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「鑑定不能だって!? そんなこと、あるんですか!?」
「はい。ラストダンジョンのボスドロップ品とのことなので、我々の鑑定スキルでは取り扱えない物なのかもしれません」
悔しそうに魔道具を見る鑑定士を見て、ホルンは鑑定することをあきらめた。
(レアリティは低そうだから、鑑定できるかと思っていたけど……。ここの鑑定士の力量を上回る魔道具となると、どこでも同じだろうな)
回復アイテムが無限に出てくるのだから、少なくとも聖属性はついてるはずだ。
だが、鑑定不能の未鑑定アイテムだと、オークションに出しても高値がつきにくい。苦労して仲間と共に得た魔道具を、捨て値で売るつもりはなかった。
「こちら、売るにしても、買い取りもできませんし、オークションにも出品出来ません。現状では、国に寄贈という形になるかと……」
「回復ポーションと同等の回復効果がある液体が出る魔道具なんですが、どうして売却が出来ないのですか?」
(やっぱり、未鑑定の状態で使用したからかな……)
せめてドロップした時と同じ状態で持って帰れたら良かったが、そんな余裕はなかった。
そういえばドロップした時は、中身はきれいなエメラルドグリーンの液体だった気がするし、回復も凄まじい効果があった。
回復ポーションはせいぜい切り傷の表皮を治癒させる程度だが、あの水は指の切断すら回復させたのだ。
だが、そんなことは結果論である。
生きて帰らなければ魔道具だって持ち帰れなかったのだから、考えるだけ意味がない。
「試しに使用してみようとしたのですが、誰も使うことが出来ませんでした。これは推測でしかないのですが、もしかすると、ホルン様を主と認めている可能性があります」
「魔道具に意思がある、ってことですか?」
もしそうだとすると、死ぬまで売却不能なのかもしれない。
(自分で使うのが良いかもしれないな。何の因果か、他の人には使えないみたいだし。冒険者でなくとも、商人だって危険と隣り合わせだ。怪我をしたりするだろう)
だが、本来は自分が使うのも身分不相応な魔道具であるはずなので、勿体ない気がした。
「実家の家業を継いで商人になる予定だから、あまりこの魔道具を使う機会もないと思うんですよね。まさに宝の持ち腐れですね」
「え!? 冒険者をおやめになるのですか!!?」
「元々反対されていたんですよ。命が何個あっても足りないって。数日前に言ったら、泣いて喜んでくれましたよ。正直、親不孝だったかもしれないと思うし、せっかく助かった命なんだから、しばらくは親孝行でもしようかなと思いまして」
他の冒険者に依頼するお金を稼ぐために冒険者をやめるつもりだが、その目的の半分は親のためでもある。
結婚のあてはないが、親を安心させるために、ゆくゆくは孫も持たないといけないだろう。
(でも、俺と結婚してくれる女性なんて居るのかな。そもそも、どうやって付き合えばいいのか、全然分からないし……)
お見合いをしてみるのもいいかもしれない。だが、年齢イコール彼女居ない歴のホルンは、そのことを思うと、今から胃が痛かった。




