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第94話 一緒に楽しめるっていいな。

 その後も僕たちは、数々の村や集落を回っていった。

 そして回った先々で契約を交わし、品種改良済みの種籾をお裾分けして、おいしいごはんの炊き方と米レシピを伝授。お米の勢力拡大と普及を図っていった。


 領主であるアリスティア家が本腰をいれている事業ということで、以前はフローレス商会と敵対していた商会も、今やほとんど協力関係にある。

 また、ファルムが廃村となった経緯も、村民がどうなったかも広まっているらしく、クライス家に手を出そうとする者もいなくなった。

 それどころか、貴族すらうちと良好な関係を築こうと、たびたび手土産付きの使者を送ってくる。逆に申し訳なく感じるくらいだ。


「ねえフェリク、あの実……梅、だっけ。あれっていつ食べられるの?」

「うーん、梅干しは1か月くらいで一応食べられるようになるけど、半年くらい置いた方がおいしいかな? 梅シロップは10日もあればできるよ」

「本当!? じゃあ梅シロップの方はもうすぐね!」


 キラキラとした目で梅シロップの瓶を見つめるアリアに、僕の心まで幸せで満たされていく。


 ――作る過程も一緒に楽しめるっていいな。

 アリアって本当、それなりにお嬢様なはずなんだけど、そういう感じが全然しないんだよな。いい意味で。

 まあ、こんなこと本人に言ったら怒るだろうけど!


「フェリク、どうかした?」

「え? ああいや、何でもないよ。アリアとこうした時間を過ごせて嬉しいなって思ってさ」

「へっ!? えっ、なっ――!?」


 アリアは一瞬で耳まで真っ赤になり、口をぱくぱくさせている。

 なんだ? 僕、何かおかしなこと――


 言ってたあああああ!!!


「あっ!? いや! その、べつに変な意味じゃなくて! 好きを共有できるっていいなって……意味でして……」

「わ、分かってるわよそんなことっ! というかフェリク顔真っ赤よ? まったくしょうがないわねっ」

「ええ……アリアこそ」

「……何か言った?」

「……いや、何もないですごめんなさい……」


 先に言ったのはアリアなのに!


「お、何2人して赤くなってんだ? 早めの青春か?」

「だめよ、こういうのはそっと見守るのが親でしょ?」


 いつの間にか両親がすぐ近くまで来ていた。死にたい。


「なんだい、みんな楽しそうだね?」

「おじさん……! な、何でもないよっ! それより次の村に行くんでしょ? 早くしないと今日中にたどり着けないよっ」

「――ふふ、なるほど? ……そうだ、私はクライスさんたちと話があるから、アリアはフェリク君の馬車に乗りなさい。フェリク君、ないとは思うけど、うちの娘に変なことをしたら社会的に殺すからね?」

「はあ!? し、しないわっ!」


 思わず素で全力否定してしまった。

 こいつに言われるとシャレにならなくて怖すぎる!


「それじゃあクライスさん、行きましょうか」

「お、おう」

「それじゃあフェリク、またあとでね~」


 アリア父は含みのある笑みを浮かべ、うちの両親を連れてさっさと馬車へ乗り込んでしまった。


「な、なんだったの? というか変なことって何?」

「いやあ、本当なんだろうねー? とにかく馬車に乗ろうか」


 まったく本当、これだから大人は!!!

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