表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/133

第89話 旅立ち、そしてメイド・ミアの過去

「――それじゃあ、準備はいいかな?」


 翌日、僕たちはアリスティア領を巡る旅へ向かう準備をしていた。

 馬車は僕と僕の両親が乗る馬車、アリアとアリア父の馬車、メイドや使用人が乗る馬車が2台、荷馬車2台と、計6台ある。けっこうな大所帯だ。


「こ、こんな大がかりな移動して大丈夫かな。襲われたりしない?」

「ああ、大丈夫だよ。この旅はアリスティア様が管理されているからね。あちこちに戦闘スキル持ちの護衛が配置されている。それにうちから連れてきた使用人とミアも、戦闘スキル持ちだよ」

「えっ、ミアも!?」

「ああ。彼女は複雑な境遇で育った子でね、元は奴隷だったんだ。でも8歳で授与されたのが戦闘スキルだったことから、特別な訓練を施されてアリスティア様の元に献上されたらしい。愛玩用兼、護衛奴隷としてね」


 ミアにそんな過去があったなんて……。


「でもアリスティア様は、屋敷の使用人や衛兵はちゃんと雇うのが信条でね、奴隷は置かないんだ。だからメイドに昇格となって、今にいたる」

「そ、そうだったんだ……」


 アリアも言ってたけど、メイドにはいろんな境遇の子がいるんだな。

 もしかしたらミアを僕に付けたのは、行き場をなくした者同士分かり合えれば、と思ったのかもしれない。

 明るく表情豊かなシャロももちろん大好きだけど、静かに寄り添ってくれるミアにもいつも救われているのだ。


「だから――ってわけじゃないけど、ミアが君といて楽しそうに笑ってるのを見てると、私まで嬉しくなるよ。彼女が連れてこられた当初を見ているからね」


 心の底から嬉しそうに話すアリア父を見て、やっぱりこの男はすごいな、と思わずにはいられない。

 彼と出会えた僕は、奇跡レベルに恵まれてるんだろうな。


「僕もおじさんのような大人を目指して頑張るよ」

「ええ? なんだい急に。フェリク君はもう、私なんかよりずっとすごいじゃないか。むしろこっちが見習いたいくらいだよ」


 そう、アリア父はおかしそうに笑う。

 この天然人たらしめ!


「ちょっとパパ!? ずるい自分だけフェリクとおしゃべりなんてっ! 私には早く準備しなさいって言ったくせにっ!」

「ああ、悪い悪い。すぐ行くよ。……それじゃあフェリク君、またあとでね」


 アリアに怒られ、アリア父は笑って馬車へ入っていった。


「フェリク、おまえもそろそろ」

「うんっ、今行く」


 馬車に乗り込むとドアが閉められ、しばらくして動き出した。


「こんな立派な馬車で長旅なんて、初めてだな」

「そうね、わくわくするわね。フェリクが作ってくれたお弁当も楽しみだわ」

「お弁当っていっても、簡単なおかずとおにぎりだけどね。でもおにぎりは、冷めても固くなりにくいように工夫してるんだ。きっとおいしいよ」


 朝、メイドさんや使用人とともに、大量のおかずとおにぎりを用意した。

 それらは腐らないよう、すべて冷却庫に入れてある。


 ――そういえば、農場を見て回ってて精米機を披露するのを忘れてたな。

 次の村に着いたら、そのタイミングで見せてやろう。


「そういや母さん、お米に勝手に名前つけただろ」

「ああ、そうだったわ。すっかり忘れてた。最初はもっちり系を『フェリク米』、しっかり系を『クライス米』にしようと思ったんだけど、お父さんが反対するから……。お母さんは今からでも、変えてもいいと思っt」

「『絹肌』と『恵みの宝石』でお願いします!!!」

「ええ~」


 反対した父さんよくやった!!!

 というかなんでもっちり系が僕の名前なんだよ!

 せめてしっかり系にしてくれ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ