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第36話 「餅ミルクグラタン」の勝利!

 スキル【品種改良・米】によってもち米を生み出し、半月ほど経った日。

 僕が開発した餅メニューが、いよいよレストラン「クラット」で試験的に提供されることとなった。


 クラットは、アリア父が懇意にしているレストランの1つ。

 店主のクラシーさんとアリア父は、十数年の付き合いがあるらしく。

 おにぎり試食会のとき真っ先にうちの米に興味を持ってくれたのもクラシーさんだった。


「き、緊張する……」

「大丈夫、味は私とクラシーさんが保証する。仮に売れなかったとしても、それはフェリク君のせいじゃないさ」


 キッチンの片隅で不安を吐露する僕を、アリア父が優しく気遣ってくれる。

 そうしている間にも何人かの客が来店し、食事を済ませて出ていった。

 それぞれお気に入りがあるのか、なかなか餅レシピを注文してくれない。


 ――やっぱり、僕みたいな素人が考えたメニューじゃ無理なのかな。

 いやでも、あれは絶対においしいはず。


 そう思っていたその時。


「このオススメにある『鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン』ってどんな料理? 見たことない料理名ね」


 2人で来ていた女性客のうち1人が、僕が考案した餅メニュー『鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン』に気づき、店員にそう声をかけた。


「こちらは鶏もも肉とじゃがいも、爽やかな香りが印象的な香草『三つ葉』、それから滑らかでむっちりとした食感が新しい『餅』という食材を、ミルクで煮込んだグラタンです」

「三つ葉に餅……初めて聞いたわ。これを1つちょうだい」

「え、じゃあ私もそれにする! あと、アイスティーも2つお願い」

「かしこまりました。『鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン』を2つ、それからアイスティーを2つですね。少々お待ちくださいませ」


 ――や、やった!

 とりあえず注文が入ったぞおおおおおおお!

 あとは気に入ってもらえるかどうか、だけど……。

 でも正直、味にはかなり自信がある。


 餅グラタンは、前世の僕が夕飯によく作っていた料理の1つだ。

 そのためかなりのバリエーションがある。

 が、「鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン」は、その中でも特にお気に入りでヘビロテしていたものの1つだ。


 鶏もも肉とじゃがいもを塩コショウで炒めて煮込み、そこに牛乳、刻んだ餅、それから味噌を少し加えて。

 じゃがいもでとろみがついて餅の表面が少し柔らかくなるまで加熱する。

 あとは三つ葉を加え、耐熱皿に移してチーズをかけてオーブンで焼けば完成だ。

 今回は見た目に気を遣って、完成したグラタンにパセリ代わりに三つ葉を少し散らすことにした。


「おまたせいたしました。『鶏もも肉とじゃがいも、三つ葉の餅ミルクグラタン』です。器が大変熱くなっておりますので、お気をつけてお召し上がりください」

「わあ、おいしそう! 緑が映えてとても綺麗!」

「少し変わった香りがするわね。何かしらこれ?」


 店員が去ると、2人は待ちかねた様子でフォークを手に取り、グラタンを掬って口へと運ぶ。そして――


「――おいしいっ! このグラタン、ソースが重すぎなくてとてもいいわ。それにこの滑らかなのに弾力がある――これが餅かしら? これ好き! これだけ食べていたいくらい」

「噛めば噛むほど優しい味が広がるね! この不思議な味がするソースともすごく相性がいい。三つ葉、だっけ? これも好き。こんなにいくらでも食べられそうなグラタン初めて!」


 2人は時折頬に手を当て、ほうっと甘いため息をつきながら、幸せの極みを味わうような顔で食べ進めていく。

 そんな2人の様子を見て。


「……すみません、俺もあの子たちが食べているのと同じものを」

「私もあれと同じのをちょうだい」


 周囲にいた客が、次々と餅ミルクグラタンを注文し始める。

 そして注文した人たちは皆、それが米でできているなどとは思いもせず、絶賛して帰っていった。

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