第22話 ぬか漬け目指してぬか床づくり
――まずは、米作り(品種改良)からだな!
基本的にはモチモチ系が好きだし、先にそっちから始めよう。
先ほど種籾に施したのと同じ要領でスキル【品種改良・米】を発動させ、まずい米からおいしい米へと変えていく。
そして【精米】で白米と米ぬかに分けて――
「あ、そうだ。せっかくだし、先にぬか漬けを作っておこう。シャロ、何か使っていい食材ってないかな?」
「何でもお持ちいたしますよ」
「うーん、それならとりあえず――」
シャロに必要な食材を伝え、僕は早速ぬか床作りを始めることにした。
「ええと、まずは米ぬかをボウルに入れて、そこに塩と水を加えてしっかり混ぜ合わせて――」
――いくのだが、これが意外と混ざらない。
というか、なかなか一体化してくれない。
水を拒絶する米ぬかと水を、握っては場所を変え握っては場所を変えと辛抱強く結合させていく。
「ふう、こんなもんかな」
しばらくすると、米ぬかのざらざら感はありつつもしっとりしている、特有の触り心地へと進化する。
「フェリク様、言われていた食材と容器をお持ちいたしましたが……野菜くずなんて何に使うんです?」
「ありがとう。まあ見てるといいよ」
持ってきてもらった唐辛子、それから適当に切った昆布、綺麗に洗った野菜くずを加えて全体を混ぜ、最後に上から押さえて空気を抜けばひとまずは完成だ。
あとは蓋をして冷却庫に入れて数日間置けば――
「あ、あの……それは何ですか?」
「うん? ああ、ぬか漬けっていう漬け物の一種だよ」
「……つ、漬け物、ということは、これを食べるんですか!?」
この世界には漬け物はあまり存在せず、唯一野菜を塩漬けしたものがあるくらいだ。
それに米ぬか自体見たことないだろうし、まあ驚くのも無理はない。
「そ、その……土に埋めた野菜くずを食べるのはさすがに……。何といいますか、野菜でしたらちゃんとしたものをご使用いただいても」
シャロにとって僕の行動があまりにも不可解だったのか、戸惑いうろたえながら小声でそう提案してくる。
そうか、これ土に見えるのか。言われてみれば!
僕が貧しい米農家の息子であることは多分知ってるし、そういう食生活を余儀なくされていたと思ったのかもしれない。
「ああ、えっと、違うんだよ。これは土じゃなくて米ぬかって言って、茶色い米を白くするときに出る副産物なんだ。つまり植物の一部だよ。で、この野菜くずは食べるんじゃなくて、発酵させるための栄養」
「……えと、ではその米ぬか?を食べるということでしょうか?」
「違う違う、まあ食べても問題ないけど。野菜くずを使ってぬか床――この土みたいな部分な、これを簡単に言えば『漬物製造機』に変えて、それから野菜やら何やらを漬け込んで、それを食べるんだよ」
僕なりに頑張って説明してみたが、シャロは理解できない様子で頭に「?」を浮かべている。
「ま、まあとりあえず、大丈夫だから。楽しみにしててよ」
「……は、はあ」
不信感を隠し切れないシャロを見て。
僕は改めて、ぬか床の、ぬか漬けの魅力を伝えなければと心に誓う。
絶対おいしいって言わせてみせるぞ!!!




