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月日が流れるのはあっという間だ。
「あれから、もう3年も経つのか。あとは嫁だけなんだけど。まぁ、こればっかりは、焦ってもしょうがないか……」
残念なことに、寄ってくるのはお金狙いの女性ばかりで、良縁には恵まれなかった。
しかし、ホルンには商才があったのか、商人の息子としては順風満帆だ。
街から街へと移動する時は、ギルドに依頼して護衛を雇っていた。あまり戦闘に加わることはなかったが、迷惑にならない程度に手伝いをしながら旅をした。
野営の時に料理を振る舞うと喜ばれるし、ランクの高い魔物が出た時はサポートをした。
「まだ冒険者を引退するのは早くないですか!? 今からでも、冒険者に復帰しましょうよ! ぜひうちのパーティーに入って下さい!!」と高ランクの冒険者からお誘いを受けたこともあったが、丁重にお断りをした。
残念そうに「何時でもお待ちしていますからね!」と、言われた。ブランクもあるし、現役の時だって、たいした活躍もしていないというのに、世辞とはいえ、嬉しいことだ。現役の頃だったら、一緒に酒場で飲み明かして仲良くなっていたかもな、とホルンは思った。
「う~ん。暇なのは良いことだけど、手持ち無沙汰だなあ」
商売が順調過ぎて暇だったので、自然とホルンの興味はジョウロに注がれた。
ジョウロみたいな魔道具は、すっかりメインの装備品になっていた。
右手で杖、左手で適時ジョウロを持って戦闘をしている。見た目はファンシーなので盗賊相手にするとゲラゲラ笑われることも多いが、ジョウロが盾兼回復アイテムだと知らない人には「こんな時に、何をしてるんだ!?」と本気で怒られた。
「今さらだけど、これって、どうなってるんだろう? 出るのって回復ポーションだけなのかな?」
3年経っても未だに解明されないことは多く、謎だらけだったので、ホルンの好奇心は刺激された。ホルンは試しに魔力をジョウロに注ぎ、魔法を使う時と同じように中身の液体の属性を変更した。
「えぇ……!?」
その試みは、あっさり成功し、ホルンは驚愕した。ジョウロから炎が飛び出したのだから、驚くしかないだろう。ただ、その飛距離は、あまりに短く、手の届く範囲内にしか飛ばなかった。
「焚火ぐらいにしか使えないかな。戦闘にはあまり使えそうになさそうだけど、これは凄いなあ」
威力は下級の火魔法に毛が生えた程度だが、不意打ちには使えるかもしれない。
護衛はいるが、何が起きるのか分からないのが世の常だ。金のために犯罪を犯す人間は多い。自衛のためには、奥の手が何個あっても良いぐらいだ。
実際、何度も襲われて、その度に「旅商人舐めてたなあ。危険度から言えば、冒険者と変わらないじゃん。」と思うことも、しばしばあった。
「まだまだ、道半ばだ。目的を果たすまでは死ねないからな……!」
必要以上に武装する必要はない。そのために護衛が居るのだ。
しかし、命は1個しかないのだ。油断して死んでしまえば、今までの努力は水の泡だ。目的を果たすためには、生存能力を磨き上げることが、必要不可欠だった。
お金はかけずに、強くなるにはどうしたら良いか、ホルンは考えた。
「やっぱりコレを使いこなすことだよな」
多少筋力や魔力が上がったところで、たいして変わらないだろう。それよりも、本来ホルンが所持するには不釣り合いなボスドロップ品ーーおそらくはかなり高価な魔道具の使い方を模索するほうが、期待値は大きかった。
そうしてホルンは宝の持ち腐れとなっているジョウロを、本腰を入れて研究し始めた。




