正直、時間がなくて困っていたんだ。危険な旅になるかもしれないが、依頼していいかい?」
「もちろんです! 僕らに任せてください!」
「ありがとう。俺も道案内として付いていくよ」
話はまとまり、ホルンと勇者パーティーはギルドに行って書面で正式に契約を交わした。
「道案内どころか、敵のほとんどをホルンさんが倒してますよね……」
「私たちもチートスキル持ちだけど、火力やばくない? 前からも思ってたんですけど、そのジョウロ何ですか?」
「ジョウロというか、アリスちゃんだよ」
「……ジョウロに名前を付けたんですか?」
ドン引きの表情で勇者が見ているので、ホルンは慌てて釈明をした。
「ジョウロって言うと怒るんだよ。お前らもアリスにぶん殴られたくなければ、気を付けろよ」
近頃では、ジョウロは魔力を巧みに使って空を飛び、自由に動くようになっている。ホルンの見える範囲から出ることはないが、勝手に魔物を倒したりしているのだ。
ホルン、というよりはジョウロの活躍もあり、特に問題なく、仲間が死んだ階層まで行くことが出来たが、予想に反して、仲間の遺体は転がっていなかった。それどころか、目を疑うような光景が、そこにはあった。




