004 危険を突いて、
迫り来る触手型の手が少女へ攻撃する直前で私は空中に『ウォルテ』を出現させて、生えてきた数本の手を切り落とす。少女は案の定、困惑と驚きの表情を浮かべ、後ろへとよろめく。
私はすぐに体勢を変えて、耳障りな咆哮を上げるシュレクに対して、両手にウォルテを持ち、右から、左からと絶え間なく切り付け、そのまま休む隙も与えず、投げつける。ウォルテは風を切り裂く音を残して、シュレクの腹部へと深く直撃、シュレクはそのまま後方へ突き飛ばされて、動かなくなる。
一瞬の静寂の後、その様子を見た他のシュレク達は怒り狂い、咆哮上げる。地を割らんとする勢いで足を踏み鳴らし、我先にこいつを仕留めようと手を沢山繰り出すもの、自分の体の周りに不気味に蠢く黒い球体の物質を出現させて、一斉に私を狙って放つ。落ち着いて、手を、黒い球体を、手を、手を、黒い球体をと順に切って攻撃を全て退ける。
そうして攻撃が少し落ち着いて隙が出来たところを見逃さず、ウォルテをタガー型に変形させて次々とシュレクへと投げ、全てがシュレクの体を突き抜け、食い込み、倒れたり、よろめいて、そのまま全てのシュレクが絶命したと思われる咆哮を上げ、巨体は土埃を巻き上げて沈黙する。
またしても、時間が止まったかのように静寂に包まれる。すると、後方からピンク髪の少女が息を切らしながら走ってくる。
「あ、ありがとうございます……!!だけど、大丈夫ですか!?た、体調、まだ悪いんじゃ……。」
「あまり大丈夫ではない……。」
「そ、そうですよね!?と、取り敢えずすぐに戻りましょ──」
「いやぁ、助かったよ。アンタ、強いなぁ。」
先ほど、この少女と一緒にシュレクと対峙していた人達が私の方へと進んでくる。使い込まれた服を着ており、シュレクにやられてしまったのか、腕や足には切れ跡が分かりやすく刻まれており、血が少し滲んでいた。
四人のガタイの良い大男とエリート感が溢れ出ている女性が少し気まずさも混じえた顔つきで少女の後ろで立ち止まる。
「最初は二体ぐらいしかいなかったんだけどな。途中で俺たちが戦っている途中で音に気が付いたのか八体程集まってくるもんだから、かなり危なかったんだ。それにしても、トイは、この人と知り合いなのか?」
「知り合いと言うか、さっき会ったばっかりって感じです。」
「助けてくれてありがとう。それにしても、貴方見ない顔ね。別の街から来た感じなのかしら?」
「廻羽市から避難しに来たところを、トイさんに助けられました。」
少女は少し恥ずかしそうに顔を赤らめて、髪をいじり出す。しかしすぐに、何かを思い出したかのように私の手を掴む。
「まだ一食分しか食べてませんから、あまり動いちゃまずいですよ。ひとまずは戻りましょう。──じゃあ、グレイさん、お疲れ様でした。ちょっと戻ります。」
「おう!なんか大変そうだな。そうだ、落ち着いたらその子に俺の家を案内しておいてくれ。」
「分かりました!では!」
そうして、私は再びトイさんに引っ張られる形で先ほどまで居た場所へと戻ることとなった。ここまで来る時はあまり気にしていなかったけど、こうして歩きながら辺りを見渡すとかなり広く、倒壊した建物の破片が散らばっており、思ったよりも危険な状態となっていた。
トイさんはふと、口を開く。
「くれ──あ、いや、そ、そう言えば!助けてもらってこんなこと聞くのはどうかと思いますが、家の鍵って……。」
「あ……勝手に予備っぽい鍵で……。」
トイさんは少し苦笑いした後すぐにほっとため息をついた。そして、切れ跡から血が流れている左腕の部分を軽く抑えながら、改まった顔をして私の方を向く。
「すみません!自己紹介が遅れました!私、神波高校に通う高校1年の『桜羽トイ』と言います!あ、あの……え、えっと……それで、1つ……お願いがあるんです……。」
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
この第4話はiPadで執筆したのですが、スマホにはおそらく無かった「ルビ(ふりがな)」機能がありましたので早速使ってみました。スマホでもあるかもう一度探してみて見つけたら使おうと思います(笑)
引き続き、第5話もよろしくお願いします!!