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それは、未踏破だったダンジョンのボスを倒し、意気揚々と帰還する途中に訪れた悪夢だった。
ホルンと、その仲間の冒険者たちは、血気盛んな駆け出しの頃から、ラストダンジョンと呼ばれる最難関の迷宮を踏破するという夢を追いかけていた。
その夢が叶って、多少の気の緩みはあったかもしれない。
しかし、豊富なダンジョン攻略の経験を持ち、ベテランだった冒険者たちは帰路で油断するほど、愚かではなかった。ボスを倒したとはいえ、まだ最深部にいたため、警戒を怠るわけにいかなかった。
実際、地下48階でそれは起きた。
ボス部屋は地下50階にあったので、ボス部屋から、それほど離れていない場所で危機に陥ったことになる。
異変の兆候はあった。通路の変動があり、行きでマッピングした道とは異なる道を歩くことになった。それはこのダンジョンではよくあることだったし、ボスを倒した影響だろうと、特に気に留められていなかった。
そして未知の魔物が現れた。
攻略の糸口すら掴むことが出来ないまま仲間は殺された。
まだ致命的な攻撃を受けていなかったホルンは、最後の力を振り絞った仲間に助けられて、この危険な魔物の情報をギルドに伝えるという使命を抱えながら、たった1人で敗走することになった。
「あの魔物、いったい何だったんだ……」
自問自答するように、そう呟いたが、その問いかけに答える仲間は、もういない。
地下40階以降は未踏で、1階降りるだけで難易度が目に見えて上がる。
その上、広大で入り組んでおり、まるで迷宮のような場所だったため、ホルンは仲間と共に10年という歳月をかけて1階ずつ慎重にマッピングをしたが、それは初めて遭遇する魔物だった。
ボスより遥かに強い魔物など、通常ではあり得ない話だが、初見だった故に、攻略方法を誤っただけなのかもしれない。
しかし、仲間たちの不手際を差し引いたとしても、あの攻撃力の高さ、そして知能の高さは脅威だった。
何しろ、その魔物は人の言葉を喋るのだ。
きっと、この情報を持ちかえれば、ギルドは大騒ぎになるだろう。ダンジョンはしばらくの間、立ち入り禁止になるかもしれない。
「まさか、1人で戻ることになるなんてなぁ……」
マッピングした地図を見ながら、ホルンはため息をついた。
ソロであれば地下20階で1人前と言われている。
地下25階からソロが難しくなり、30階になると熟練のAランクパーティが推奨されている。35階からはSランクパーティでなければ足を踏み入れることすら難しい。そしてSランクのパーティーでさえ攻略が困難になるのが40階だった。




