1話:吟遊詩人の悲哀の叫び
ああ、私もこれまでか──。
街の城壁から溢れ出る魔物を見て、そう思う。
私は、これまで旅をしていろいろな経験を積んだ。
多少は剣の心得もあるし、魔法も少し使える。だが、それだけではこの状況は打破できない。
だからこそ、美しく最後まで唄を奏でよう。そうだ、私は吟遊詩人。
その生き方はこの体に染みついている。気取ったような思考、気取ったような喋り方。
最初は演技としてやっていた。だが、いつしかそれは私自身のものになったのだ。
私は、オクタ。魂にすら染み付いた己が生き方、曲げることは無い。
竪琴を構え、悲哀の唄を響かせる。高く、高く、弦がはち切れんほどに掻き鳴らす。
「神よ、運命は残酷だ──」
もっと高く、もっと速く、壮大な音の奔流に全てを乗せる。
記憶も、魔力も、言葉も、全てをメロディに乗せて──。
「──おお、偉大なる騎士は何をしているのか!魔物が溢れているというに!」
神速に至った旋律にゆったりとした歌声を響かせる。
魔物は迫って来ている。
だが、世界は美しいのだ。
離れたくない。
だから、奇跡を求めて祈り、叫び、信じ。
それでも無理だったのなら諦めよう。
「奇跡よ、汝の存在が真ならば、今姿を現す時!」
((如何にも、私は存在する。))
突如声が聞こえる。驚きこそすれ、恐怖はしない。
湧き上がる希望を乗せて、願いを紡ぐ。
私に、力を!
「なれば奇跡よ、我が唄に力を!」
((よかろう。唄うが良い、神の力を。))
願いは認められた。歓喜の叫びを、轟かせる。
さぁ、祈りよ、唄よ、実を結べ!勝利は我にあり!
「力は得たり!我が眼前の魔物よ、消えるが良い!」
初投稿で拙いにも程がありますが、よろしくお願いします。