婚約破棄から始まる不思議な縁~負けた私と勝ったあの子はどちらもヒロイン?~
「レイラ、悪いけど、君との婚約は破棄させてもらうね」
「…………え?」
突如、婚約者のアルベルト殿下に呼び出された私……公爵家が一人娘であるレイラ・フロリスはあまりにも一方的な宣言に唖然としてしまう。
「あ、それと、僕からの婚約破棄だっていうのは外聞も悪いし、君からって事でいいよね」
「は、え、な、何を……何で…………」
突然の出来事に混乱する私を他所にアルベルト殿下は身勝手を、さも当然に通そうとしてくる。
「何でって……まあ、一言でいうなら真実の愛ってやつに気付いたからかな?」
「し、真実の愛?それは――――」
「アルベルト殿下〜お話はもう終わりましたか~?」
疑問を口にしようとした私の言葉を遮るように現れたのは緩いウェーブのかかった金の髪が特徴の見知らぬ女性だった。
「ああ、ちょうど良かった。彼女が僕の見つけた真実の愛……アンヌだよ」
「ふぇ?あ〜はじめまして~元婚約者さん。私はアンヌ・ミアレです〜この度、殿下の新しい婚約者になりました〜よろしくお願いします〜」
ふわふわとした蜂蜜のような声で私に自己紹介するアンヌ嬢。元婚約者だと分っている相手に平然と挨拶なんて普通はできない。
挑発、あるいは神経を逆なでするのが目的なら別だが、あの様子を見る限り、そういうわけでもなさそうだった。
「あ、新しい婚約者……?そ、それにミアレなんて家名は聞いた事が……」
「彼女は貴族ではないのだから聞いた事がないのは当然だろう?やれやれ、そんな事も分からないのかな?」
「なっ……!?」
やれやれと呆れた表情を浮かべるアルベルト殿下だったが、そんな事はどうでもいい。ミアレ嬢が貴族ではないという事の方が問題だ。
今回の婚約破棄自体も凄く問題だし、即、他の相手と婚約しているのも問題だけど、その相手が平民というのは論外。王子と平民の恋なんて読み物としては美談かもしれないが、現実には笑い話にもならない。
そもそも、平民との婚約なんて現王である殿下の父君が許さないはず……それでも明確に婚約者と紹介している以上、ミアレ嬢は認められているという事になる。
「あのぉ、アルベルト殿下?元婚約者さんが物凄く驚いているんですけど~もう話し合いは済んでいるんじゃ…………」
「君が気にする事じゃないさアンヌ。大丈夫、問題はない。婚約破棄に関して彼女がどうこういえる筈もないし、父上にはこれから説明すればいいからね。なに、真実の愛を前にすれば全てが些細な事だよ」
少し怪訝な顔をするアンヌ嬢に対して酔い痴れるように語るアルベルト殿下。元々、殿下は全てが自分の思い通りになると思っている節があったけど、これはあまりにも酷すぎる。
「……こ、婚約破棄した理由は分かりました。けれど、その、私では駄目だったのでしょうか?真実の愛の相手が――――」
「論外だね。だって君、可愛くないから」
突きつけられたのはどうしようもない理由。自分が可愛くないなんて最初から分っている。
両親のどちらとも違う気味の悪い白髪に血のような赤い目、不健康に見える青白い肌……殿下にも何度か言われた覚えがある。
もちろん、私だって何もしなかったわけじゃない。
染料を使って髪の毛を染め、流行のファッション、青白い肌を隠せる化粧、立ち振る舞い方、自分にできる事は何でも試して少しでも殿下の隣に相応しくなれるように努力したつもりだった。
けれど、どうやらその努力が足りなかったらしい。
結果として殿下の愛はアンヌ嬢に向けられ、私は可愛くないと切り捨てられてしまった。
「……殿下〜今の言葉はあまりに――――」
「ッ……!!」
アンヌ嬢が何かを言いかけたけれど、耐えられなくなった私は二人に背を向けて走り出し、その場を後にする。
そこから先はどう帰ったかもう覚えていない。
気がつけば自分の部屋のベッドで枕に顔を埋めて泣き腫らしていた。
ずっとずっと殿下のために努力してきたのにどうして?
私が可愛くないから?
全部全部私が悪いの?
ぐるぐると、堂々巡りをし、浮かんでは消えるどうしようもない感情。
殿下から真実の愛を理由に婚約破棄を告げられた……この事実はどう泣き喚いたところで変わらない。
「…………殿下のために頑張ったのになぁ……これからどうしよう」
どれくらい泣いていただろうか。涙も出尽くし、頭の中のぐるぐるとした思考も幾分か晴れ、少しだけすっきりした私は誰に聞かせるでもなく、一人呟く。
私はこの外見も相まって、小さな頃から家に引きこもって魔法の研究ばかりしていた。
幸いというか、私には魔法の才能があったらしく、研究すればするほどにのめり込んだ。
両親も最初こそ良い顔をしなかったけど、私がその研究で成果を挙げ始めると、何も言わなくなり、このまま大好きな魔法に関わる仕事をして生きていくんだとなんとなく思っていた。
そんな私の転機は15才になった頃、王家との繋がりを強くするために決まったアルベルト殿下との婚約からだ。
容姿は気味が悪く、これまで魔法の研究一辺倒だった私に殿下との婚約の話が持ち上がったのは偏に国の安寧のため。
でも、この婚約がきっかけで私は魔法の研究をする機会がめっきりと減り、殿下のために必要な教育、気に入られるための努力に時間を割くようになった。
魔法の研究を続けたいという気持ちはあったけど、この婚約が重要なものだと理解していたし、公爵家の令嬢という立場、そしてなにより、育ててくれた両親のためにも自分の我儘を通すわけにはいかないと分かっていたから何も言わなかったし、言えなかった。
正直、殿下は最初から私の事を気に入ってはなかったと思う。婚約破棄の際に突きつけられた可愛くないというのが殿下の気持ちの全てという事だろう。
「――――あの、お嬢様?その、大変申し上げにくいのですが、旦那様がお呼びです」
ノックと共に聞こえてきたのはメイドの申し訳なさそうな声だ。たぶん、婚約破棄の件でお父様が私を呼びつけたけれど、中から泣いている声がしていたから遠慮していたのかもしれない。
「……気を遣わせたみたいでごめんなさい。今行くから」
ベッドから立ち上がり、呼ばれるままにお父様の書斎へ向かう。怒られるだろうか、失望されるだろうか、そんな不安を抱えながらドアの前に立ってノックをすると、中からお父様の声が返ってくる。
「……失礼します。お父様、この度は――――」
中へと足を踏み入れ、開口一番、頭を下げようとした私だったけど、いきなり誰かに抱きしめられてしまう。
「ごめん……ごめんね、レイラちゃん……今までずっと我慢してきたんだよね?本当にごめんね…………」
「お母様……?」
涙を流しながら私を抱きしめるお母様の行動に驚いていると、今度はお父様がこちらを見つめ、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「……私からも謝らせてくれレイラ。魔法の研究を続けたがっていたお前を無理矢理、婚約させるような真似をしてしまった」
「へ?え、その、一体何が…………」
困惑する私にお父様が語ったのはあの場から去った後の顛末。あの後、殿下の父君……現国王から書状が届いたらしい。
一方的な婚約破棄は愚息の身勝手な行いで国王自身は関知していない事とそれに関する謝罪の言葉が綴られており、今回の件で私を含む、関係者の責任は一切問わないとの事だった。
「――――前々からアルベルト殿下の振る舞いや言動には目に余るものがあった。しかし、王子だから、王家と我が家……ひいては国の安寧のためだと見て見ぬ振りをしてしまった……公爵である前にお前の父親なのに……」
「……私も同罪よ。主人が決めた事だからと受け入れてしまっていたもの……けど、ようやく目が覚めた。私達の大事なレイラちゃんを可愛くないなんて……いくら殿下でも許せないわ」
「お父様……お母様…………」
自分がきちんと大切にされていた事を知り、枯れ果てたと思っていた涙が目尻に浮かんでくる。
……あれ?でも、私が戻ってきてまだ一日と経ってないのにどうして書状が?それにどうしてお母様があの場でのやり取りを知っているの?
ふと湧いてきた疑問を考えるよりも早く、その答えが私の前に現れた。
「――――先程振りですね~レイラさん~」
「なっ……あ、貴女がどうして……?」
聞き覚えのあるふわふわした声と共に書斎から繋がる隣の部屋の扉を開け、現れたのは殿下の新たな婚約者である筈のアンヌ嬢だった。
「どうして~と言われると返答に困るんですけど~……」
「……信じられないかもしれないが、こちらのアンヌ嬢が国王様からの書状を持ってきてくれたんだ」
「え、えーと……一体どういう……?」
困惑しながらも尋ねると、どうやら私が走り去った後、殿下に詰め寄り、全ての事情を聞いた彼女はその足で国王の元まで赴き、今回の件の事を話して書状を受け取り、ここまで届けにきたとの事だ。
普通に考えて、貴族でもない女の子が国王に謁見し、書状を受け取って公爵の屋敷にやってくるなんてありえない。
一歩間違えれば不敬罪で処刑されるかもしれないのに、そこまで動く事ができるなんて、一体、どんな胆力と行動力をしているのだろかと素直に感心してしまう。
「――――殿下は私を婚約者にするといった時、今の婚約者には話して分かってもらうから問題ないといったんですよ~?それなのにあんな一方的に、それもレイラさんに酷い事まで言って~……私、我慢できなくなったんです~レイラさんはこんなにも可愛いのに~」
話を聞くと、彼女……アンヌ嬢は殿下の事を愛しているから婚約者になったわけではなく、たまたま立ち寄った村で見初められ、猛烈なアプローチと、彼女の実家に金銭的な援助をするという条件でそれを受けたらしい。
だから殿下の詳しい人となりは知らないし、婚約者になるという事がどういう事かもいまいち理解していなかった。
「ええっと、アンヌ嬢?それで貴女は――――」
「アンヌ嬢なんて堅苦しい呼び方じゃなくてアンヌでいいですよ~それよりも、レイラさんはあの〝誰にでも使える魔法書〟の著者なんですよね~?私、あの本のおかげで魔法を使えるようになって~……」
彼女の言う〝誰にでも使える魔法の書〟というのは私が書き、大衆向けに出版した本だ。内容はタイトル通り、誰にでも魔法が使えるように簡略化したやり方や理論を書き綴ったもので、初めて出した魔法研究の成果だった。
そっか……あの本を……って今はそんな事よりも聞かないといけない事が…………
急に話題を変えられて困惑する私を他所に彼女は話を続けようとする。
「――――ご歓談中失礼します。旦那様、アルベルト王子殿下がいらっしゃいました。随分と慌てた様子でしたが、どうなさいますか?」
予想外な事にアンヌ嬢の話を止めたのは不意の来訪を告げる知らせだった。
そして、その来訪の主は他ならぬアルベルト殿下……普通なら婚約破棄したその日の内に相手の家へやってくるなんて非常識な行動はできないのだが、そこは悪い意味で流石と言わざるを得ない。
「……殿下を相手にして流石に追い返すわけにはいかないだろう……仕方ない、お通ししろ」
「…………承知いたしました」
ここに来た理由……それは十中八九、アンヌ嬢がいるからだ。
分からないままに詰められ、怒ってどこかに行ってしまった彼女を追いかけてきたのだろう。
「――――君達、勝手に人の婚約者を拐かすなんて……公爵家といえど、ただで済むとは思わない事だ」
「「「「…………はい?」」」」
いきなり乗り込んでくるなり、そんな事を言い出したアルベルト殿下に全員がそんな声を上げた。
「レイラが婚約破棄された腹いせにアンヌを連れ去ったのだろう?全く、それでも我が国の貴族か?嘆かわしい」
あまりに酷い勘違いを前に誰もが訂正できず、唖然としてアルベルト殿下に信じられないもの見るような視線を向ける。
「さあ、アンヌ、怖かったろう?僕と一緒に帰ろう?」
「――――ふざけないで」
「…………え?」
自らの考えを何も疑わず、手を差し伸べたアルベルト殿下に対して、アンヌ嬢の返答は今までとは違う怒気の込もった言葉だった。
「私は自分の意思でここにきました。断じて連れ去られたわけじゃありません」
「え、あ、で、でも、どうして君が…………」
「今回の件、知らなかったとはいえ、私のせいでレイラさんを傷つけたんです。そのために動くのは当然でしょう?」
「それは君のせいじゃ…………」
「間接的に私のせいですよ。まあ、でも、全ての原因は殿下です。正直、ここまでだとは思いませんでした。端的に申し上げると、殿下は女の敵です。ああ、言い忘れていましたけど、というか言うまでもなく、殿下との婚約は破棄させていただきますね」
さっきまでのふわふわした口調が嘘のように殿下へ鋭い言葉を並べ立てるアンヌ嬢。その豹変ぶりに驚く殿下だったが、流石に婚約破棄を突きつけられては黙っていられなかった。
「ど、どうしたんだアンヌ?婚約破棄なんて……そうか、レイラ達に脅されているんだね?優しい君がそんな暴言を――――」
「どこまで頭がお花畑なんですか貴方は。私は誰が相手だろうと脅しなんかには屈しませんし、出会って間もないのに優しいなんて決めつけている時点で私の表層しか見ていないと言っているようなものですよね?そんな人と一緒になっても、幸せになる未来なんて見えませんよ」
「っ……僕との婚約を破棄して本当にいいのか?実家の支援だってなかった事に――――」
「そこでそんな言葉が出る時点で論外ですし、さっきも言った通り、私は脅しには屈しません。でも、そうですね……貴方にはこう言った方が良さそうです…………私は真実の愛を見つけたので婚約破棄させていただきます。貴方の返事は受け付けません」
「なっ……!?」
皮肉めいた言葉を前に目を見開いて言葉を詰まらせるアルベルト殿下。それに対して勝ち誇った表情を浮かべたアンヌ嬢はあっかんべーと舌を出してから私の方に近付いてくると、そのまま腕を絡ませてきた。
「え、あ、何を…………」
「私はレイラさんと結婚します~だから殿下の存在はのーせんきゅーってやつですよ~」
「は……?」
「え?」
「ええ……?」
突飛な発言に本人を除く全員が唖然として声を漏らす中、ようやく言葉を呑み込んだアルベルト殿下が顔を真っ赤にして憤慨し、怒りのままに口を開く。
「ッ一体どこまで僕を馬鹿にするつもりだ!どいつもこいつも……僕は王子だぞッ?将来の国王に向かってこんな事をして……覚悟はできているんだろうな!」
まるで癇癪を起こした子供のような行動と発言だけど、それを言っているのが一国の王子であるアルベルト殿下である以上、冗談と聞き流す事はできない。
公爵家である私の家はともかく、貴族ではないアンヌ嬢の家はいとも容易く潰されてしまう可能性だってあるのだから。
「……殿下。恐れながら、今の発言は公爵家としては無視のできないものですが――――」
「うるさい!いいか、覚悟しておけよ?僕に逆らう奴や恥をかかせる奴はみんな処刑してやる!!」
諫めようとするお父様の言葉に聞く耳を待たず、捨て台詞のようにそう言うと、アルベルト殿下はそのまま凄い勢いで部屋を出ていってしまった。
「……ええと、これはどうしたら?」
「ひとまず悪は去った〜と言う事でいいんじゃないですか〜それより〜私の告白に返事をもらってないんですけど〜?」
「ええ……あれって本気だったんですか?正直、そんな事を言われても困るというか……」
「またまた照れちゃって~…………駄目ですよ。今更、退くに退けないんですから……逃がしませんよ?」
「ひっ…………」
「なーんて、冗談ですよ~冗談~」
そう言って彼女は笑顔を浮かべているが、どう見ても目が笑っていなかった。
もしかして私、凄く面倒くさい相手に目を付けられたんじゃ……
未だに腕を絡めたまま笑う彼女を目にしつつ、私は大きなため息を吐くのだった。
あの後、アルベルト殿下は城に戻って国王に今回の件を訴え出ようとしたらしいんだけど、当然、そんなものが通るはずもなく、全て却下され、殿下は一連の騒動の責任を負って王位継承権を失い、今度、他国との政略結婚をする事になったらしい。
「う、嘘だ…………この僕が……政略結婚の道具だなんて…………うわぁぁぁぁッ!!」
婚約破棄騒動の責任にしては重く見えるかもしれないが、今までの素行、そしてなにより、守るべき民を威圧するような言動や行動が指導者として相応しくないと判断されたようだ。
まあ、婚約破棄をされた今となってはもう私には関係のない事だけど。
「レイラちゃん~こっちの資料はまとめておくね~」
「あ、ありがとうアンヌさん……それが終わったらきゅ、休憩にしようか?」
「はーい、それじゃあ終わったらお茶を入れるね~」
婚約破棄騒動の後、結局、アンヌ嬢……アンヌさんを無下にできなかった私はそのままなし崩し的に受け入れてしまった。
お父様もお母様もアンヌさんの事を気に入ってしまい、家族共々、屋敷に住まう事になり、婚約者……といかないまでも、それに近しいと言われても過言じゃない関係だと傍からは見られている。
私自身は婚約の影響で離れていた魔法研究を再開し、少し不本意ながらも、アンヌさんと一緒に研究三昧の日々を過ごしていた。
結婚やら恋愛とは程遠いけれど、意外にもアンヌさんと過ごす研究の日々は楽しく、以前よりも充実した毎日を送っている。
「……そういえばあの時、アンヌさんは結婚するなんて言ってたけど、今にして思えばあの場の空気を紛らわせるための冗談だったんですよね?」
「うふふ~…………冗談に聞こえましたか~?」
「え?」
「さーて~挙式はいつにしましょうか~?」
「え?え?じょ、冗談……ですよね?」
「うふふふふ~」
真偽の分からない笑顔で誤魔化されてしまった気がするけれど、深く考えない方が良い気がするので私はそれ以上、何も言わなかった。
――――数年後、この国に魔法革命が起きる。
貴族も、平民も分け隔てなく、魔法が使えるようになり、それを利用した魔道具の普及も急速に進んで国民の暮らしも物凄く豊かになった。
それの根幹を為したのは二人の女性。
一人は公爵家に生まれ、王子殿下と婚約するも、奇異な外見から婚約破棄を告げられた貴族令嬢。
一人は一般の出ながらも、王子殿下に見初められ、婚約し、婚約破棄を告げ返した平民の少女。
王子殿下に振り回されながらも、婚約破棄が繋げた不思議な縁はこの国に多大な恩恵をもたらし、今では美談として後世に語り継がれている。
実はこの話自体が作り話であるとか、自作自演であるとか、この二人は互いに愛し合っていたから邪魔な王子殿下を排除したとか、そんな噂も流れたけれど、真偽の程は誰にも分からない。
分かっているのは生涯、この二人は互いに独身を貫いたらしいという事だけ。
まあ、それさえも確かな情報ではないけれど。
当人達がどう思っているかは知る由もないが、彼女達が婚約破棄にも負けず、その後も幸せに暮らしたのは言うまでもない事だろう。
――――ミレイヌ・フロリス 著 婚約破棄から始まる魔法革命より抜粋――――