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第3話 外れスキル? むしろ大当たりでした!

 スキルを授かった日の夜、夕飯にパンが出た。しかもふわふわのお高いやつだ。

 さらに、分厚いステーキとシチューまでセットになっている。

 こんな豪勢な料理、未だかつて見たことがない。

 多分両親なりに、どうにか僕を立ち直らせようと考えたのだろう。


「今日はフェリクの大好きなパンだぞ。好きなだけ食え。米農家だって、頑張ればこうしてパンが食べられるんだ。だからおまえも――」


 父はそう、僕に食事を勧めながら慰め、諭してくる。

 しかし今の僕は、正直米のことで頭がいっぱいだった。


 ――今まで食べてたカユーって、あれ玄米粥だよな。

 いやでも、玄米粥は好きでよく作ってたはず。味覚が変わった?

 いやいやそんなことがあってたまるか!

 米を愛する者として、そんなの絶対に認めたくない!!!

 絶対に改良の余地があるはず。だったら――


「……フェリク、どうかした? やっぱりショックで食欲が」

「――あ。う、ううん! 全然そんなことないよ。元気だよ。ほら、こんな豪華な食事見たことなかったから、ちょっとびっくりしちゃって。いただきますっ!」


 僕が元気よく食べ出したことで、両親はほっとした顔になる。


「このパン、ふわっふわだね。おいしいよ!」

「ふふ、元気になってくれてよかったわ。このパン、フローレスさんが誕生日だからって特別に下さったのよ。今度改めてお礼に行かなくちゃ」

「だな。パンを買う金が浮いたおかげで、ステーキもシチューも思う存分食えるんだからな」

「僕も明日、アリアにお礼言わなきゃ!」


 この日はみんなでおいしいものをたらふく食べ、とても楽しい夜を過ごした。

 しかし翌日、僕は人生がいかにスキルに左右されるかを改めて思い知るのだった。


 ◆◆◆


「見ろよ、あいつだぜ。【品種改良・米】なんていうスキル授かった雑魚」

「はは、ウケる。まあ米農家の息子だし、ちょうどいいんじゃね?」

「ちょっとやめなよ! ――ふふっ、面白くて笑っちゃうじゃんっ!」


 僕のスキルが【品種改良・米】という外れスキルだった、という噂はたちまち広まり、翌日の昼には村中に広まっていた。

 うちは貧しい米農家ということで、元々あまりいい扱いはされていなかったのだが。

 スキルが確定したことで一層周囲の目があからさまになってしまった。


「ちょっとあんたたち煩いわよ! ……フェリク、気にしちゃダメよ!」

「なんだよ。おまえのスキル【転移】だったんだろ? そんな雑魚と関わってないでオレらと遊ぼうぜ!」

「はあ? 絶対イヤよ。誰があんたたちみたいなのと!」


 アリアは彼らからふいっと顔を背け、変わらず僕の味方になってくれた。

 ちなみにスキル【転移】は、こんな辺境の農村にはそぐわない超当たりスキルで。

 これを得たアリアは、将来が約束されたも同然だった。


 ――本当、どこまでいい子なんだこの子は。

 ここが小説やマンガの世界なら、アリアは確実にメインヒロインだろうな。


 まあでも実のところ。

 僕は自分のスキル【品種改良・米】を悲観してなどいない。

 むしろこれは、僕にとっては超絶大当たりなスキルなはずだ。


 前世の記憶が戻ったことで、今の僕の頭の中には数えきれないほどの米レシピが詰まっている。

 そんな僕が! スキル【品種改良・米】で最高にうまい米を作れれば!


 ――もうこれ、勝ち確定では!?


 よし。絶対うまい米料理を作ってみせるぞ。

 待ってろ僕のおいしいごはん!!!!!

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