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第46話 気づいたら社長になってた!

「――――え!?」

「あれ、エイダンから聞いてなかったかな? この工房は、『クライスカンパニー』としての正式な開業、それからフェリク君の社長就任を記念して建てたものなんだ」


 聞いてねえ!!!


 今、領主様から告げられた衝撃的な現実。

 この工房を受け取った日、どうやら僕は、「クライスカンパニー」という会社の社長になっていたらしい。

 というか8歳で社長って……。


「え、ええと。うちの両親はなんと」

「ああ、もちろんちゃんと許可は得ているとも。『よく分からないけどお任せします!』とのことだよ」

「あ、そうですか……」


 父さんは難しい話になるとすぐ逃げようとするからな!

 ほんと悪いクセ!!!

 そして母さんは、「なんか面白そうだしいっか」くらいの感覚だろう。

 うちの両親は、そういう人たちだ。


「お米の不足具合もだいぶ解消の目処が立ってきたし、これからフェリク君に一層活躍してもらわなくてはね。……でも無理をしてはいけないよ。最近、工房に籠りきりじゃないか。大丈夫かい?」

「お気遣いありがとうございます。ちゃんと工房で寝てますよ。貴族宅のシェフたちに、もっとバリエーションがほしいって相談されてて。あと、レストランでお餅料理が大好評らしいので、それも増やしたいんですよね」


 最近は、工房ができた際に雇ったという従業員たちも調査に協力してくれる。

 工房では現在、僕以外に、シャロとミアを含めたメイド5名、それから新たな従業員10名が働いている。


「知名度が上がってきたとはいえ、白米はまだまだ一部でしか食されていないマイナーな食材だからね。アリスティア領内でも、田舎の方では今でもカユーが主流だ」

「……ですね。お米を作れる環境は整ってるわけですし、少しずつでもおいしいごはんを普及させていけたらいいんですが」

「そうだね。ありがとう。期待しているよ」


 地方の貧しい集落で白米を普及させるには、食生活を改善する必要がある。

 白米はたしかにクセがなくて食べやすいし、おいしいけど。

 でも、栄養価の高い米ぬかを削ぎ落とした白米では、栄養面で玄米に勝てない。


 ――日本でも昔、白米が食べられるようになってビタミンB1が不足して、脚気が流行したらしいし。


 そうした事態を発生させないためにも、貧しい地域での白米の普及には慎重になる必要がある。


「旦那様、そろそろ……」

「ああもうそんな時間か。分かった。それじゃあフェリク君、また」

「はい。また何かあればご報告します」


 執事のバトラに促され、名残惜しそうに部屋を出ていく領主様を見送って。

 仕事の続きをしようかと思ったが。しかし。


 ――たしかに最近、少し寝不足かもな。

 ひと段落ついたし、昼寝でもするか。


「シャロ、ちょっと仮眠を取ってくるよ」

「かしこまりました」


 2階の自室へ向かい、そのままベッドへと倒れ込む。

 質の良い柔らかさと弾力を兼ね備えたベッドが、その衝撃ごと包みこんでくれる。

 その心地よさに、僕はあっという間に夢の世界へと落ちていった。


 ――はずだった。

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