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第三話 ハーレムルートしかゆるされない

 ――十二週目、突入。


 私、悪役令嬢イリーナ・フォン・ヴァレンタイン。

 バグ死阻止に人生のすべてを費やし、気づけばもう十二回目の春。胃薬がそろそろ効かなくなってきた。


 これだけループしても分かったことは、たったひとつ。

 この世界でヒロイン・エミリアを救うには、ハーレムルートを維持し、全員の好感度を下げ続けることが最低条件だということ。


 一人でもハーレムルートを外れた瞬間、そのキャラは完全に出現しなくなる。

 そうなると好感度下げのチャンスは二度と巡ってこない。

 でも、バグだけは着実に仕事をこなす。時間経過でじわじわと好感度は上昇し、いずれMAXに達したその瞬間――

 バグ死ENDが確定する。


 つまり、出現しなくなったキャラの“死のカウントダウン”はもう止められない。


(どんなに残ったキャラの好感度を下げ続けても、

 一人でも消えれば詰み確定……。なにこれ、希望どこ?)


 かつては最強のバディだった牛――マーベリック。

 イベントでイケメン生徒会長を毎日ぶっ飛ばす伝説の働きぶり。

 けれど、あまりにも頼りすぎたせいで――


 牛は一度過労死した。


 ある日、イケメンをぶっ飛ばした直後、

 その場で力尽きて崩れ落ち、

 周囲の生徒たちに「マーベリックーッ!」と泣かれ、

 翌日には裏牧場の片隅に「慰霊碑」が建っていた。


 それ以来、私はマーベリックに頼り切るのをやめた。


 それでも、“好感度下げイベント”は容赦なく連打しなければならない。


 イケメンに水をぶっかけさせ、

 大事な本を破かせ、

 高価な壺を粉砕させ……

 しかも、これらはすべてヒロイン・エミリア自身の手でやらせるしかない。


(本当にごめん、エミリア……。

 守りたいのに、君にこんな役回りさせるなんて……)


 しかしエミリアは――

 かなりの天然で、イリーナが誘導しなくても、割と素でやらかしてくれる。


 水を持ったままよそ見して生徒会長の頭にぶっかけたり、

「大事な本は気をつけて」と念押しした瞬間にビリッとやったり、

 壺は何もしてなくてもなぜかエミリアの周りだけ割れたり。


(むしろ誘導してない方が事件多発してないか、これ……)


 イケメンたちはその場では本気で怒る。

「ふざけるな!」「弁償してもらうぞ!」「これは学園の宝なんだぞ!?」

 毎日のようにヒロインへ本気でキレる。


 ――だが、そこはバグゲー。


 数日も経たないうちに、バグ補正で何事もなかったかのようにエミリアに接してくるイケメンたち。


「お茶に誘ってもいいかな?」

「昨日のことは水に流そう」


(意味ない! バグ強すぎ! この世界、努力が報われなさすぎる!!)


 それでも私は、

 胃薬片手にブラック労働のごとくスケジュール帳を好感度下げイベントで埋め、

 全イケメンの恨みとバグ仕様と戦い続けている――。


 ……結局、この世界では何をやっても全部バグに押し流される気がしてならない。

 それでも私は、明日もやるしかないのだ。


 あ、マーベリックぅぅぅうぅううううう!!!!!



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