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第25話 牛串焼きから学んだこと

「フェリク、ね、あの串焼きおいしそうじゃない?」

「たしかにうまそう。でもこれって白米とは何の関係も……。いや、そんな頭の固いことを言ってるからダメなんだな。食べよう!」

「やったあ♪」


 牛串焼きを3本注文すると、店頭の網でジューシーに焼き上げてくれる。

 塩コショウのシンプルな味つけだが、それがまた肉の焼かれる香ばしい香りがダイレクトに届く要因にもなっていて、とてつもなく食欲をかきたてられた。


「はいよ。肉の串焼き3本な!」

「ありがとうございます」


 お金を払って受け取り、アリアとシャロに1本ずつ手渡す。

 焼きたての艶やかさと香ばしさを併せ持つ見た目と、湯気による強烈な鼻腔への刺激がたまらない。屋台で買ってすぐに立ち食いするという背徳感も、この串焼きの魅力を一層高めている要因だろう。


「わ、私までこのような……本当によろしいのですか?」

「もちろん。2人だけで食べるなんてこっちが気まずいし。それにせっかくなら、意見も3人分あった方がいいだろ」


 シャロは牛串焼きを受け取り、目を輝かせる。

 世話係のメイドとはいっても、まだ十代半ばの子どもだ。

 時折垣間見えるその幼さに、むしろこっちが世話を焼きたくなってくる。


 というか。

 前世の僕の半分くらいしか生きていない子に世話されていると思うと……。

 いや、余計なことは考えないようにしよう。僕は8歳!!!


 串焼きの肉を頬張ると、牛肉特有の強い旨みを持つ肉汁がジュワっと溢れ出す。

 肉質は霜降りではなく赤身寄りだが、だからこそ肉好きにはたまらない肉々しい味が――ってあれ?


 この肉、どうやって保存してるんだろう?

 特に塩漬けにされている感じでもないし、焼き加減は絶妙で、中がほんのり赤い。

 いくら牛肉とはいえ、常温保存していたものをこんな焼き加減で出していたら、間違いなく食中毒が発生する。


「あ、あのっ、すみません」

「うん? どうした、串焼きに何か気になることでもあったか?」

「えっと、その……このお肉はどうやって保存してるんですか?」


 子どもが突然そんなことを聞くのは不自然かもしれないと思ったが、背に腹は代えられない。

 串焼きの店の男は、一瞬驚いたような顔をしてこちらを見たが。

 それからプッと吹き出し、笑い始めた。


「あっはっは。変なところに興味を持つ子だな。気になるか? これだよこれ、冷却庫だ」

「れ、冷却庫? こんなところに?」


 いや、こんなところとか言ったら失礼だけど。

 でも、この串焼き屋が実は貴族で大金持ち……なんてことはちょっと考えにくい。


「実はギルドが小さな冷却庫を大量に所有しててな。登録者に1つずつ安く貸し出してくれるんだ。魔導具師に頼む時期も合わせてるから、お安く済むってわけさ。――って、こんな難しい話しても分かんねえかな」

「な、なるほど……! すごく勉強になります!」

「お、おう……? まあ役に立ったならよかったよ。これも領主様の協力あってこそ、ってな」


 僕があまりに目を輝かせていたのか、今度は男の方が驚いたようだった。

 子どもがこんな話に目を輝かせるなんて、僕も逆の立場だったら同じような反応をしていたかもしれない。


 ……にしても、領主様はもちろん、商業ギルドも優秀ってことか。

 活気にあふれるわけだな。うん。

 というか、まさかグラムスでこんなに冷却庫が普及してるとは思わなかった。

 これは幅が広がるぞ!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] くしに米と言ったら五平餅だ! 団子もあるね!
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