表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

最終話 バグ×バグ=正常化

 世界が色を失い、音を失い、時が止まった。


 誰も動かず、何も変わらず――

 イリーナもエミリアも、灰色に凍りついた世界に二人きりで取り残されていた。


 その静止した教室に、突然――


「モォ、お願いだからループしないでえええええ!」


 切実すぎる、どこか懇願めいた牛の叫びが響き渡る。


 次の瞬間、教室の壁が轟音と共にバリバリと砕け、

 まばゆい光の中から、伝説の牛――いや、この世界の神・マーベリックが次元の壁をぶち破って現れた!


 筋肉隆々、黒光りする体躯、知性に満ちた金色の瞳。

 神々しい牛の姿に、止まっていたはずのイケメンたちも女子たちも、

 ピクリとも動けず凝視するしかない(いや、止まってる)。


「イリーナァ!!」


 牛神は教壇に跳び上がるやいなや、イリーナのもとにズンズン歩み寄り、サムズアップ。


 突然、イリーナの胃が「ゴロゴロ…」と音を立てて疼く。

 その瞬間、脳裏にフラッシュバックする――

 これまでの周回で何度も胃痛で倒れ、ふかふかと温かい“何か”に包まれて復活してきた数々の記憶。


 牛神マーベリックは誇らしげに宣言する。


「実は……お前の胃はもう何度も死んでいた! そのたびに、ワシの胃を分けてやっていたのだ!

 牛の胃は四つもあるからな!!」


 イリーナは思わず崩れ落ちる。


「……それってつまり、私はもう牛神の胃袋でできてるってこと……!?」


「そうじゃ!ワシこそが、この世界の真の神。

 イリーナ、お前をこの世界に転生させたのもワシじゃ――

 だが!もう、胃の残機がないんじゃ!!

 頼むからループしないでくれぇぇ!!」


 イリーナ呆然。

 エミリアも「えええぇ……」と牛神にぺこぺこ頭を下げるしかない。


 ちょうどその時、

 止まっていた世界の時が、ゆっくりと動き出す。

 空に色が戻り、教室にはざわめきが戻り、イケメンたちは「俺、何してたっけ?」と首をかしげて立ち上がる。


 システム音声が最後に叫ぶ。


『管理不能!神格エンティティ確認!バグ修正権限を……も、持ってかれたぁぁ!!』


 牛神マーベリックはイリーナとエミリアの頭を優しく撫でて、

「これで本当に、平和になったはずじゃ。もう無茶はせんといてな……」としみじみ言い残し、

 虹色の次元ゲートに悠然と消えていった。


 昇降口の外、

 イリーナは大きく息をついて天を仰ぐ。


「……はぁ、本当に、胃痛もループももうこりごりよ……」


 そのとき、エミリアはイリーナの手をぎゅっと握り、ふと小さく首をかしげて言った。


「でも私……イリーナ様も、イリオス様も、どっちも好きなんです。

 たまには、あの格好もしてほしいなって……だめでしょうか?」


 イリーナは思わず赤面。


「そ、それは……本当にどっちも同じ私なんだけど……」


 エミリアはまるで気にせず、満面の笑みでイリーナの腕に絡みつく。


「じゃあ、“どっちの私”とも、ずっと一緒にいてくれますか?」


「もちろんです!」


 イリーナは胃を押さえつつ、

 エミリアの天然ぶりにどこか救われる思いで、

 これからの未来にほんの少しだけ希望を感じていた。


 遠くの空、虹色にきらめく蹄の跡が、

 夕焼け雲の中で、しばらく消えずに残っていた――。



これにてどうにか完結です。

初作品なのでぜひ感想などおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ