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第74話 アリアが工房の仲間になった!

 フィーユ様を発端とした騒動も解決へと進み、アリアが工房の一員となった。


「き、今日からこちらでお世話になります。改めて、よろしくお願いしますっ」


 アリアはそう、工房のみんなに挨拶をする。

 メイジーの一件があったためかかなり緊張しているように見えるが、アリアの緊張なんてお構いなしで、従業員からは大きな拍手が巻き起こった。


「アリアちゃんが一緒に働いてくれれば、一層工房が明るくなるぜ」

「こりゃあ社長とくっつく日も早いんじゃねえか?」

「はっはっは。違いねえ!」

「なっ――!? そっ、くっつくなんてっ――」


 真っ赤になってうろたえるアリアを見て、従業員(主に男)たちは一層テンションを上げている。

 前世の日本ならセクハラで訴えられかねない事態だぞ!


「ちょっと、可哀想だろ初日からそんな」

「なんだよスイ、いいだろ少しくらい」

「アリアちゃん、こいつらに何か嫌なこと言われたらいつでもあたしに言いなよ。叩きのめしてやるからね」

「あ、ありがとうございます」


 スイは赤いショートカットと赤い瞳が印象的な、気の強い女性従業員だ。

 引き締まったしなやかな体と整った顔立ちで、会ったばかりの男の中にはスイを狙おうとするヤツも多いのだが。

 本人は色恋沙汰には興味がないようで、言い寄る男をことごとく撃沈させている。


 が、姉御肌で面倒見が良く、困っている従業員を助ける姿もよく見受けられる。

 スイになら、安心してアリアを任せられそうだ。


「スイさん、僕がいないときは、アリアをお願いできますか?」

「ああ、もちろん。遠慮なくあたしを頼ってくれ」

「ありがとうございます。もちろんほかの皆さんも、アリアと仲良くしていただけると嬉しいです。いろいろと教えてあげてくださいね」


 こうして挨拶を済ませ、僕とアリア、それからシャロとミアは、いつものように工房の1階にあるキッチンへ向かった。


「――それじゃあアリア、改めてよろしくね。……それにしても、結局メイジーって何がしたかったんだろうね?」

「メイジーさんは、もともと平民嫌いで有名なんですよ……」


 シャロが言うには、メイドの世界でも、貴族と平民の間には待遇や発言権に大きな差があるのだという。

 特にアリスティア家には、身寄りがなく領主様に拾われた子も多く在籍している。

 メイジーはそんな平民メイドや身寄りのないメイドを裏で明確に区別し、こき使うことで、貴族である自分は特別なのだと線引きしていたらしい。


 ――つまりフィーユ様は関係なく、ただアリアが気に食わなかったってことか。


 恐らくメイジーは、平民でありながら領主様と繋がりがあり、しかも家庭教師をつけてもらって特別扱いされているアリアが許せなかったのだろう。

 でも領主様の目がある以上、さすがに意味もなく手を出すことはできない。

 そんな中で訪れたチャンス。それがフィーユ様の愚痴だった――のかもしれない。たぶん。


「貴族は取り巻きに、それ以外は下僕に、がメイジーさんのモットーだったよね」

「はい。私もいなくなってせいせいしてます。……でも私、今回の件はさすがにフィーユ様に命じられたのだと思ってました」

「私も。……アリア様、お助けできず申し訳ありませんでした」

「本当に、申し訳ありませんでした」


 シャロとミアは、アリアに頭を下げる。


「そ、そんな! 2人には何度も助けてもらったし、いじめられたのは私の考えが足りなかったからで……。そもそも最初からパパや領主様の言うことを聞いてれば、あんな目に遭うこともなかったんです。私こそ心配かけてごめんなさいっ」


 アリアも慌てて2人に謝罪する。


 まあたしかに、世間知らずなアリアには、女の園でやっていくなんてハードルが高すぎたのだろうと思う。でも――


「アリア、メイドとして働いた経験は、きっと無駄にはならないよ。右も左も分からない中で本当に頑張ったと思う。えらいぞ」

「……ふふ。なんかフェリク、パパみたい。でもありがとっ」


 アリアはそう、嬉しそうに抱きついてくる。

 抱きついて! くる!!!


 さっきまで、「うっかり米原秋人としての本心が声に」なんて思ってたのに。

 なのに今の僕には、アリアは背丈の変わらない同じサイズ感の女の子で。

 抱きつかれた衝撃と重みに、温かさと柔らかさに、思わずドキッとしてしまう。


「ああーっ、フェリク様顔が赤いですよ~?」

「シャロ、失礼ですよ。そういうのは口に出してはいけません……ふふ」


 くそっ、こいつらめちゃくちゃ楽しそうだな!


 ……まあでも、とりあえずは。

 これでまたお米の研究に没頭できるぞ!!!

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