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第21話 オレ専用のキッチンと倉庫、だと!?

「んん……? うわっ!?」


 目を覚ますと、借りた客室である自室に寝かされていて、横には心配そうな顔をしたシャロが立っていた。


「お、おはよう……?」


 今の僕は8歳で、向こうからはただの子どもと思われているのは分かるが。

 メイド服の金髪美少女に見守られながら目を覚ますというのは、何とも新鮮で複雑な気分だ。

 前世でも女性とは無縁の生活を送ってきたためか、正直戸惑ってしまう。


「ふぇ、フェリク様! まだ起き上がっては――」

「大丈夫だよ。ちょっとスキルを使いすぎただけだから」

「そ、そうだったんですね……」


 ホッと胸をなでおろすシャロ。

 こんな年端もいかない少女に心配をかけてしまうなんて申し訳ない……。


「そうだ、領主様は……」

「旦那様はお仕事でお出かけになられました」

「そ、そっか」


 まあ忙しいよな。

 つい最近までは、会うことすら滅多にできない雲の上の人だったし。

 いや、今も本来はそうなんだけど。


「種籾は一応完成してるはずなんだけど、あとは僕は何をしたらいいんだろう?」

「……でしたら、ちょうど先ほどフェリク様用のキッチンが完成しましたので、そちらへご案内しますか? 旦那様からも許可を得ておりますので」

「え、僕用のキッチン……?」

「はい。お米の研究に必要だろうから、と」


 その発想はなかった!

 さすがやることが予想斜めうえすぎる!


 シャロに連れられてキッチンへ行くと。

 そこにはコンロが5つ、流し台が2つ、大きな作業台といくつもの棚、それからなんと――


「こ、これって――」

「こちらは冷却庫と冷凍庫です。冷却庫は食材を冷たい状態で保存するため棚で、こちらの冷凍庫に入れれば食材を凍らせることもできます。冷たい状態で保存すると、食品の使用期限を大幅に伸ばすことができるんです」


 知ってる! 知ってるけど!!!

 この世界で見たのは初めてだ。す、すげえ!!!


「す、すごいね。さすが領主様だ……」

「私もこちらで働くようになって初めて知りました。温めるのは火があるので分かりますが、こんな箱で冷却、ましてや冷凍なんて感動しますよね!」


 この世界には、電気で物を動かす「家電」という概念は存在しない。

 その代わり、大金持ちか貴族しか買えない超高級品として、「魔導具」なるものが売られているという噂は聞いていた。


 だが、コンセント1つで動く家電とは違い、魔導具には魔石と言われる特殊な宝石が必要で。まずこの宝石がめちゃくちゃ高い。

 さらに専門の魔導具師による定期的なメンテナンス、というか魔力の補充が必要となるため、維持費も馬鹿にならない。


「こ、こんなもの、僕専用にもらっちゃっていいのかな……」

「旦那様が用意されたんですから、フェリク様にそれだけ期待されているということですよ、きっと。そのような素晴らしいお方にお仕えできるなんて、光栄です」


 シャロは嬉しそうにそう微笑む。

 こ、こいつ……天使か何かか? 笑顔が眩しい!


「研究用のお米は、隣の部屋を倉庫に改造しておりまして……こちらに」


 キッチンの奥にある扉を開けると、そこは立派な倉庫になっていた。

 棚には、米が入った袋が大量に並んでいる。


 ――これからここで米に囲まれて、おいしい米を僕の手で生み出していくのか。

 幸せすぎて、いっそこの部屋に住みたい……!!!


「シャロも試食手伝ってくれると嬉しいな」

「!? えっ、そ、そんな私のようなただの使用人がいただくわけには……」

「いやいや、試食も大事な仕事だと思うよ? ほかの人がどんな感想を持つのか、知りたいしね」

「そ、そうですか……? では、かしこまりました。楽しみにしていますね」

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