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第五話 嫉妬爆弾はじめました。

 胃が、痛い。

 スケジュール帳は好感度下げイベントで真っ黒。学園中の壺も本も、そろそろ在庫切れなんじゃないかと本気で心配している。

「水ぶっかけ」「本破き」「壺粉砕」――もう飽きるほど繰り返した。だが、それしかやることがないのがこの世界の理不尽さだ。


 唯一の例外はマーベリックだったけれど、あの子はもうこの周回ではいない……。


 代わりの牛を育て始めたけど、まだまだ役不足。

 一度けしかけてみたが、まさか返り討ちに遭うとは。

 生徒会長、あんなに強かったとは……。


 ともかく、これ以上はじり貧だ。

 手抜きでバリエーションが少ない使いまわしイベントをスキップ無しで毎日見せられるのも地獄なら、翌日には戻ってる好感度を見るのも精神的にしんどくなってきている。


 なにか一発逆転の策はないものだろうか――。


 そして、私は思い出す。

 このクソゲーに、もう一つだけ“仕様として用意されている”好感度大幅ダウンの手段があったことを。


 いわゆる「嫉妬爆弾」――。

 特定の攻略対象とヒロインが仲良くしすぎると、他の攻略対象たちの“嫉妬ゲージ”が溜まり、一定値を超えると爆発。

 修羅場イベントが発生して関係者全員の好感度が大きく下がる、という、公式の救済(?)仕様だ。


 とはいえ、この爆弾システム――

 原作ではバグの好感度自動上昇の暴走に押し流され、ほとんど意味をなさなかった空気システムだった。


 ネット上でも「一度も爆発せずにエンディングを迎えた」とか「存在意義が分からない」と散々ネタにされていた。

 一人に集中すると、だいたい刺されて終わるからだ。


 修羅場は一部のマニアには受けてたけど……。


 しかし、好感度下げイベントを制御しきっている今ならば、大きな助けになるはずだ。


 しかも、この爆弾には“ルートフラグに一切干渉しない”という妙なこだわりがあった。

 つまり、爆弾が発動して好感度が下がっても、誰一人ハーレムルートから脱落しないし、出現もし続ける――

 ハーレム状態を維持したまま全員の好感度だけを下げる、唯一の手段なのだ。


 ――だけど、問題はここから。


 ハーレムルートで爆弾を発動させるのはかなり難しい。

 なにしろ嫉妬度はイベント発生でリセットされてしまうからだ。


 やるなら、攻略対象全員の嫉妬ゲージを一気に溜めて、一斉に爆発させる“速攻”をかけるしかない。

 胃薬を握りしめて私は考える。


「――やるしかない。嫉妬爆弾、発動計画。」


 果たして計画はうまくいくのか――

 高まる胃痛の波に揉まれながら、私は決意を固めていた。



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