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(それでも、まだ俺に出来ることがあるのなら……)
僅かな希望でも、ないよりはマシだ。
仲間を失い、地下40階まで行く実力も気力もない。だが、1人でも、まだ出来ることはある。
今後の身の振り方を考えていると、ぐうーとお腹が鳴った。
「体は正直だなあ」
パーティーが全滅してから、今まで全然食欲がなかったのに、仲間のために出来ることがあるのだと思ったら、途端にお腹が減ってきた。
「そうだよな。腹が減ったら戦は出来ないって言うもんな」
ホルンは家に置いてあった食材を使って料理をし、遅い朝食にすることにした。
料理は得意とは言えなかったが、仲間が喜んだり驚いたりする顔を見るのが楽しみで、試行錯誤するうちに自然と腕は磨かれて、プロの料理人と言っても遜色のないレベルに達していた。
「いったい何人分作ってるんだろ。俺ってバカだなぁ……。あれ? ……俺って、こんなに涙もろかったっけ?」
何も考えずに作ったつもりが、仲間の好物ばかり並べられているのを見て、また涙がこみ上げてきた。
「みんなで食べたかったなぁ……」
それは、ボスを討伐した時のお祝いとして振る舞うつもりでホルンが用意した食材だった。
まさか、自分が食べることになるなんて思いもしなかった。
(ミーアは肉ばっかり好きで、なんとか野菜を食べてもらおうと頑張ったっけ。せっかく奮発して、分厚い肉を用意したのになあ。「なんでアンタが食べてんのよ!」って怒られそうですね。)
作った料理を見たら、一人ひとりの顔が思い浮かんだ。
一人ひとりに語りかけるようにして、ホルンは食べていった。
それはホルンなりの弔いだった。だが、食事が終わり、部屋を覗いて、ホルンは激怒した。
「あいつら、もうちょっと部屋片付けろよな!? なんだよ、この汚部屋は!?」
拠点から退去するために、遺族に連絡し、荷物の大半は引き取ってもらうことにしたが、あまりにも量が多くて片付けに時間がかかった。
「だから共用スペースにばっかり居たのか」
足の踏み場もない部屋ばかりだった。ひどい部屋だと、空間魔法を駆使して山のような素材を収容している部屋もあり、ホルンは頭を抱えた。
「……すみません。片付けを手伝ってもらえませんか?」
うかつに手を出せば危険な代物も散在しており、部屋に入った瞬間、罠にかかって逆さ吊りの憂き目に遭った仲間のご両親は、涙目でホルンに手伝いを求めた。
なんとか片付けも終わり、冒険者を辞めるので、お世話になった人たちに挨拶回りをしていると、馴染みの武器屋の店主から声を掛けられた。
「お前らが居なくなると寂しくなるなあ。引っ越しするなら手伝ってやるから、いつでも言ってくれよ」
駆け出しの頃から世話になっている武器屋の店主はホルンに餞別だと言って、護身用の短刀を手渡してくれた。




