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第一話 ヒロイン、パン食ってんじゃねえぞ

 朝の光が差し込む学園の通用門前。


 私、イリーナ・フォン・ヴァレンタイン。悪役令嬢として、この世界で最初に立ちはだかる“運命のイベント”が、今まさに始まろうとしている。


 乙女ゲーム『ローゼリアの仮面舞踏会』――

 そのすべては、ここから動き出す。


 “これが原作で最初に発生する、ベタすぎるイベント”


 【ヒロインがパンを食べながら走って登校し、攻略対象イケメンにぶつかる】


 ……いやいや、さすがにいまどきパンくわえてイケメンとぶつかるとか見ないわ。令和の時代にこのイベントをねじ込んできた開発者、どうかしてる。


 画面の外から眺めていた時は「懐かしすぎて逆に新鮮かも」なんて笑ってたけど、いざ自分がその現場にいるとなると、笑いごとじゃない。


 なぜなら――


 この出会いイベントを皮切りに、ヒロインと攻略対象の好感度はバグで暴走する。

 放っておけば一週間後には好感度MAX、バグ死END(ヒロイン刺殺)一直線なのだから!


 この世界の運命を変えられるのは、たぶん今だけ。


 私は正門前でスタンバイしつつ、

 イケメン生徒会長レオンハルトの登校ルートにも、入念な妨害トラップを仕掛けておいた。


 原作でも“お邪魔虫”として有名だった暴れ牛――

 学園裏牧場のトラブルメーカー、マーベリック。

 なぜかこの牛、作中ではレオンハルトにしか突撃しない謎仕様。

 私は前夜から確保し、合図ひとつで通学路へ放つ準備を整えていた。


 今日もそのタイミングがやってきた。


「うおっ!?」「牛!? なぜ校門前に牛!?」「レオンハルト様ー!?」


 生徒会長レオンハルトは手に持っていた本を落とし、暴れ牛マーベリックに華麗に吹っ飛ばされて泥まみれ。

 ギャラリーは騒然だが、被害者は例によってイケメンただ一人。


 (ざまあみろ……! これが積年の恨みってやつだ!出会いイベントどころか、今日は牛とでも恋でもしてなさい!)


 任務を終えたマーベリックは、周囲の生徒には見向きもせず、悠々と裏牧場に帰っていく。

 私とマーベリックの視線が一瞬交錯――

 私はサムズアップ。

 牛も「モー」と鼻を鳴らし、「任務完了」とでも言いたげにアイコンタクトを返してきた。


 (ナイスだ、マーベリック。今日も最高の働きだったぞ……)


 これで“原作一発目の出会いイベント”は物理的にも完全阻止!


 だが、もう一つ大事なターゲット――ヒロイン、エミリア・リュミエールだ。


 遠くから小柄な少女がパンをくわえながら猛ダッシュでやってくる。

 私は彼女の前に回り込むと、ロングスカートを翻して全力で立ちはだかる。


「没収っ!!」


 ヒロインのパンを鮮やかにひったくる。


「えっ、あ……!?」


 勢いをそがれたエミリアは、よろめきつつも私の腕の中に突っ込んできた。


「お、おはようございます、イリーナ様……」


「エミリア・リュミエール。公の場でパンをくわえたまま走るなんて、令嬢としてあるまじき振る舞いですわ!」


 内心(バグ死阻止のためよ、ごめんね!)と絶叫しつつ、

 私は“悪役令嬢ロール”を全力で貫く。

 目線は冷たいが、心はエミリアだけにはひたすら甘い。


 パンを失ったエミリアは、しょんぼりとうつむく。

 私は心の中で(本当にごめん……でも、絶対守るからな)と固く誓うのだった。

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