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第62話 米loverが増えるのは嬉しいけど

「最近、来客が多いなあ。おかげで仕事が全然進まないよ」


 アリアがメイドとしてアリスティア家に来て、奥様とフィーユが帰宅して。

 工房が一気に賑やかになった。


 ――アリアは気を遣う相手でもないし、そもそも忙しくて来られる日数も限られてるからいいんだけど。

 問題はフィーユ様なんだよな……。


 フィーユは今12歳で、本来ならば当然授業を受けるべき歳だ。

 辺境伯であるアリスティア家の一人娘ともなれば、学ばなければならないこともさぞかし多いことだろう。

 しかし病み上がりであるという事情から、今は療養に専念している。

 つまり暇なのだ。


「フェリク様の作る料理はおいしいですからね~っ」

「うーん。お米を好きになってくれるのは、とても嬉しいんだけどね」


 でもさすがに貴族令嬢を放置して研究に没頭するわけにはいかないし、やることが多くて時間が足りない。


「もしお困りなのでしたら、旦那様か奥様に相談なさってみてはいかがでしょう。フェリク様のお話なら、聞いてくださるのではないでしょうか」


 そんなことを話していると、今日も外が騒がしくなってきた。

 フィーユ付きのメイドさんの「お待ちくださいお嬢様!」と叫ぶ声が、徐々に工房へと近づいてくる。そして。


「フェリクっ、今日も来たわよっ」


 工房の扉が開けられ、目を輝かせているフィーユが中へと入ってきた。

 後ろの方で、メイドさんが申し訳なさそうに頭を下げる。


「フィーユ様……こんにちは」

「今日は何を食べさせてくれるのかしら? わたくし、このために朝ごはんをほんの少ししか食べなかったの。おなかぺこぺこだわ」

「え、ええと……今日はもうすぐ新作レシピに関する打ち合わせがあってですね」

「そうなの? ならその新作でいいわ」


 いや良くないんですが!?

 まだ試作段階なのに領主様の娘が同席するなんて、相手が委縮してしまう。

 なんて返せば大人しく帰ってくれるだろう?


 そう頭を悩ませていたそのとき。


「フェリク君、今日の――うん? フィーユ、こんなところで何してるんだ」

「お、お父さま!? え、ええと……」

「フェリク君はこれから仕事なんだ。邪魔になるからうちに戻りなさい」

「で、でも私――」

「でもじゃない。先日話したことを忘れたのか? 君はアリスティア家の娘なんだ。貴族には貴族のやるべきことがある」

「……分かりました」


 領主様に叱られ、フィーユはしょんぼりしつつも大人しく屋敷へ戻ってくれた。


「うちの娘がすまないね。もしやいつもこうして邪魔を?」

「い、いえ……」

「バトラから上がってきた報告を見て、最近少し進みが遅いと思っていたが……そういうことか」


 ――――ぐ。

 そう言われると何も言えない!!


「……はあ。困った娘だ。あの子は幼い頃から病弱でね、友達と呼べる相手がいないんだ。だから君といるのが楽しいのだろう。私からも再度忠告しておくから、あまり悪く思わないでやってくれ」

「そ、それはもちろん」


 そういうことだったのか……。

 まあ辺境伯の娘であれだけの美少女じゃ、まともな友達作るの難しそうだよな。

 下手したら変なのが寄って来かねないし。

 そのうえ病弱、か。


 僕もべつに、フィーユ様が嫌いなわけではないんだよな。

 むしろ平民である僕とも普通に接してくれるあたり好印象だし、料理もとてもおいしそうに食べてくれるので作りがいがある。

 でも、いかんせん時間がない!

 

 ――今度、何か差し入れでも作ってやるかな。

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