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第81話 クライス家の勢いが止まらない

「す、すごい……本当に工場だ……」


 工場内はどこもかしこも本当に立派で、最新鋭の魔導具によって温度や湿度までしっかりと管理されている。

 クライス工場専属の魔導具士も雇っているというから驚いた。


 魔導具師は、スキル【魔導具師】を所有している人しかなれない特殊な職で。

 これを授けられれば将来安泰だと言われているものの1つだ。

 つまり裏を返せば、需要が高く、専属で雇うとなるとかなり費用がかかる。


「こ、こんなに大きな工場にして、人をたくさん雇って、大丈夫なの?」

「もちろん。おじさんはこれでもプロだからね。ちゃんと計算したうえでやってるから、心配しなくていいよ。クライス農園も順調だしね」


 アリア父は満足げに笑う。

 どうやらうち(とフローレス商会)は、相当儲かっているらしい。


 というかそうだった、うちの両親も起業したんだっけ。

 フローレス商会の優秀な人が入ってくれてるって聞いたし、心配はしてないけど。

 でも、おじさんの異次元の行動力にはひたすら驚かされるな……。


「ちなみにクライス農園は、元々ファルムだった場所にある」

「――えっ!?」

「いやあ、君がショックを受けるかもしれないからって、アリスティア様に口止めされてたんだけどね。でもいつかは知ることだし、ちゃんと話した方がいいと思って。嫌な思いをさせてしまったらごめんね」


 クライス家暗殺未遂の一件で、領主様の怒りを買った多くの村民は奴隷落ちした。

 ファルムは廃村となり、一部奴隷落ちを免れた村民も行方が分からない。

 その後どうなったのかと気にはなってたけど、まさかクライス農園として生まれ変わっていたなんて……。


「ファルムの家を財産ごとすべて焼き払って、更地にしてクライス農園を作ったんだけどね。その作業を、奴隷落ちした元住民にやらせたらしい」

「…………へ、へえ」

「アリスティア様は普段は温厚だけど、怒らせると容赦ないお方だからね……。フェリク君も、相手が貴族だということを忘れたらだめだよ」

「わ、分かった。気をつけるよ」


 なぜそんなことを僕に……と思ったが、子どもである僕が勘違いしないよう、領主様の裏の顔も見せておこうと思ったのかもしれない。

 今もっとも領主様の近くにいるのは、間違いなく僕だ。


「にしても、君は本当に9歳とは思えないね。スキルを授かってから、一気に大人びた印象がある。昔はもう少し普通の子どもだった気がするけど、今や子どもと話していることを忘れてしまうレベルだ」

「……そ、そうかな。いつもびっくりして言葉が出ないだけだと思うけど」


 あ、危ない……。

 もう少し子どもっぽさを身につけなければ。


「……でも君くらい大人びてると、アリアなんて眼中にないだろうね」


 アリア父は、そうため息をつく。

 いったい何を言ってるんだろう?


「そんなことないよ。大好きだし、家族同然だと思ってるよ。ファルムにいた頃どれだけ助けられたか。それに今だって、アリアが笑ってくれるとほっとするし」

「……そう、なのかい?」

「うん。アリアだけは、僕が全てを失っても側にいてくれるんじゃないか、って思ってるから。……なんてね!」


 うっかり恥ずかしいことを言ってしまった……。

 か、顔が熱い。


「……はは。フェリク君は本当に大人だね。むしろ私が見習いたいくらいだ。まあでも、アリアのことをそんなふうに思ってくれててよかったよ」

「……? うん?」

「それじゃあ工場も一通りまわったことだし、そろそろ戻ろうか。あまり君を独占していると、アリアが不機嫌になりそうだからね」


こうしてこの日、クライス工場が正式に誕生した。

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