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第37話 母のスキル【鑑定・植物】に感謝!

「父さん! 母さん!」

「フェリク!」

「おう、元気だったかフェリク」


 今、僕は実に数か月ぶりに両親との再会を果たしたところだ。

 前回会ったのは、たしか麹を完成させて甘酒を作った頃だったか……。


 領主様の所有している農場は広大で、田んぼはお屋敷から少し離れた場所にある。

 そのため農場の近くに別邸があり、父と母は普段そちらに宿泊しているのだ。


 さらに屋台通りで白米料理が想像以上の人気商品に急成長しており、僕も両親も、今めちゃくちゃ忙しい。

 そんな事情からずっと会えていなかった僕と両親を見かねて、領主様が2人を屋敷へと呼び戻してくれて今に至る。


「ごめんね、1人にして。寂しかったでしょ?」

「う、うん。でも大丈夫だよ。みんな優しくしてくれるし、メイドさんたちから母さんと父さんの話はよく聞いてたから」


 涙目で僕を強く抱きしめる母を見て、自分が8歳であることを思い出す。

 前世の記憶が戻ってからというもの、どうしても過去の、30歳だったころの自分に引っ張られてしまい、自分の年齢を忘れがちだ。


 ――た、たまには家族に会いたいって泣いた方がいいんだろうか?

 このままじゃ、子どもとして父さんと母さんに申し訳ない気もする。

 いやでも今更そんなことするのもな……シャロやミアを困らせたくはないし。


「そういえば、僕が作った新しい米料理、食べてくれた?」

「ええ、もちろんよ。信じられないくらいおいしくて驚いたわ。醤油と味噌も届けていただいたけど、あれ、味が決まりやすくてとっても便利ね。メイドさんと一緒に、私も焼きおにぎりを作ってみたの」

「僕は甘酒が気に入ったぞ。あれを飲むと体力が回復する気がするんだ。今や農場で働くみんなの中で、すっかり回復薬扱いだよ」


 麹から作る甘酒は、前世では「飲む点滴」「飲む美容液」とまで言われていた。

 人間のエネルギー源となるブドウ糖をはじめ、ビタミンB群、必須アミノ酸など人間の生命活動に欠かせない栄養を豊富に含んでいることがそのゆえんだ。

 僕の前世である米原秋人も、仕事が忙しく疲れた日には必ずと言っていいほど甘酒を飲んでいた。


 もちろん、それは「フェリク」としても変わっていない。

 僕が勧めた影響で、今やシャロとミアの大好物にもなっている。


「そういえば、さっき領主様から伺ったんだけど、あなたグラムスの有名レストランで三つ葉を使った料理を出したんですって? すごい勇気だわ……」


 実は三つ葉は、この世界ではほとんど知られていない。

 山や河原などでいくらでも手に入るが、名前すらつけられていない「雑草」扱いで、これを食べようなんてヤツはそういないだろう。


 では、なぜ僕がこの世界の三つ葉を認識し、食べられると知っていたのか。

 それはうちが貧しい米農家で、母がスキル【鑑定・植物】持ちだったからだ。

 母のスキルは、鑑定した植物に毒があるかないかを見分けることができる。

 そのため、少しでもお金をかけずにおかずを増やそうと、そこらへんの草を鑑定しては料理に使っていた。三つ葉は、その中にたまたま混ざっていたのだ。


 三つ葉の使用を領主様とアリア父に願い出たとき、最初は速攻で却下されたが。

 しかし実際に僕が作った「鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン」を食べて、考えが変わったらしい。


 ――あの香りと味を出せる植物はそうないからな!

 しいて言うならせりくらいか。

 でも、せりもここでは雑草でしかないけど!


 三つ葉は栄養価も高いし、雑草として捨て置くなんてあまりにもったいない。

 母のスキル【鑑定・植物】と節約意識によって、そして自身の前世の記憶によって、僕はほかにもこの世界で知られていない山菜や香草を多数認知している。


 ――そういえば、七草粥が食べたいな。


 食べごたえのあるガツンとしたメニューもいいが、僕は米の味がダイレクトに味わえるお粥も大好きだ。

 特に七草粥は、七草のほろ苦さが絶妙でクセになる。


 1人暮らしなのに正月にフリーズドライの七草粥の素を数十単位でまとめ買いして、たまたまスーパーで出くわした知り合いにドン引きされたっけ。

 あれ、せっかくフリーズドライなんだから年中売ってくれてもいいと思うんだけどな。

 どう考えても朝食や夜食にもってこいだろ……。

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