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第60話 アリア専用食堂オープン!

 ある日の昼下がり。


「――というわけで考えてみました! 名付けて、アリア専用食堂だよ」

「す、すごい! 何これいつの間に!?」


 僕は空き時間にコツコツ作った、アリア専用のメニュー表を彼女に手渡す。

 メニュー表には、甘酒やおにぎり、ごはんとおかずの組み合わせなどさまざまな白米料理が記してある。

 おかずやおにぎりの具材は、アリアが仕事の合間に来られるよう時間のかからないものに絞った。これなら気軽に利用できるはず。


「で、でも急にどうしたの?」

「最近頑張ってるから、アリアのために何かできないかなって思って」

「ふ、フェリク……。もう、忙しいのにバカじゃないの? ……でも、ありがと」

「さ、選んで選んで!」


 泣きそうな顔で笑うアリアに不覚にもドキッとした僕は、それを誤魔化すようにメニューの選択を催促する。


 ――まったく、9歳のくせにいつの間にそんな大人っぽい顔するようになったんだ。

 変な男に言い寄られないか、お父さん今から心配だぞ!


「……じゃあ、このほうれん草ときのこ、ベーコンのバター炒め丼? それから桃甘酒っていうのをちょうだい」

「かしこまりました。少々お待ちくださいお客様」

「ふふっ、ちょっと何よそれ!」


 僕がウェイターになりきって応じたのがツボに入ったらしく、アリアはおかしそうにケラケラと笑う。

 ここがアリアの息抜きの場になればいいな。


 まずはバター炒め丼から。

 バターでベーコンとしめじを炒め、こんがり色がついたら、そこに洗って切ったほうれん草を加えて炒める。

 あとは塩コショウで味を調え、丼に盛ったごはんの上に乗せ、目玉焼きを作ってそれも乗せる。


「お待たせ。好みで醤油をかけて食べて」

「わー、おいしそう! いただきますっ」


 アリアは添えていた醤油をたらし、ごはん、バター炒め、それから目玉焼きを器用にすべてスプーンに乗せて頬張る。


「んーっ! おいしいっ!」

「だろ? シンプルだけど、バター醤油ってごはんとすごく合うよな」

「本当、卵が少し半熟なところも最高だわ」


 アリアは夢中で食べ続け、あっという間に完食した。


「気に入ってくれたみたいでよかった。はいこれ、デザートの桃甘酒。桃を甘さひかえめのジャムにして、それを甘酒に混ぜてみたんだ」

「桃のいい香りがする……!」


 アリアは桃甘酒の香りに、幸せそうに表情をとろけさせる。そして。


「……もっと甘いかなって思ったけど、すっきりしてて飲みやすい! ちょうどいい甘さだわ。これ、すっごく好き!」

「お、よかった。甘酒用に調整した甲斐があったよ」

「……フェリク、ありがとう。仕事、みんな優しいけど失敗することもあって、こんなんじゃだめだって少し落ち込んでたの。でも元気出た! 私、頑張るねっ」

「ん。でも無理はするなよ」


 アリアとそんなひとときを過ごしている中。


「フェリク! ――って、ど、どなた!?」

「お、お嬢様!?」


 フィーユがやってきた。

 アリアは慌てて立ち上がり、深く頭を下げる。


「その服……うちのメイドよね? こんなところで何してるの? お父様に言いつけるわよ!」

「ま、待ってくださいフィーユ様。え、ええと……紹介します。この子は、僕の幼なじみのアリアです」

「お、幼なじみ……?」


 フィーユは、ぽかんとして僕とアリアを見る。


「はい。同じ村でずっと一緒に育ってきたんです。だからきっと、僕と離れてるのが寂しかったんじゃないかな、と。それでメイドに」

「ちょ――誰がそんなこと言ったのよ。フェリクは関係ないって言ったでしょ!」


 アリアは顔をぷくっと頬を膨らませ、真っ赤になってこちらを睨む。

 せっかく助けてやったのに!


「ち、ちなみに今は休み時間だそうですよ……」

「……そ、そう。さぼってるんじゃないのなら、べつにかまわないわ。わ、わたくしには関係のないことですし。今日は帰ります」


 フィーユは何か言いたげだったが、それ以上は何も言わずに去っていった。

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