第24話 アリアとの再会、そして街へ
「フェリクっ!」
「――あ、アリア!?」
数日後、領主様の帰宅に、なんとアリアがついてきた。
アリア父も一緒らしい。
「実はね、私たち、グラムスに引っ越すことになったの」
「えっ!?」
「ちょっとよく分からないんだけど、先日突然領主様がうちに来て、君たちはグラムスに移りなさいって」
グラムスというのは、アリスティア領内で最も栄えている、この領主様のお屋敷からも一番近くにある街だ。
なんだろう? 白米ビジネスを本格始動するためだろうか?
まあなんにせよ、アリアが来てくれたのはとても嬉しい。
領主様の力なしでは、ファルムに行くだけでも一週間近くかかってしまう。
「そういえば、おにぎりの研究は順調?」
「うーん、一応、レパートリーはそれなりにできたんだけどね。でもイマイチこう、これ!っていうインパクトがなくてさ」
「インパクト?」
「街で売るなら、いわゆる目玉商品がいるんじゃないかって思うんだ」
ファルムのような田舎ならともかく、街にはおいしいものを売っている店も屋台もいくらでもあるという。
その中で、アリア父と領主様は、白米料理をグラムス名物にする予定らしいのだ。
「……それなら、今から街に行ってみる? 今なら、ママが連れてってくれるかも」
「街に?」
「パパがね、ライバルに勝つには、まず相手を知ることが大切だっていつも言ってるの。だから、実際にお店や屋台を見てみましょうよ」
「――そ、それだっ!」
そういえば、僕はこの世界の街の様子をほとんど見たことがない。
領主様のお屋敷に向かう途中で馬車から見たくらいで、グラムスを実際に歩いたことは一度もなかった。
――にしても、さすがおじさんの娘だな。
8歳の子どもにここまでの正論を突き付けられるとは思わなかった……。
まあ僕も見た目は8歳の同い年なんだけど。
機転の利かない自分が恥ずかしい。
◆◆◆
「ふむ、もちろんいいとも。行っておいで。ただし、ご両親は今忙しいだろうからね、メイドを連れていくといい。バトラ、馬車の用意を」
「かしこまりました」
こうして僕は、アリアとシャロとともに、グラムスへ向かうことになった。
「ごめんね、シャロ。忙しいのに」
「いえ。フェリク様にお仕えするのが、私の務めですから」
ちなみにお金は、「必要経費」ということで領主様がたくさんくれた。
これなら、3人で好きなだけ食べてもおつりがくるだろう。
グラムスへは、昼過ぎくらいにはたどり着いた。
大通りには大きな建物が立ち並び、そこから少し逸れたところには、まるで商店街のごとく屋台が並んでいる。
「す、すごい……! こんなたくさんの店、この世界で初めて見たよ」
「この世界で……? ふふ、面白い言い方をしますね。ここは、アリスティア領で最も栄えている場所なんですよ」
「アリア、迷子になるなよ」
「フェリクだって!」
「2人とも、私から離れないでくださいね。街には危険も多いですから」
屋台の並んでいる通りは大通りより少し狭く、人通りもとても多い。
そのため、御者さんには夕方に迎えに来てもらうことになり、僕たちは3人で街を散策することとなった。
せっかくだし、あとで御者さんにもお土産買おう。




