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第9話 「干し肉とせりのおにぎり」は革命的で一大事らしい

 田んぼに行くと、父はまだ作業を続けていた。

 稲は収穫時期が近づきつつあり、風になびいてサワサワと揺れている。

 まだまだ緑が強く、黄金色になるにはもう少しかかりそうだが。

 それでも穂先には既に若い米が実っていると思うと、喜びが溢れてにやけそうになる。


 ――圧巻だな。

 こんなにも素晴らしい光景を、何とも思わずに見てたのか、僕は。

 知らないって恐ろしい。


「父さん、そろそろ休憩の時間だよ」

「――ん? おお、もうそんな時間か。というかフェリクが知らせに来てくれるなんて珍しいな」

「今日のお昼ごはんは、僕も手伝ったんだよ!」

「お、じゃあ今日もうまいカユーが食べられるのか」

「ううん。今日はこれ! はいっ!」


 僕は、塩おにぎり、それから干し肉とせりのおにぎりの入った弁当箱を手渡す。

 1つくらいはおかずも、ということで、母が卵焼きも作ってくれた。最高か!

 父は弁当箱を開けおにぎりを見てぽかんとしている。無理もない。


「こ、これは……? もしかして米でできてんのか? やけに白いしツヤツヤだが……こんなに水分が少なくて食えるのか?」

「いいから食べてみてよ! まずは真っ白いやつからね!」


 父は不審がりながらも手や顔を洗いに行き、戻ってきておにぎりに手をつける。


「や、柔らかい!? いったいどうなって――」

「米をスキルで精米して、鍋で炊いてみたんだよ。塩のみのシンプルな味つけだけど、ごはん本来の甘みが引き立っておいしいよ!」


 父は、自分の育てた米が見たことのない姿になっているのを不思議がりつつも、恐る恐る口に含んだ。そして。


「――う、うまい! は? え? なんだこれ? 臭みが一切ない。それどころか、甘みとうまみがすごいぞ」

「ふっふっふ。だろ? これがスキル【品種改良・米】と【精米】を掛け合わせた力だよ。昨日の米の、ぬかを落としたんだ」

「米の、ぬか……?」


 僕は米の仕組みについて、父にも説明してあげた。


「うちの米にこんな革命的なうまさが潜んでたなんて……。今まで食ってた米はなんだったんだ。この干し肉とせりが入ったタイプも、こんなにうまいもんを食ったのは生まれて初めてだ。卵焼きまでいつもよりうまく感じるよ」

「えへへ。気に入ってくれてよかった!」


 父は3つあったおにぎり、それから卵焼きをあっという間に完食した。

 どこの世界でも、やっぱりおにぎりと卵焼きは合うんだな!


「――フェリク、これは一大事だぞ。早速次に売りに行くときまでに、この新しい米の売り出し方を考えよう。価格も考え直さなきゃな。でないと、うちの小さな田んぼで作る米なんかあっという間だぞ」

「うんっ! たくさん売って、もっともっとおいしいお米がたくさん作れるようになるといいなっ」


 ――そうだ! せっかくだし、アリアにも持ってってやろうっと。

 昨日ふわふわのパンをくれたお礼、まだできてないし!

 アリアはまだ子どもだから、せりと干し肉より違う具材がいいかな?

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