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第41話 お粥の魅力、拡散中!

 アリスティア夫人の実家からの使者は、スキル【強化・速度】と【転移】を駆使したらしく、通常なら一週間以上かかるところを3日でやってきた。


 ――やっぱりスキル【転移】は便利だよな。

 アリアもいつか、こうやって使いこなして出世するのかな……。


 アリスティア領から遠く離れた土地で暮らす彼らにとって、米は未だ貧しい庶民の食べ物でしかなく。

 それを領主様自ら夫人に食べさせたいと言い出したことに、最初は戸惑っていた。


 しかし実際に七草粥を食べてもらったことで、米のスッキリとした甘さと七草のほろ苦さ、体に染み入るようなやさしさに驚き、考えが180度変わったらしい。

 これなら奥様とフィーユ様も召し上がるかもしれない、と、ぜひとも作り方を教えてほしいと頭を下げられた。

 ちなみにフィーユ様というのは、領主様の娘、アリスティア家のご令嬢のことだ。


 僕は使者2人に、七草粥を含めたお粥の作り方数種類、それから甘酒の作り方とアレンジレシピをいくつか伝えた。

 そしてお粥用に品種改良して精米した米と培養していた米麹、あとは完成している甘酒と醤油、味噌も少しずつ渡す。

 甘酒は遠方からやってきた2人の体も癒したらしく、大変喜んでくれた。


 ――まあ、甘酒もお粥も薬じゃないから、直接病気を治すわけじゃないけど。

 でも少しでも体力回復の助けになればいいな……。


 ◆◆◆


「フェリク! 久しぶりっ!」

「あ、アリア? こんな朝早くにどうしたの?」

「パパが用事があるっていうから、ついてきたの」


 キッチンでお粥とベーコン入りスクランブルエッグを作り、シャロとミアとともに朝ごはんを食べていたある日。

 突然入り口のドアが開けられ、アリアが入ってきた。


「今日は何食べてるの? ……ってカユーじゃない。せっかくおいしいお米料理を作れるのに、どうしてカユーを?」

「ふっふっふ。これはただのカユーじゃないよ。ちゃんとした作り方で、白米で作ったおいしいお粥なんだ。アリアも食べる?」


 ちなみに今日のお粥は、鶏もも肉とともに炊いたお粥に生姜と塩を加えて味を調えたもの。前世の言葉で言えば、中華粥だ。


「ええ……本当においしいの?」

「騙されたと思って一口食べてみなよ」

「……まあ、一口だけなら。でもたしかに、いい匂いはするね」


 器によそって渡すと、アリアは恐る恐るスプーンで掬う。

 が、そこで自分の知っているカユーとは違うと感じたらしい。

 そのままぱくっと口へ入れて――


「……お、おいしい。何これ本当にカユーなの? サラサラしてる」


 お粥のおいしさに魅了され、あっという間に完食した。

 ……どころか、鍋に残っていたお粥を全部食べ切ってしまった。

 アリアがお米ラバーになってくれて、本当に嬉しい限りだ。


「ちゃんとした作り方をすれば、お粥はこれだけおいしくなるんだよ。あとまあ、鶏の出汁で煮てるし生姜も入ってるから、より食べやすいのかも」

「すごい、カユーがこんなにおいしいなんて信じられない! やっぱりフェリクは天才ね!」

「あはは。ありがとう」


 アリアとそんなことを話していると、彼女が開けっ放しにしていたドアからアリア父が入ってきた。アリアを探しに来たのかもしれない。


「フェリク君、おはよう。いい匂いがするね」

「あ、おじさんおはよう。朝ごはんにお粥を食べてたんだ。でも、アリアが食べきっちゃったからもうないけど」

「……アリアが? あれだけカユー嫌いだったアリアも、フェリク君が作ったお粥なら食べるのか」

「これはもう、カユーとは別ものだわ。これなら毎日でも食べたいくらい。うちも朝ごはんはこれにしない?」


 アリアは目をキラキラさせ、そう訴えている。


「あはは、ママにお願いしてみようか。……それよりフェリク君、おかげさまで、屋台でもレストランでも、白米料理が想像以上に大好評だよ」

「本当!?」

「ああ。すごいよ。かつてない勢いだ。それでね、領主様と私から君にプレゼントがあるんだ」

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