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第20話 再び、おいしいお米への第一歩

 翌日、僕たち3人は、領主様が用意したという農場を案内された。

 田んぼはうちの10倍、いや20倍かそれ以上かもしれないが。

 とにかく果てしなく広大だった。


「今日から、この農場の田んぼの管理をクライスさんにお願いすることになった。クライスさんは代々続く米農家の家系で、つまりは米のプロだ。みんな、彼の指示には従うように」

「え、ええと、今日からここで働くことになったレグス・クライスです。よろしくお願いします」


 目の前には、これから父の下で働いてくれるらしい20人ほどの使用人が並んでいる。


「彼らはみな農業に適したスキルを持っていてね、きっと役に立ってくれるはずだよ。――そういえば、クライスさんのスキルを聞いてなかったね」

「私は【身体強化・怪力】です。普通のスキルで申し訳ない」

「いやいや、素晴らしいスキルじゃないか。困ったときはぜひ力を貸してくれ」

「もちろんです。ちなみに妻のリイフは【鑑定・植物】が使えます」

「2人とも、頼りにしているよ」


 ――そういえば、領主様のスキルは何なんだろう?

 き、気になる……。


「今日は土づくりをしてもらう予定だけど、クライスさんもうちの使用人のことを知っておいた方がいいだろう。バトラ、彼らをうまく取り持ってやってくれ」

「かしこまりました」

「フェリク君は、私と来てもらえるかな。種籾を仕入れたから見てほしいんだ」

「は、はい」


 領主様に連れられて食糧庫へ向かうと、麻袋に入れられた種籾が山積みにされていた。うちとは規模が違いすぎる!


「この種籾、好きに改良してしまっていいですか?」

「もちろんだとも。私にはよく分からないからね」

「では――」


 そうだな、とりあえずもっちり系とサラサラ系の2種類を作るとして。

 気候や環境、虫に負けない強度もいるよな。

 あとは何だろう……収穫量を増やす、とか?


 ああ、前世が米農家じゃなかったことが悔やまれる……!

 米への愛なら誰にも負けないのに!!!

 い、いやでも、イメージさえできればスキルがどうにかしてくれるんだし。

 できることからやっていこう。


「スキル【品種改良・米】!」


 僕は麻袋を半々に分けて、半分をもっちり系に、もう半分をさらさら系に作り替え、強度と量への対策も行なった。

 それから――前世でお気に入りだった銘柄をイメージし、全体的にツヤツヤでふっくらおいしい米になるよう、思いを込められるだけ込めておいた。


「こ、これで大丈――あれ?」


 スキルを使い終えると同時に体の力が抜け、意識が遠のいていくのを感じる。

 どうやら一気に体力を消耗しすぎたらしい。

 スキルをたくさん使うには、それなりの訓練が必要なのだ。

 8歳なんて、一度も発動できない子だってザラにいる。


 ――でも、きっとこれでおいしい米がたくさんできるはず!


 遠くの方で、領主様が「フェリク君!」と連呼しているのを聞きながら、僕の意識は暗闇へと落ちていった。

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