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第75話 アリアが可愛くてつらい!!

「フェリク、私は何をしたらいいの?」

「今日はまず、シャロとミアに工房内を案内してもらって。大事なものがたくさん置いてあるから、勝手に触っちゃだめだよ」

「もう、分かってるわよ。私そんなに子どもじゃないわ」


 アリアは不満そうに、ぷくっと頬を膨らませる。

 いや、その言動が既に子どもだけどね!?

 可愛いからいいけど!


「あはは……。あ、そうだ。ずっとここに泊まるわけじゃないだろうけど、一応アリアの部屋も作っておこう。休憩や勉強にも使えるしね」

「えっ? で、でも、私だけそんな特別扱いなんて……」


 アリアは不安を滲ませる。

 恐らく、メイジーにいじめられたのが相当堪えたのだろう。

 アリアはフローレス商会を取り仕切るおじさんの一人娘で、村長の孫でもあった。

 そのうえ容姿も申し分ない。というかかなり可愛い。

 そのためこれまでいじめとは無縁で、むしろ相当チヤホヤされてきたタイプだ。


「幼なじみを使用人用の部屋に住ませるわけにはいかないよ。三階に客室が四部屋あるから、空いてる部屋どれか一つ、好きに使って。アリアには、おじさんの娘として活躍してもらう予定だしね」

「そ、そう? それなら使わせてもらおうかな……」

「うん。それと、午後からグラムスの屋台やお店、レストランをまわる予定なんだけど、一緒に来てもらえるかな。アリアのこと、紹介しておきたいんだ」


 アリアはフローレス家の娘として既にけっこう知られてるけど。

 でも一応、工房の、クライスカンパニーの一員としても紹介しておきたい。


「いいの!? もちろん行くっ!」


 僕の言葉に、アリアはぱあっと表情を輝かせる。

 前も思ったけど、アリアって出かけるのが好きだよな。

 積極的なのはいいことだ。うん。


「それじゃあ僕は、品種改良と精米の仕事があるから。またあとでね」


 そう言ってキッチンを出ようとしたそのとき。


「――あっ、あの、フェリク! 私、こういうの考えてみたんだけど」

「えっ?」


 アリアはポケットから、数枚の紙を取り出した。

 紙を受け取り見て見ると、可愛くデコレーションされた色とりどりのおにぎりがいくつも描かれている。

 その横には、つたない文字で具材の説明も書かれていた。


「え、えっとね、工房を手伝うって決まったときから、私にも何かできないかなって考えてて。それで、フェリクがおにぎりを食べさせてくれてから、おにぎりってケーキみたいで可愛いなってずっと思ってたから、飾ったらもっと可愛いかもって……」


 あ、アリア……。

 あんな大変なことがあったのに、あれからまだ日も浅いのに、こんなに真剣にお米のこと考えてくれてたなんて――。


 アリアの健気さに、思わず目頭が熱くなる。


「で、でも、私が考えつくようなこと、フェリクだってとっくに考えてるよね。ごめんねっ。いらなかったら捨ててくれていいから」


 僕が黙り込んだことに不安になったのか、アリアは恥ずかしそうにわたわたしながらそう付け加える。

 本当に、どこまで可愛いんだこの子は。


「ううん、すっごく助かるよ。ありがとう、アリア」

「本当っ!?」

「うん。ちょうど、こういうオシャレなメニューも欲しいと思ってたんだ。今度時間をとって、二人で実現に向けて研究しよう」

「嬉しい! 私、ほかにももっと考えてみるわ!」


 ああもう。

 大切な幼なじみが積極的にお米と向き合って、こうして提案までしてくれるなんて。こんな幸せあっていいのか!?


 実際、このケーキみたいなおにぎり「ライスケーキ」の開発は、僕自身もいつか実現したいと考えていた。

 おにぎりをフォークで食べるこの世界の人たちを見て、ケーキっぽくデコレーションすればもっと喜ばれるかもしれないと思ったからだ。

 でも結局、いくつか考えた時点でネタが浮かばなくなり、頓挫してしまった。

 僕一人では、これだと思えるレベルのデザインをなかなか思いつけなかったのだ。


 ――でも、アリアがいれば実現できるかもしれない。

 というか。絶対実現してみせる!!!

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