第八話 爆弾って本物の爆弾かよおい!!(ガチ物理)
私は思った。
嫉妬の炎が燃え上がると、人はここまで非常識になれるのか、と。
エミリアに張り付いて新イケメン“イリオス”を演じてきた私。
今日も学園中でエミリアと仲良くしていたら、攻略対象イケメンたちの表情が明らかにヤバくなっていた。
放課後、下駄箱前。
私の目の前に生徒会長バカ、美術部王子、メガネ野郎、演劇部の色男がずらりと立ちはだかる。
「イリオス……」「もう我慢の限界だ」
「エミリアさんに近づくな!」「お前だけは絶対許さない!」
その手には、なぜか――
本物の爆弾。
「おい、それ本当に投げる気か!? 冗談だろ!? ねえ冗談って言って!!」
しかしイケメンたちに迷いはなかった。
生徒会長が無言で導火線に火をつけ、美術部王子が手榴弾みたいなものを投げてくる。
私は悲鳴をあげて全力疾走。
すぐ後ろでドカン!バリバリ!という爆発音。
校舎の廊下を必死で走り抜け、階段を跳び越え、机を盾に、ロッカー裏に、
次から次へと爆弾が飛んでくる。
「嘘だろ!?この学園どんな治安だよ!!」
「死ぬ死ぬ死ぬマジで死ぬ!!」
息も絶え絶え、煙にむせて倒れそうになったとき――
ロッカーの扉がカチャリと開く。
「イリオスさん、こっち……!」
エミリアが手を引いてくれて、私はロッカーの中へダイブ。
すぐ外では、さらに激しい爆発音と怒号。
「どこ行った!」「逃げるな!!」「出てこいイリオス!!」
私は心臓をバクバクさせながら息をひそめ、ロッカーの中でエミリアと顔を見合わせる。
――そのとき、魔道具の効果が切れて私はイリーナの姿に戻ってしまった。
爆風でボサボサになった髪のまま、エミリアがぽつりと囁く。
「……イリーナ様、そんなに、そんなに私のことを好きだったんですか……?」
爆発音と火薬の匂いが立ち込める学園。
恋愛も命がけ。私はもうツッコミすら追いつかないのであった――。