表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/133

第31話 塩漬け肉と青じそのおこげサンド

「いらっしゃいませ~! 今までにない新しい屋台メニュー、おにぎり、おこげサンド、甘酒はいかがですか~っ? 本日試食会も行なっておりま~すっ」


 朝10時。

 ついに屋台での販売が始まった。

 この時間帯は人数はあまり多くないが、お年寄りや主婦、子連れの家族、休日を楽しむ人々など、幅広い層が屋台を訪れる。


 この時間は、効率よく空腹を満たしたい労働者がなだれ込む時間帯と違い、客も店も比較的時間に余裕が生まれやすく。

 そのため、商売そっちのけで客と談笑している店も少なくない。


「おや、今日は珍しいものを売ってるのね。これは何かしら?」

「なんだと思います? まずは試食してみてください。はいこれっ!」


 売り子の少女は、立ち寄ってくれたお客さんに試食用の甘酒と焼きおにぎりを渡す。

 事前にお米であることを話すと偏見で食べてもらえない可能性があるため、聞かれない限りまずは食べてもらう、というスタイルを推すことにした。


「まあ、やさしい甘さで体に染みるわ~。おいしい。こっちのもちもちとした食べ物も、食べたことがないわね。香ばしくてクセになりそう!」

「実はこれ、全てお米でできてるんですよ」

「えっ、お米!? お米って、あのカユーの? 信じられないわ」

「実は今、お米の新しい食べ方がじわじわ人気を得てるんですよ~」


 売り子さんにもちゃんと全商品を試食をしてもらい、教育も徹底している。

 その甲斐あって、接客も何も心配いらなそうだ。


「そうなの、初めて食べたわ。お米はおいしくないイメージがあったけど、これはとてもおいしいわね。今日はちょうど友達が遊びにくるのよ。お昼はこれにしようかしら。……こっちのは何?」


 おこげを焼いていると、お客さんが僕に話しかけてきた。


「こちらはおこげサンドといって、ツヤツヤに炊き上げたごはんをカリッと焼いた『おこげ』で、塩漬け肉と青じそをサンドしたものです。ご試食されますか?」


 おこげサンドは、実は今回のメニューで一番の自信作だったりする。

 最初は肉とレタスを挟んでいたが、味にインパクトを出すため改良期間中に青じそに変更して今の形になった。

 こういうとき、やっぱり薬味は便利だな!


「あらいいの? たくさん試食させてもらっちゃって、なんだか悪いわね。でも気になるしいただこうかしら。これもお米ってことなのよね?」

「はい。焼きおにぎりとはまた違う、香ばしさに特化したがっつり系のメニューです」


 作り方は簡単。

 まず、油を引いた鉄板にごはんを薄く均一に広げ、上から麺棒で程よく潰して米どうしを密着させる。

 こうすることで、ごはんがバラバラにならずカリッとモチモチに仕上がるのだ。

 それをじっくり両面香ばしく焼き上げて、最後に少しだけ醤油を垂らせば生地は完成。

 あとは青じそと、黒コショウを軽く振った塩漬け肉をバターで焼いたものを挟むだけだ。


 試食用にカットしたおこげサンドを専用の紙に乗せ、お客さんに手渡す。


「まあ、本当にカリカリね。固そうだけど食べられるかしら……」


 手渡されたおこげサンドに触れ、少し戸惑いを見せたが。

 口に入れ、驚きの表情を見せた。


「これ、固いのにモチモチだわ。不思議。こんな食感初めてよ。この野菜も初めて食べるけど、香りが良くて爽やかでとてもいいわね。これがあるおかげでいくらでも食べられそう……! 塩漬け肉とも合ってるわ」

「おこげサンド、気に入っていただけて何よりです」

「おこげサンドも5ついただくわ」

「ありがとうございます!」


 ああ、やっぱり米のうまさは異世界でも十分通用するんだ。嬉しい。

 目の前の人が米料理で笑顔になる幸せ。

 この幸せを、もっともっと広げていきたい。


 この後も続々とお客さんが増えて。

 昼食を摂りに来た労働者の波もあって、全店舗昼過ぎには全メニューが完売した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ